アストンマーティンは3月22日、新型Vantage F1エディションを発表した。アストンマーティンが60年以上の歳月を経て、フォーミュラ1世界選手権に復帰したことを記念して製作され、アストンマーティン最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアース氏の意向を直接反映させた最初の主力製品となる。
新型Vantage F1エディションは、Vantageラインナップの頂点となるモデルで、フォーミュラ1世界選手権への復帰に刺激を受け、今月末に開催されるF1開幕戦のバーレーンGPでデビューする、フォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーのVantageに採用されたエンジニアリングが直接フィードバックされている。パフォーマンスとダイナミズムを極限まで追及し、サーキットに焦点を合わせてスポーティなVantageにアップグレードを施した最速バージョンのモデル。アストンマーティンの経験豊富なエンジニアリング・チームによって開発された専用のシャシーを搭載し、エアロダイナミクスも見直しを実施。アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1チームがF1への復帰作業に専念する中、アストンマーティンのエンジニアリング・チームは、ロードカーをベースにした究極のVantageである、フォーミュラ1®オフィシャル・セーフティカーを製作した。
CEOのトビアス・ムアース氏によって設定された要件とは、F1サーキットでセーフティカーとしての役割を果たすことができるよう、オンロード性能を損なうことなく、パフォーマンスを大幅に強化してラップタイムを短縮することで、特にレース専用タイヤを装着しなくても、そのパフォーマンスを発揮できることが重要となった。これらの目標を達成した後、ムアース氏は、オフィシャル・セーフティカーで開発したエンジニアリングを量産車へと導入して、Vantage F1エディションを新たに開発するように指示し、その結果Vantageフォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーのレプリカモデルとして、公道走行可能な史上もっともスポーティなVantageが誕生した。
エンジニアリング・チームは、Vantage F1エディションを製作するにあたり、Vantageのあらゆる側面に改良を施し、その範囲はパワートレイン、シャシー、エアロダイナミクスへと及び、走行フィールやキャラクターを改善しながら、パフォーマンスの徹底的な強化が図られた。4.0リッター・ツインターボV8エンジンの最高出力は、25PS増加して535PSとなり、最大トルクは685Nmで変更はないが、ピークトルクの持続範囲が拡大し、扱いやすさと粘り強さが改善されている。また、8速オートマチック・トランスミッションと組み合わせることによりパフォーマンスがさらに強化。シフトアップ時のトルク損失が最適化され、シフト時間が短縮、ダイレクト感と正確性が向上している。このトルクデリバリーは、特に激しいブレーキングを伴うシフトダウンにおいて、車両のコントロール性とドライバーとの一体感を高め、トラクションの限界で走行しているときに、より精密なコントロールを可能にする。この特性は、とくにサーキットを走行する場合にメリットをもたらす。
シャシーの面では、サスペンションとステアリングに焦点を当て、アンダーボディに細かい修正を加えることによってフロントの構造剛性を高め、ステアリングフィールとレスポンスをさらに向上した。ダンパーの内部にも改良を施し、ダンパーの有効範囲を拡大。作動領域が増加したことにより、低速における追従性を低下させることなく、高速走行時におけるコンプレッションおよび突き上げ感の両方で、垂直方向のボディコントロールが大幅に改善されている。ダンパーの変更を補完するために、リア・スプリングレートと横方向の剛性を強化したことによって、鋭いターンインが可能になり、トラクションが向上(特にバンプの乗り越え時)。さらに、フロントエンドの反応速度を補完するために、リアエンドにも調整が施されている。ステアリング入力に対するレスポンスと、ステアリング・フィール(重要な側面)をさらに改善したことにより、路面からのフィードバックがより明確に伝達されるようになり、グリップの詳細な状況をドライバーが感じることができるようになっている。シャシーのハードウェアは最適化され、ホイールとタイヤにも焦点を当て、21インチに拡大されたホイールを標準装備している。Vantageに初搭載される21インチのタイヤは、F1®エディションのためにピレリと協力して特別に開発され、動的挙動の変更と同様に、ロープロファイル・タイヤへの切り替えにより、ドライバーにより正確なフィードバックを提供する。
Vantage F1エディションには、包括的なエアロキットが用意されており、フロントとリアのダウンフォースを強化するように設計され、最高速度では標準仕様のVantageよりも合計200kg多いダウンフォースを発生させる。車両の全体的なバランスも最適化されており、エアロダイナミクスの変更には、車両全幅にわたるフロント・スプリッター、フロント・ダイブプレーン、アンダーボディ・ターニングベーン、新しいリアウィングが含まれている。
ボディカラーには、アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラ1™チームのF1マシンおよびフォーミュラ1®オフィシャル・セーフティカーのカラーを模した、アストンマーティン・レーシング・グリーンも含まれている。エクステリアカラーはサテン仕上げまたはグロス仕上げの両方が利用可能で、他のカラーオプションとしてジェットブラックとルナホワイトが用意されている。これらはすべて、ソリッドマット・ダークグレーのレーシング・グラフィックによってさらに強化されている。インテリアには、新しいオブシディアン・ブラックレザーとファントム・グレーのアルカンターラ張りのトリムが設定され、ライムグリーン、オブシディアン・ブラック、ウルフ・グレー、スパイシー・レッドのコントラスト・ストライプとステッチを選択することが可能となっている。
CoupeとRoadsterの2バージョンを用意し、ベーングリル、2×2ツイル・カーボンファイバー・エクステリア・ディテール、専用グラフィック、4本出しエキゾースト、新デザインのサテンブラック・ダイヤモンド旋削仕上げによる21インチ・アロイホイールを標準装備している 。
アストンマーティン最高経営責任者(CEO)のトビアス・ムアース氏は、「パフォーマンスはすべてのアストンマーティンの中心的要素ですが、F1の名前を冠する以上、真に優れたクルマでなければなりません。Vantageは、アストンマーティン・ラインナップの中では特にスポーティなキャラクターに焦点を絞ったスポーツカーですが、フォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーとしての重責を担うため、さらにパワフルで俊敏、さらにレスポンシブでエキサイティングなクルマにする必要がありました。そしてもちろん、サーキットでより速く走れなければなりません。私は、パフォーマンスの向上は、レース専用タイヤを装着することによって達成するのではなく、クルマのダイナミクスを真に改善することによってもたらされるべきだと主張し、エンジニアリング・チームに厳しい目標を課しました。このクルマを見れば、その目標が達成されたことがお分かりいただけると思います。Vantage F1エディションは、もっとも眼識のあるドライバーに訴求するだけでなく、アストンマーティンの歴史の中でもっともエキサイティングな瞬間を表現したニューモデルでもあります。」 と語った。