2010年には実質的な活動を終えた三菱ワークス「ラリーアート」だが、三菱自動車は2020年度決算説明会でその復活を明言。三菱自動車、そして自動車業界全体が電動化へと舵を切る中で、新生ラリーアートがどのような活動を展開していくのか、大いに期待されるところだ。(編集部)
三菱のモータースポーツ活動を支えていた「ラリーアート」
メーカーのモータースポーツ活動を担うのが「ワークス」。トヨタの「TRD」、日産の「NISMO」、ホンダの「無限」、スバルの「STI」などが現在でも活動を継続中だが、かつては三菱にも存在した。それが「ラリーアート(RALLI ART)」だ。
ラリーアートは1984年に創設されて以来、WRCやパリダカなどへの参戦サポートや参戦するプライベーターへの支援、スポーツパーツの開発・販売などを行なう一方、一部の市販車にも「ラリーアート」グレードが設定され、三菱車のスポーツイメージを高めていた。
しかし、三菱自動車の経営環境悪化に伴い、2010年にはモータースポーツ活動から撤退。ラリーアートも大幅に業務を縮小し、事実上終了となった。
そんなラリーアートだが、三菱は11年ぶりの復活を宣言。純正アクセサリーとして展開するほか、モータースポーツ活動も検討するとしている。電動車そしてSUVを核とする現在の三菱が今後どのような姿でラリーアートを復活させるのか、注目を集めるところである。
ラリーアートらしさ満開だった「コルト・ラリーアート・バージョンR」
かつての三菱車ラインナップには、一部車種に「ラリーアート」グレードが用意されていた。現在でいえば、トヨタの「GR」シリーズや日産の「NISMO」バージョンに相当するものといえるだろう。
ただ、若干異なるのが、三菱の場合は頂上にあるのが競技用ベース仕様の「エボリューション」。このエボリューションと標準車の間に位置するのが「ラリーアート」仕様で、標準仕様車をベースにスポーティな味付けをしたモデルということになる。ギャランフォルティスやランサー、コルトなどに設定されていた。
さて、その中でもいかにもラリーアートらしい1台となるのが、2006年に発売された「コルト・ラリーアート・バージョンR」だ。ベースとなるコルトは主力コンパクトカーとして2002年に発売、2004年には「ラリーアート」グレードが追加されているが、国内販売は振るわず苦戦。そこで商品力を強化すべくイメージリーダーとして登場したのが、この「バージョンR」である。
内容としては、コルトをベースに本格的な走りを追求した高性能コンパクトスポーツで、欧州専用ターボモデルのノウハウを活かすとともに、ラリーアートがモータースポーツで培ってきた技術をフィードバックし、レベルの高いスポーツ走行を実現していたのが大きな特徴。
標準車比で47%出力を向上させたターボエンジン、ゲトラグ社製5速MT、路面追従性に優れたサスペンション、専用開発のスポーツタイヤ(アドバン・ネオバ)などを採用、さらにボディ各部も補強され、高いパフォーマンスを発揮。5MT車、CVT車とも197万4000円と、当時のこのクラスのモデルとしては高価だったが、スポーツコンパクト好きからの注目を集めた。後には、さらに強化を施した「バージョンRスペシャル」も限定発売されている。
予想される今後の展開
さて、ホットモデルの登場も期待したい「ラリーアート」の復活だが、今のところは詳細は未定。とりあえず「復活」することと「モータースポーツへの再参戦する可能性」が発表されただけである。
ファンとしては「ランエボ」の復活を期待したいところではあるが、昨今の自動車業界を取り巻く環境や三菱の取り組みからは、カスタマイズパーツの発売はあっても、ハイパワーなガソリン車そのものの国内復活は期待できそうにない。「ラリーアート」は海外でも知名度が高いブランドであるだけに、当面は主力市場であるアセアンでのイメージ向上やモーターースポーツ参戦が中心となりそうだ。
ただし、今後は国内でもスポーティなEV/PHEVをラインアップする可能性は大いにあり得る。国内メーカー各社からEV/PHEVが登場し、そのモデル数が増えてくれば、その中での差別化として活用する可能性は大。コンプリートカーとしての発売は先の話となりそうだが、専用パーツや1グレードとしての展開は早い段階で実現する可能性は高いだろう。エコなだけでなく、エコかつ走りの楽しさが求められる時代となりつつあるだけに、大いに期待されるところである。