FFでは味わえないBMWらしさ満点のコンパクトクーペ
フロントエンジン/リヤドライブというレイアウトに50:50の前後重量配分、さらに直列6気筒のエンジン…とくれば、これらはいずれも、つい先日までBMW車が盛んに謳っていた”金看板”の数々。しかし、時の流れには逆らえないということか、そんなセールストークからは徐々に疎遠になり、いつしかFFレイアウトや4気筒、さらには3気筒エンジンを搭載したモデルが幅を利かせるようになっていたのが、最近のBMWライナップでもあったもの。
ところが、特に比較的コンパクトなモデル群ではそうした動きも止む無し…と思われていた中で、改めてFRレイアウトをベースに誕生したことで、古くからのこのブランドのファンを狂喜乱舞(?)させることになっているのが、2021年夏に発表をされ日本でも2022年3月から発売されている、新しい2シリーズクーペだ。
同じ『2シリーズ』にカテゴライズされながら、モノスペース系の”アクティブツアラー”に”グランツアラー”、さらに4ドアクーペ型の”グランツアラー”と少々ややこしい展開となっているものの、8年ぶりに刷新された新しい2シリーズクーペは、いずれもFFレイアウトの骨格をベースとしたそれらのモデルとは「全くの別もの」と考えた方が良さそう。
クーペを名乗りつつも、短いデッキ部分を備えた3ボックス調にも見えるプロポーションは、従来型からの流れを連想させるもの。ただし、4545(Mスポーツは4560)㎜の全長と1825㎜の全幅、さらに2740㎜のホイールベースは、いずれも従来型よりひとまわりずつ大きくなっている。
テストドライブを行ったのは、最高184PSを発するターボ付きの2リッター直噴4気筒エンジンを8速ステップATと組み合わせて搭載した220iグレードの、専用ボディキットやスポーツサスペンション、標準比で1インチ大径となる18インチ・シューズなどを装着した”Mスポーツ”仕様車。
4気筒ながらエンジンの回転フィールはすこぶる滑らかで、「これって実は6気筒」といわれれば信じてしまいそうなほど。最高出力もさることながら、すでに2000rpmを下回る段階から発せられる300Nmの大きな最大トルクと多段ATも奏功し、動力性能は文句ナシだ。
一方、前出スポーツサスペンションと、18インチのランフラットタイヤがもたらす乗り味はかなりスパルタンで、ワインディングロードでの自在でクルマとの一体感に富んだハンドリング感覚はゴキゲンながら、街乗りシーンでは揺すられ感の強さにちょっと辟易。しかし、久しぶりに表れた「BMWらしい個性に満ちた存在」という点では、やはりFFレイアウトベースのモデルとは一線を画した存在といえそうだ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:550万円)