フィット、プリウス、ワゴンR、10 年前は何が売れていた?当時の販売ランキングを振り返る

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2020年の新車販売は、新型コロナウイルスによって一時は生産が停滞するなど影響を受けたが、21年に入ってもその影響はまだ続き、さらには半導体不足も加わって、先の見通しが読みにくい状況が続いている。

しかし、新車市場が一時的に混乱するのは何も今回が初めてではない。今からちょうど10年前は、東日本大震災で現在以上に混乱していた。

では、その2011年3月はどのような車が売れていたのか、ちょっと振り返ってみよう。

2011年3月と2021年3月の販売ランキング・トップ10の顔ぶれは、この10年で随分変わった。

10年前はコンパクトなハッチバックが優勢だったが、現在は1位のヤリスは別格としても2位のN-BOX以下、背の高いワゴンとミニバンがずらりと並ぶ。室内空間の広さへのニーズは10年前から変わらないが、それに応えるクルマがいかに増えたか、という事なのだろう。

11年3月にもっとも売れたのはフィット、軽はワゴンRがトップだった

続いて2011年3月の販売台数ランキングを見てみよう。

トップになったのはホンダ「フィット」。当時のフィットは2代目モデルで、前年10月のマイナーチェンジで後期型になり、フィット初のハイブリッドも加わったというタイミングだ。

シンプルなデザインで人気が高かった2代目フィット。明るいグリーンのボディ色は当時採用するモデルが多かった

2位は3代目のトヨタ「プリウス」。2009年の登場からトップクラスの売れ行きを続けた人気モデルだ。この年は、その後5月に「プリウスα」が加わったこともあり、2011年の年間ランキングでトップとなった。当時はトヨタ車でもハイブリッド車のラインアップがそれほどなく、今思えばこの頃がプリウスの絶頂期だったといえるだろう。

歴代プリウスの中でもっとも人気を集めた3代目プリウス

3位と4位はスズキ「ワゴンR」、ダイハツ「ムーヴ」と軽ハイトワゴンが並ぶ。当時はまだ軽スーパーハイト人気がそれほど高くなく、ハイトワゴンが主役の時代。しかし、この年の12月にホンダからN-BOXが発売され、軽の人気カテゴリーが一気に変わることになった。なお、10年後のランキングでも「ムーヴ」はトップ10内に健在だが、その半数以上はスライドドアの「ムーヴキャンバス」で占められている。

4代目ワゴンR。当時はまだ軽ハイトワゴンが主流。この後、軽スーパーハイトワゴンに主役を譲ることになった

5位は前年12月にモデルチェンジしたばかりのトヨタ「ヴィッツ」。現在の「ヤリス」の1世代前のモデルで「ヴィッツ」名としては最後となったモデルだ。

6位はダイハツ「タント」。今ではタントの代名詞となったセンターピラーレスの「ミラクルオープンドア」を初採用した2代目モデルだ。人気はあったが、子育てママ専用車といったイメージで、まだまだ軽スーパーハイトは主流ではなかった。ちなみに当時のライバルは「スペーシア」の前身となるスズキ「パレット」だったが、こちらは苦戦していた。

7位は前年11月に発売されたばかりの先代「セレナ」。前年はミニバン№1をステップワゴンに奪われたが、この年はセレナが猛追してトップを逆転している。翌年には簡易ハイブリッドの「S-HYBRID」も設定され、長く人気を続けたモデルだ。

8位は先代の7代目スズキ「アルト」。丸みを帯びたデザインが特徴的なモデルだ。ライバルのダイハツ「ミラ」も併せて、今では販売台数が少なくなった軽セダンだが、当時はまだまだ主役級だった。また当時は軽自動車の燃費競争が白熱。この年の秋には低燃費仕様の「アルトエコ」も登場している。

9位のフリードは、初代前期型。3列目シートが3人掛けで、7人乗りと8人乗りの設定だった。ただ、やはり狭すぎて実用的ではなかったため、この年の秋のマイナーチェンジで3列目シートは2名隻となり6人乗り・7人乗りに変更されている。

10位のホンダ「ライフ」は、現在のN-WGNの前身にあたる軽トールワゴン。「N」シリーズが登場するまではホンダ軽ラインアップの中心モデルで、手堅く売れたモデルだ。しかし、この年の12月にN-BOXが登場すると一気に旧世代化し、販売も急落。軽ハイトワゴン全盛期を終えることになった。