【ダイハツ・ロッキー/トヨタ・ライズ試乗】新開発HVは1クラス上の上質感だ

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扱いやすいコンパクトSUVとして2019年の登場以来、高い人気を続けているロッキー/ライズだが、このほど2WD車のパワートレーンを刷新。4WD車は登場以来の1Lターボで変更がないが、2WD車は1.2Lのハイブリッドと1.2LのNAとなり、合計3つのパワートレーンを搭載することとなった。というわけで、今回は都内の公道でこの新パワートレーンを搭載した2WD車を試乗した。

新パワートレーンを搭載したダイハツ・ロッキー

新たに加わった2つのパワートレーンのうち、特に注目されるのがハイブリッドだ。ただし「ハイブリッド」といっても、プリウスやアクア等トヨタ車が採用する「THS」とは異なるもの。「e-SMARTハイブリッド」と名付けられたそのシステムは、発電専用のエンジンと駆動用モーターを組み合わせたシリーズ方式。形式としては日産の「e-POWER」と同じである。

が、それ故に気になったのは、その仕上がりだ。現行ノートに搭載されている第2世代e-POWERは静粛性も加速性能も完成度が高いが、16年に先代ノートに初搭載された時点のe-POWERはエンジン音も騒がしく、正直なところまだ微妙な感じだったからだ。ロッキー/ライズは、Bセグのノートより一回り小さいAセグだから、特に静粛性の点は不利になる。そもそも変更前のロッキー/ライズは取り立てて静かなクルマ、というわけではなかったからなおさらである。

静粛性が高くパワーも十分

が、走り出してみて驚いた。このe-SMARTハイブリッドは、最初から完成度が高い。ロッキー/ライズの場合、搭載するバッテリーが小さいため、エンジンが始動する割合が多いのだが、静粛性が高く、加速も滑らかだ。遮音対策が徹底されているのに加え、エンジンの音質そのものも耳障りではなく、低速域や高速でも巡行時は非常に静か。ロードノイズや風切音もシャットアウトされているので、1クラス上の上級モデルに乗っている気分だ。もちろん高速道路での合流や急な上り坂など、アクセルを一気に踏み込んだ際はそれなりにエンジン音が入ってくるが、日常の範囲でうるさいと感じることは少ないだろう。

また重量が約90kg重くなり重心が下がることで、乗り心地もしっとり。軽快だが少し粗さがあった1Lターボ車に比べて滑らかで、同じクルマとは思えないほど上質な乗り心地だ。さらにステアリングの制御も見直され、いささか軽すぎる印象だった操舵感も、適度な重さになった。高速域でも足回りの無駄な動きがなくなり、コーナーリングも不安がない。特にライズは、トヨタのハイブリッド車に乗り慣れたダウンサイザーも多いと思うが、これなら満足できるだろう。

運転席周りでは、電動パーキングブレーキが装備されたのが前期との大きな違い
荷室内にはコンセントも装備。家庭用電気器具がそのまま使えるのもハイブリッドならではの利点だ

電動車ならではのワンペダルドライブ「スマートペダル」もセッティングが適切で使い勝手が良い。新型アクアの「快感ペダル」は減速が弱く、操作には違和感があったが、こちらは自然な感覚で運転できる。新型ノートのワンペダルと比べても同等レベル。また新型ノートと同じく、ワンペダルでは完全なストップまではせず、クリープ制御が入れられているので、駐車する時などごく低速域での扱いやすさも問題がない。

スマートペダルのON/OFFはインパネ右側の「S-PDL」ボタンで行う。もう少し目立たせた方が良い気もする

一方、こちらも新開発となったNAの1.2Lエンジン車も相当な実力だ。高速域での加速感は1Lターボの方が上回るが、低中速域のスムーズで力強い加速は、この1.2Lの方が上。特にアクセル操作に対する反応の早さが心地よい。

音や振動はそれなりで、質感という点だけでいえば1Lターボとあまり変わらないのだが、その代わり価格は約166万円からとかなり割安。街乗り中心で手軽な実用コンパクトが欲しい、というユーザーに最適だろう。(鞍智誉章)

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