デンソーテン、独自の感情推定モデルを構築、運転中の感情を見える化

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デンソーテンは3月11日、心理学(心の働き)ではなく、脳や心臓の働きと感情との関係による医学的アプローチ(身体の働き)に基づいた独自の感情モデルを構築し、新たな感情推定技術を開発したと発表した。

感情推定技術は、脳波センサーや心拍センサーといった複数の生体センサーを活用することで、例えば、自動車を運転している人の感情を見える化する技術。運転中にその人の感情と交通や天気といった周囲の状況や店舗など、クラウドサーバーに蓄積されている様々な情報を組み合わせ、状況ごとに最適なサービスを提供できるようになるという。具体的には、渋滞でイライラしている時には多少回り道になってもスムーズに走れるルートを提案するなど、安心・安全な運転に貢献するサービス提供が考えられるとしている。

また、教習所で練習中の際には、苦手な運転とその時の感情を客観的に知ることができ、効率的な練習につながるほか、スポーツ選手の練習中や試合直前の感情を推定することで、より効果的なメンタルトレーニングに活用できると述べている。

同技術は、3月14日(月)に国士舘大学で開催される「情報処理学会 第197回ヒューマンコンピュータインタラクション研究会、“医学的エビデンスに基づく新たな感情推定モデルの提案”」で発表を予定している。

【従来技術と新技術の開発】

従来の感情モデルとして、“ラッセル円環モデル”という心理学モデルがあり、同モデルは、縦軸Activation(活性度)、横軸Pleasant(快適度)からなる2軸平面上に、楽しい、リラックス、悲しみ、退屈、怒りなどの感情を円環上に配置する。これまでも、脳波や心拍波形などの生体信号から、活性度、快適度を算出して感情を推定する方式は提案されていた。

デンソーテンでは、感情と身体の働きの関係に着目し、医学論文などのエビデンスを元に、軸の定義と感情の配置を行って新たな感情モデルを構築した。

 

 

<軸の定義>

感情との関係が医学的にも示されている脳波と心拍を、感情推定が可能な生体信号として選択した。しかし、脳波には、①感情が発生する大脳旧皮質の活動を直接脳波で観測できない、心拍には、②心拍は感情だけでなく呼吸によっても変動する、という課題があり、同社では①脳波のうち、喜びや怒りなどの感情で増加すると知られているα波とβ波の比率(β/α)を縦軸とし、②心拍波形のうち呼吸の影響を受けにくい低周波成分の変動(LF揺らぎ)を横軸と定義した。

<感情の配置>

α波はリラックスや不安時に増加し、β波は楽しい、怒り、緊張した時に増加することが分かっている。そこで、β/αによって、縦軸の上側に楽しい、怒り、緊張などを、下側に不安・リラックスなどを配置。また、横軸である心拍の変動は自律神経と相関があることが知られており、感情と自律神経の関係に基づいて横軸の右側、左側に配置する感情を決定した。

同社では、新たな感情モデルを用いた信号処理により、80%を越える感情推定性能を確認したとしている。今後、車載用途だけでなく、スポーツにおけるメンタルトレーニングなどへの適用も進めていくと述べている。

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