バンコクで出会ったBMW502

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2011年のバンコク自動車ショーはクラシックカーの大漁で、ベンツ190SL、キャデラック、クライスラー300、コルベットに続き、第五弾はBMW502の登場である。

昭和26年/1951年、WWⅡで敗戦国となった日本とドイツは、お互い爆撃の焦土からの再建に全力投球をしていた。その中で開催されたフランクフルトショーで、2台の車が注目を浴びた。
メルセデスベンツ300とBMW502。敗戦再建経済中とは想像も付かぬ高級車だった。後に雑紙のグラビアなどで知って、戦前の自動車先進国は、さすがに違うと子供心に感心したのを憶えている。

その頃の日本にもピカピカの外車は走っていたが、戦後の新車はほとんどが進駐軍関係で、日本人の車は、戦争中を生き残った輸入車か、街を闊歩していたのは三輪貨物自動車ばかりだった。
連合軍最高司令部/GHQの命令で乗用車生産禁止。それが解除され、ダットサンなどが出てくるのは昭和27年からである。

そんな時代に復活したドイツの高級車2台。ベンツ300は全長4950㎜・ホイールベース3050㎜・直六OHC・2996cc・115馬力・最高速度160㎞。一方、BMW502は、全長4730㎜・ホイールベース1835㎜・カーブが連続する曲面で構成された流線型は見るからにスマートで高級感に溢れていた。

その後、ベンツ300は直ぐに生産に入ったが、BMWの発売開始は翌年の秋となる。が、その間ショーモデルの直六OHV/1991cc・65馬力は72馬力にアップして、最高速度も135㎞から140㎞に進化していた。
そして55年になると、戦後の西ドイツで最初の復活となるV型八気筒、しかも総アルミ製2580cc・100馬力を開発搭載した。

ゼニスキャブ二連装・アルミ製コンパクト軽量で戦後初のドイツ製V型八気筒エンジン

が、直ぐにボアアップで3168cc・120馬力にアップしたが、更に57年ゼニス32NDIXキャブ二連装で140馬力に進化する。

このBMW502・3.2スーパーは、四速コラムシフト変速で、最高速度175㎞と、ベンツ300を上回る速度で、ゼロ100㎞加速14.5秒は、当時の4ドアセダンとしては群を抜く速さだった。

サスペンションも斬新で、四輪縦置きトーションバースプリンで。前輪ツインコントロールアーム、後輪ウィッシュボーンで、リジッドアクスルを吊った四輪独立懸架で構成されていた。

そんな車が登場した頃の日本と云えば、フジキャビン、ダットサン210,初代スカイライン、初代コロナが登場した年で、世界初人工衛星ソ連のスプートニク打ち上げ成功、巷に流れる流行歌は♪チャンチキおけさ/三波春夫♪俺は待ってるぜ/石原裕次郎♪東京のバスガール/コロンビアローズ♪バナナボート/浜村美智子などがラジオから聞こえてきた。

 

車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。

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