対ガソリン・エンジンのハンデをことごとく払拭
実に「21年ぶり」という超久々となるタイミングで、日本仕様の従来型ゴルフ=ゴルフⅦにディーゼル・エンジン搭載モデルが“復活”して話題となったのは2019年のこと。しかし、今年フルチェンジをして“Ⅷ”となった新型からは、再び姿を消したことで心配していた人もいるかも知れないが、ここに来てめでたく追加設定。2022年の年明け早々から発売されることが明らかにされた。
従来同様『TDI』の名称が与えられるディーゼル・モデルに搭載される心臓が、2リッター4気筒のターボ付きで、最高出力が150PSというのは従来同様ながら、実はそれが様々な部分にリファインの手が加えられた新たなユニットというのも新型でのトピック。
実際、最大トルク値は20Nm上乗せされた360Nmとなり、WLTCモード時の燃費性能も、18.9㎞/リッターから20.0㎞/リッターへと向上。さらに、従来は1系統だった尿素SCRシステムを2系統化したことで排ガス浄化性能をアップさせたのに加え、静粛性やレスポンスの向上まで伝えられるから、このところ電動化に邁進する印象ばかりが伝えられたこのブランドも、実は決して“エンジンを諦めた”わけなどではなかったのである。
実際、早速そんなモデルをテストドライブしてみると、まずは「これって本当にディーゼル!?」といいたくなるほどに静粛性が高いことにビックリ。1500~2000rpm付近では特に、アクセル操作に対する追従性が優れるという美点はいわば“想定内”でもあったものの、その先4500rpmのレッドラインに向けての高回転域でもまるで頭打ち感など伴わない伸びの良さはガソリン・エンジン顔負けで、すでに好印象だった従来型をも凌ぐ、静かでパワフルなフィーリングが「数あるディーゼル・ユニットの中にあっても秀逸な仕上がり」と実感させてくれるものだった。
そんな心臓部のみならず、クルマ全体としての仕上がりも「これこそ新型ゴルフの真打ちだ!」と思える好印象。重量的にはハンディキャップを背負っているはずのディーゼル・エンジンを搭載しながら、ワインディング・ロードへと乗り入れてもノーズが重いという感覚は全く伴わないし、ガソリン・モデルでは1.5リッター・エンジンを搭載する上級グレードのみに採用する、凝った形式のリヤサスペンションが奢られたこともあってか、しなやかなフットワーク・テイストもこれまた好印象。
ディーゼル・エンジンで躓いた過去を汚名挽回するかのできばえを実感させられた、まさに“新型ゴルフの本命候補”と実感できる1台であった。
(河村 康彦)
(車両本体価格:344万4000円~408万8000円)