【河村康彦 試乗チェック】ホンダ・シビックe:HEV ガソリン仕様より熟成が進んだ本命

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重量増100㎏の影響は皆無。フラットで上質な乗り味と自在なハンドリングを堪能

恐らくは、「それぞれのモデルのインパクトを薄めてしまわないように」という戦略上の事情もあって、純エンジン・バージョンの10カ月遅れというタイミングで発売されたハイブリッド仕様の『シビック』をテストドライブした。

ホンダが訴求する2モーター式のシステム”e:HEV”に組み合わされたエンジンは、新開発の2リッター直噴ガソリンユニット。前述の純エンジン・バージョンが搭載するターボ付きの1.5リッター・ユニットを用いなかったのは、「それをハイブリッド・システムと組み合わせると、高効率ゾーンを外れてしまうシーンが多くなってしまう」ためであったという。

新開発の2リッターエンジンがモーターと組み合わされる

それにしても、この先2040年までの”脱エンジン”を表明しているのがこのメーカー。もしかすると、完全新開発のエンジンとしては、このユニットが最終作になってしまうのだろうか…。

ハイブリッド・モデルとはいっても、外観上でそれを主張するような部分は皆無。一方、加速フィールに合致した指針の動きや減速時の回生力表示は別メーターで行うなど、グラフィックに拘ったパワーメーターはハイブリッド・モデルならではのみどころだ。

135kW≒183.5PS/315Nmという大出力モーターが生み出す力強い走り出しシーンを筆頭に、加速感に100㎏ほど増加した重量を意識させられる場面は皆無。重厚なドア閉め音やその後の外界との隔絶感の高さに、「シビックもすっかり高級車だな!」という第一印象を抱くが、エンジン始動後の静粛性の高さも特筆すべき水準。

ヴェゼルのe:HEV仕様では、静粛性の高いEV走行の状態からエンジンが始動した瞬間に、ノイズが一気に高まってしまう点が少々興醒めだった覚えがあるが、それに比べるとこちらは”e:HEV 2.0”とでも表現をしたくなる仕上がりだ。

静粛性も高く、もはや高級車の領域へ

もう一点、ハイブリッド・モデルならではなのが、加速感とシンクロしたサウンドが演出される点。ただし、少々物足りなく思えたのは”アクティブサウンドコントロール”という電気的に演じられるそのサウンドが何とも小さいこと。そもそも、そんな演出が行われるのは”スポーツモード”を選択したシーンに限られるので、そのボリュームはもっと大きくするか、あるいは調整可能としても文句をいうドライバーなどはいないはずだ。

上質な乗り味と自在なハンドリング感覚は、基本的に純ガソリン・バージョンと同様。が、それでも比べればこちらの方が、よりフラット感に富んでいると感じられたのはどうやら”気のせい”ではなさそう。というのも、後席下へのバッテリー等の搭載に関連してボディリヤ部分の剛性が高まり、それを活かしてダンパーにもより快適性を向上させる方向での専用チューニングが行えたというからだ。全般に「熟成が進んだ本命」という印象の漂うシビックである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:349万200円)

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