かつてはインパネ上にあった、オーディオ関係のスイッチの一部がステアリングスポークに移動し、これでハンドルから手を離さずオーディオの操作ができるようになった。近年はこれに加え、ハンズフリー電話や先進運転支援システム、ドライブモード切替等、クルマの機能向上によりスイッチが増え、エアバッグが装着されているハンドルの中央部から、左右にいろいろなスイッチが並ぶ状況だ。一見すると圧倒されてしまうが、配置と役割を覚えておくと便利この上ない。
では、まずトヨタ・ヤリスを例に、スポーク上に何のスイッチがついているのか、それぞれのスイッチと主な機能を確認してみよう。右・左とも上段・中段・下段の3段に分かれ、形状も左右ほぼ同じとなっている。
〈スポーク右側・上段、左から〉
車間距離切り替えスイッチ/レーントレーシングアシストスイッチ
クルマの前方から電波が出ているような絵が描かれるスイッチが「車間距離切り替えスイッチ」で、ボタンを押すことでレーダークルーズコントロール使用時の前走車との車間距離を、3段階(長い、中間、短い)で切り替えられる。
その右側、横長の形状でクルマ(上から見たところ)が平行な点線の上に乗っかるような絵が描かれるスイッチが「レーントレーシングアシストスイッチ(LTA)」で、このスイッチを押すことでLTAの車線維持支援機能のオン/オフが切り替わる。現在の設定状況は、2眼メーター中央にあるマルチインフォメーションディスプレイに、スイッチと同じイラストの表示の有無で確認できる。
〈スポーク右側・中段〉
クルーズコントロールスイッチ
中段のクルーズコントロールスイッチは、三つのスイッチで構成されている。このうち左がメーターの目盛りとクルマ(正面)が描かれた「クルーズコントロールメインスイッチ」、中央が“+RES”と“-SET”の文字が上下に書かれその中央に突起状のスイッチがあり、クルーズコントロールの速度設定(“-SET”:突起部を指で押し下げる)や、設定した速度の変更(“+RES”:速度増加、指で押し上げる/“-SET”:速度減少、指で押し下げる)できる。そして右側が“CANCEL(キャンセル)”と書かれた「(レーダークルーズコントロール)キャンセルスイッチ」で、押すことで制御を解除できる。このほか、ブレーキペダルをふんだ場合も制御は解除される。
〈スポーク右側・下段〉
オーディオスイッチ
左側に“MODE”と書かれたスイッチと、右側には三角形が右向きと左向きで描かれた横長の「TUNE・TRACKスイッチ」がある。“MODE”スイッチは、押すことでラジオやテレビ等のオーディオソースが順番に切り替わる。押し続けると消音または再生が一時停止され、再び押し続けると解除される。
TUNE・TRACKスイッチは、ラジオやテレビでプリセットされている周波数やチャンネルが順番に切り替わる。USB/Bluetoothオーディの場合は、ファイル/トラックが切り替わり、1秒以上押し続けるとフォルダ/アルバムが切り替わる。
〈スポーク左側・上段と中段〉
メーター操作スイッチ
上段(左側)と中段のスイッチは、上下左右の矢印や戻る矢印が描かれ、パソコンでいうカーソル移動キーやリターンキーのような感じ。中段中央は突出した“OK”のスイッチがあり、スポーク右側のスイッチと同じ形状で、親指で操作する。
中段左側と中段右側の矢印のスイッチはマルチインフォメーションディスプレイのメニューを切り替える。中段中央の突出したスイッチを上げる/下げると、表示項目の切り替え。突出した“OK”のスイッチを短押しで決定、長押しでリセット/詳細項目表示となる。
上段左側の戻る矢印のスイッチを押すと、一つ前の画面に戻る。
〈スポーク左側・上段の右側〉
電話スイッチ
受話器のイラストが描かれた「電話スイッチ」は、イラストの通りハンズフリーで電話をかける場合に使うもので、押すことでダイヤル発信/電話を切ることになる。
〈スポーク左側・下段、左から〉
オーディオスイッチ/トークスイッチ
左側のスピーカーの絵に+と-が描かれたスイッチはオーディオの「音量調整スイッチ」で、“+”を押すと音量が大きくなり“-”を押すと音量が小さくなる。ともに、押し続けることで連続して音量を調整できる。
右側の人の横顔が描かれるのが「トークスイッチ」で、ナビやハンズフリー電話の音声操作の開始(短押し)と中止(長押し)を操作できる。また、Apple CarPlayまたはAndroid Autoが接続されている場合は、SiriまたはGoogle Assistantの開始(長押し)と中止(短押し)を操作できる。
いろいろなモデルで比べてみると…
次に、ヤリスを含め日産・ノート、ホンダ・ヴェゼル、SUBARU(スバル)・インプレッサと、各社の売れ筋モデルのステアリングスイッチを比較してみた。併せて、スイッチを機能別に塗り分け、運転支援機能に関するスイッチはベージュ色、オーディオに関するスイッチはピンク色、メーター内の情報表示切替に関するスイッチは水色とした。また、回転するホイール状のスイッチや、指で押し上げる/押し下げる形状のスイッチ等、押しボタンと異なる形状のスイッチは太い点線で囲んだ。
すると、各車のスイッチの配置が概ね共通しているのがわかる。主に、右側スポーク部は運転支援機能に関するスイッチ、左側スポーク部はオーディオまたは、メーター内の情報表示切替スイッチとなった。
また、クルーズコントロール系の速度設定の増減切り替えは、指で押し上げる/押し下げタイプのスイッチが多い。同様に、メーター内の情報表示切替(項目の選択)は、回転するホイール状のスイッチ(回して項目選択、押して決定)が多い。
さらに、各車のステアリングスイッチの形状をじっくり見てみると、左右ほぼ対象になっている。左右が極端に異なる形状だと、ゴチャゴチャして初見の時に混乱に陥ってしまいそうだが、左右ほぼ対象で整然と並ぶとすっきりしていて幾分とっつきやすく感じられる。ほとんどが運転中に操作するものなので、スイッチを凝視する時間もないはずで、形状が揃っていれば、指先でどのスイッチか判断も付きやすくなる。
中には、標準装備されているけどなかなか使ったことがない、という方もいるかもしれない。まずは指先で形状や位置、そして機能を覚えて、徐々に使いこなしていこう。一度使い方を覚えてしまうと便利この上ない機能ばかりだ。