2021年11月に限定100台のサブスクで国内発表された、ボルボのピュアEV「C40」に試乗させてもらいました。私自身、ベースとなっているXC40に乗っていた身ですが、そのXC40との比較や、走りの違いなどについてもレポートします。
今回試乗させていただいたC40 Recherge Ultimate Twin Motorは、前後にそれぞれ204psのモーターを配した上位モデルで価格は税込699万円からとなっていますが、さらに4月21日より追加で発売されるフロントに231psのモーターを配したシングルモーターのC40 Recherge Plus Single Motorは599万円という戦略的価格でラインナップを拡充しています。
C40はXC40をEV化しただけという単純なモデルではなく、様々な新しい試みが盛り込まれたSDGsにも対応した先進的なクルマとなっていました。
XC40とは似て非なるエクステリア
C40のエクステリアは、EV対応を見越して作られたCMPというXC40にも採用されているボルボの新世代プラットフォームを使用しているだけに、遠目から見た印象はXC40に近いものを感じますが、チョップされ低められたルーフと、なだらかにスラントするリアガラスによってクーペスタイルのSUVスタイルになっています。細かく見ていけば、フロントのヘッドライトの形状も、四角いXC40に比べて目頭のほうがシャープになったC40は、よりアグレッシヴな表情を見せています。そしてエンジンが無いことでグリルが閉じられたデザインになっていることで、より未来感のある顔つきになっています。シンプルでケレン味の無いボルボのデザインはEV化されることでさらに磨きがかかり、特にリアビューの美しさは格別です。
サブスクで発売されていた当初モデルでは標準装備だった、片側84クラスタで配光する「ピクセルLEDヘッドライト」はオプションとなり価格が引き下げられましたが、今回の試乗車には装備されていました。このピクセルLEDヘッドライトは同時に5台の車両を認識して遮光することが可能ですが、このオプションを装備しなくても、フルLEDヘッドライトでオートマチックハイビームは備わるとのこと。
インテリアはレザー(本革)フリーで環境対応
続いてC40のインテリアを見てみると、基本的なレイアウトはXC40と同じです。変わっている点と言えば、ドアトリムや助手席側ダッシュボードにあるオーナメントが、XC40では杢目やアルミでしたが、C40ではスウェーデンの国立公園の等高線をモチーフにしたという模様の樹脂になっています。夜になると間接照明で浮かび上がるようになっていますが、日中見ると不思議な模様のハードプラにしか見えず、質感的にはXC40のほうが上質に感じてしまいました。
また、C40のインテリアはSDGs(環境に配慮した持続可能な開発目標)にも対応したクルマづくりがなされており、XC40では使用されていた本革が一切使われておらず、シートからシフトノブ、ステアリングに至るまですべて合成皮革に置き換わっています。実際に触ってみても本革と遜色ない手触りにはなっているものの、一部シフトノブだけは樹脂っぽさが目立ってしまっていて、ここもXC40と比べると残念な部分。しかし、バッテリーにもコバルトを使わないなど、徹底した環境配慮がなされたボルボのクルマづくりは世界でも最先端となっており、ドイツ車を始め、国産車もこれからこうしたSDGs的なクルマづくりを追いかけることになりそうな予感がします。
それ以外のトピックとして、XC60などの商品改良モデル以降採用されているGoogleとの共同開発のインフォテイメントシステムは、描画も早く解像感も精細で使い勝手が大幅向上しています。さらに人工知能Google Assistantも搭載されており、「OKグーグル」と発話すれば、地図の目的地設定からニュースの読み上げ、さらには自宅がIoT対応の家電なら遠隔操作まで可能となっています。まさに未来のクルマと言った感じです。
走りは痛快そのもの!EVらしい加速が味わえる
実際にC40 Recherge Ultimate Twin Motorを走らせてみると、まずはそのボディ剛性の堅牢さに驚きます。もともとXC40でも走りの質感には定評がありますが、バッテリー保護のために強化されたボディはXC40よりも遥かにガッシリとした乗り味となっており、どんな路面状況であろうともビリビリブルブルするような不快な微振動は皆無。さらに前後で408ps・660Nmというスペックのツインモーターはトルクの塊で、踏んだ瞬間から2.1トンを超える車体を銃弾のように加速させます。昨今の他社EVでは、従来の内燃機関から乗り換えても違和感の無い加速フィールに抑えた味付けに留まっているモデルも多い中で、このC40 Recherge Ultimate Twinはまさに痛快という言葉が似合う加速フィールとなっていました。この弾丸のような加速はテスラモデル3以来の衝撃です。
ステアフィールはXC40同様に遊びがほとんどないクイックな味付けながら、デフォルトの設定でも車速に応じて重くなるので、こちらもリニアにクルマの動きを操る楽しさがあります。好みに応じてさらに重いステアフィールにも変更できますが、標準状態でも良いと思えるほどどっしりしたステアフィールは好印象でした。
操作性には一部難あり
C40にはワンペダルモードも当然用意されていますが、昨今ライバルメーカーのワンペダルモードが完全停止までサポートしない、クリープを発生させる仕様になっているのに対し、完全停止まで行う減速感を有した仕様になっています。100%アクセルオフではかなりの減速Gがかかるので、慣れるまでは乗員を気遣った運転が必要ですが、慣れてしまえばブレーキペダルに踏み変える必要が無いので運転が楽に感じます。また、XC40では装備されていた電動パーキングブレーキやブレーキホールドのスイッチが無くなっており、アクセルオフで停止すると、そのまま停止保持されるになっていました。パーキングブレーキはPに入れると自動でかかるようです。
さらに、システム始動のスイッチも廃止され、キーを持ってクルマに乗り込んでシフトをDに入れればそのまま走ることができるようになっており、どんどん運転に対する操作が簡略化されているのが、便利なような寂しいような、そんな複雑な気持ちにもなりました。今後はこうした従来の内燃機関の運転に必要だった操作は不要になっていくのでしょうね。
一方で、ワンペダルモード切り替えやステアフィール切り替え、ドライブモードセレクトなど、運転に必要なモード切替も画面のタッチ操作の階層の奥にあり、ブラインドタッチが出来ないほど文字を読む必要がある場所にあるため、操作性は良いとは言えませんでした。コスト削減やデザイン的には良いのでしょうけれど、何でもかんでもディスプレイに集約して物理スイッチを廃止するのも考えものです。
それ以外は目立ったネガもなく、価格感も含めてよく出来たBEVだと感じました。
購入はネットでポチ!
C40は購入方法も従来とは異なっており、先行して2021年11月に発表されたモデルではサブスク限定でしたが、今回新たにラインナップされるモデルも、公式サイトからのネット販売のみとなっています。納車や点検サービスなどは最寄りの販売店で行うという今までにない販売方法となっているので、これもまた時代の流れなのでしょう。
見た目のオシャレさや先進性もあるボルボのピュアEV「C40」は、ドイツ車や国産EV勢と比較しても値ごろ感のある価格帯で勝負してきており、これからのEV戦国時代では存在感のあるモデルになるかもしれません。
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[ドラヨス]
月間100万PVのブログ「ワンダー速報」と、登録者数17万人、月間400万再生以上(2021年7月15日現在)のYouTubeチャンネル「ワンソクtube」の管理人。
クルマ買うチューバーを自称し、2か月に1台のペースでクルマを購入してレビューするスタイルが好評。
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