とことん正確なハンドリングと、速度が高まるとフラット感を増す乗り味
コロナ禍や半導体不足の影響を受け、遅れていた新型ゴルフの日本導入がようやくスタートした。ゴルフⅧと紹介される8代目モデルは、欧州ではすでにGTIやRといったハイパフォーマンス・バージョンも加えられ、『ヴァリアント』を謳うステーションワゴンも登場済み。正直“出遅れ感”は否めないものの、インポーターは「GTIやヴァリアントは年内追加を目指す」と言う。ブランド内でも最もメジャーなモデルだけに、鼻息も荒いのは当然だろう。
「デジタル化と電動化、そして運転支援システムの進化が特に見どころ」と謳われる新しいゴルフ。日本仕様車に搭載されるのは、1リッター3気筒と1.5リッター4気筒の2タイプのエンジン。いずれもガソリンのターボ付き直噴方式”TSI”のユニットだが、新型の心臓はその前に”e”の文字が加わる。
これは、減速時の回生やアイドリングストップのみならず、走行中のエンジン停止までもを実現することで燃費向上を図る、48ボルト式のマイルドハイブリッド・システムを備えることを示したものだ。
まずは1リッター・モデルでスタート。「それでマトモに走るのか!?」と不安になる人もいそうだが、心配は無用。決して俊足ではないものの、日常シーンの加速には不足なし。さすがに4000rpmを超えるあたりからは”3気筒ノイズ”が耳に付くが、低回転トルクが太い特性ゆえ、敢えてアクセルを深く踏み込まないそれもさして気にならない。
とはいえ、1.5リッター・モデルへと乗り換えると、特に高速道路などでは「やはりこちらが楽!」と思える程度の明確な差を感じたのは事実。さらに、動力性能面で差を感じたのはエンジンブレーキの効きで、効率重視で摩擦を極限まで減らしたからか、1リッター・モデルは「ほとんど効かない」という感覚。アクセルのみで車間をコントロールする運転スタイルを採る人には、どこまでも転がる印象の1リッター・モデルの走りには違和感を覚えそうだ。
同様に、スイッチ類が極端に減らされたデジタル・コクピットも、見た目はスマートだが「慣れないと使いづらい」印象アリ。初めてのドライブでは、詳しい人に教えを乞うこと必須でありそうだ。
搭載エンジンによってリヤサスペンション形式が異なるものの、ハンドリングはとことん正確で、速度が高まるにつれフラット感を増していくという乗り味も基本的には共通。
それゆえ、高まった価格を“デジタル化”や”運転支援システムの進化”といった新型の特徴部分で納得できるかで、評価が決まりそうな新世代のゴルフでもある。
(河村 康彦)
〈車両本体価格:291万6000円~375万50000円〉