フェラーリ、「SF90スパイダー」を発表 リトラクタブル・ハードトップを備えたPHEV

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フェラーリは11月12日、「SF90 Stradale」のスパイダーバージョンである「SF90 Spider」をデジタルイベントで発表した。同オンラインイベントでは、新モデルの革新的な特徴や開発に関する詳細な情報が公開された。

 

「SF90 Spider」は、SF90 Stradale と同様のパフォーマンスを備えているのに加え、フェラーリ独自のリトラクタブル・ハードトップ(RHT)構造の最新バージョンによって、走りの楽しさと汎用性が上乗せされている。RHTは、きわめて軽量・コンパクトでシンプルなため、わずか14秒で開閉し、走行中も稼働することが可能となっている。またアルミニウム製構造のため、一般的なリトラクタブル・ハードトップより約40 kg軽量なのに加え、調整可能な電動リアウィンドウによって、ルーフを開いて高速で走行中も、抜群の快適性が保証されている。

 

さらに、サーキット走行車両としての機能を極限にまで高めたいオーナーのために、追加のオプション仕様“Assetto Fioranoパック”が用意されている。標準仕様とは大きく異なる専用アップグレードを含んでおり、その最たるものが、フェラーリのGTレースでの経験から生まれ、サーキット走行に最適化されたマルチマチック・ショックアブゾーバーとなる。加えて、高性能素材(カーボンファイバーやチタン等)を使用して車重を21 kg削減しており、リアスポイラーもカーボンファイバー製となっている。タイヤは公道走行も可能なミシュラン製パイロット・スポーツ・カップ2を採用し、コンパウンドを柔らかくし、溝を減らして、サーキットのドライ路面でのパフォーマンスを向上。ほかにも、2トーンの特別塗装もオプションで用意されており、サーキット仕様であることをさらに強調している。

 

<パワートレイン>

フェラーリのプロダクション・スパイダーとして初めてプラグイン・ハイブリッド・アーキテクチャーを採用。内燃エンジンと組み合わせて、フロントにはRAC-e(コーナリング・アングル・レギュレーター、エレクトリック)システムの一部である2基のモーターを搭載。リアのモーターには、F1マシンで開発され、そこから名付けられたMGUK(モーター・ジェネレーター・ユニット、キネティック)を搭載しており、内燃エンジンと電気モーターにおいては最大で合計1,000 cvの出力を発生する。

 

パワートレイン・アーキテクチャーを構成するのは、V8ターボICE、E-diffを備える8速DCT、電気のみの推進も可能な2個の独立モーターを備えるRAC-e電動フロントアクスル、リアのエンジンとギアボックスの間に搭載されたMGUKモーター、高電圧バッテリー、電気モーター制御システム(インバーター)となる。V8エンジンは最高出力780 cv(比出力は195 cv/L)を誇り、フェラーリの従来のV8ターボを60 cv上回るパワーを発揮する。また、完全新設計のオイルバス式8速デュアルクラッチ・ギアボックスを搭載し、最大トルク900 Nm(現行の7速型から20%以上の増加)を伝達するにもかかわらず、ギアボックスの総重量は従来型より10kg軽減。また、クラッチは7速の従来型よりパフォーマンスが35%向上し、変速時には最大1,200 Nmの動トルクを伝達する。

 

排気システムの再設計では、サウンドをよりダイレクトにコックピットに伝達する「ホットチューブ・システム」の導入により、全周波数帯でいっそう豊かで朗々としたハーモニーが響きわたるため、従来のフェラーリV8と比べても車内のサウンドの質が向上した。

 

ハイブリッド・システムのパワーマネージメントは、SF90 Spiderのドライビング・エクスペリエンスにおいて中心的な役割を果たすため、従来のマネッティーノに加えて、eマネッティーノと名付けられたセレクターがステアリング・ホイールに装備された。これにより、高圧バッテリーとタイヤ(トラクション)を行き来するパワーフローを管理し、ドライバーは「eDrive」「Hybrid」「Performance」「Qualify」の4つのモードから選択可能となっている。

 

<エクステリア>

RHTを展開したSF90 Spiderの姿は、フロントからサイド、テールまで、SF90 Stradaleの特徴的なスタイリングを再現している。てこの原理を利用した複雑なシステムで動くRHTの格納部をアーキテクチャーに組み込むほか、同等のシャシー剛性を確保するため、車両の表面を造形し直し、トノカバーをクーペのBピラーと滑らかに融合させて、オリジナルのスタイリング・テーマを継承した。パッセンジャー側のヘッドレスト後方のバットレスは、フェラーリ・スパイダーの特徴となっており、ボディパネルの下の構造部から隆起してきたかのように調和している。

 

RHTの展開時も格納時も、V8エンジンその姿をはっきり見ることができるほか、上から見るとバットレスとシートも整列しており、RHT格納時の後方視界を改善すると共に、モデルの2シーター構造をいっそう強調している。グリーンハウスとルーフには、クーペと同じスタイリング上のソリューションが生かされ、乗車時の快適性を損なうことなくドラッグを低減。コックピットは前方に移動し、ルーフが20 mm下がり、Aピラーはさらにスレンダーに、フロント・ウィンドウの傾斜角度は大きくなっている。ルーフがないことで視覚的に車両の重心が下がって見え、バットレスに続くロールフープのトリムが別の色なので、その印象がいっそう強く強調されている。

 

マトリックスLEDヘッドライト技術を採用し、アクティブ・ビーム・コントロールによって、あらゆる走行条件で視認性が向上。排気ラインのレイアウトを最適化した結果、車両のリアではハイ・エグゾーストパイプが際立っており、そのレーシングカー風の印象を巧みに利用してサーキット由来の個性を強調しているのに加え、低いテール部分がその印象をさらに強めている。

 

<インテリア>

完全な新設計のヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)を採用し、計器類は大部分がデジタルとなり、中央のインストゥルメント・クラスターは1枚の16インチHDスクリーンとなる。また、ヘッドアップ・ディスプレイの導入により、主要な情報はドライバーの視界に入るフロント・ウィンドウに投影が可能で、「視線は路上に、手はステアリング・ホイールに」の理念が実現した。この理念は、フェラーリのすべてのF1マシンでHMI開発の基本となり、公道走行可能なスポーツカーにも徐々に導入されている。

 

ステアリング・ホイールには、一連のタッチパッド・コマンドを導入しており、ドライバーは手をステアリングから離さずに、実質的に車両のあらゆる側面をコントロール可能となっている。従来のモデルの特徴であったF1ブリッジはセンタートンネルから姿を消し、代わってフェラーリを象徴するマニュアル・シフトゲートの現代版が配されている。新シフトゲートはオートマティック・トランスミッションにふさわしいデジタル式で、センタートンネルの最下部には、新しいイグニッション・キーを収めるコンパートメントが装備されている。このキーはフェラーリのボンネットを飾る跳ね馬のバッジの正確なレプリカとなっている。完全なキーレス・モードで機能するため、ドライバーはイグニッションを始動できるだけでなく、ポケットからキーを取り出さなくてもドアを開けることが可能となっている。

 

<7年間メンテナンス・プログラム>

フェラーリの全ラインアップを対象としたこのプログラムは、最初の車両登録から7年間にわたり、すべての定期メンテナンスを保証するフェラーリならではのサービス。保証期間内であればオーナー・チェンジしても継続される。定期メンテナンス(20,000 kmごと、もしくは毎年1回。走行距離制限なし)では、「純正スペアパーツ」および最新の診断テスターを使い、マラネッロのフェラーリ・トレーニング・センターで研修を受けた有資格者による詳細な検査を受けることができる。

 

【「SF90 Spider」主要諸元】

<内燃エンジン>

  • タイプ:V8 – 90° – ターボ – ドライサンプ式
  • 総排気量:3990 cc
  • ボア・ストローク:88 mm x 82 mm
  • 最高出力:780 cv/7500 rpm
  • 最大トルク:800 Nm/6000 rpm
  • 最高許容回転数:8000 rpm
  • 圧縮比:9.4:1

 

<電気モーター>

  • eDrive最高出力:162 kW
  • eDrive航続距離:25 km
  • バッテリー容量:7.9 kWh

 

<サイズ&重量>

  • 全長:4704 mm
  • 全幅:1973 mm
  • 全高:1191 mm
  • ホイールベース:2649 mm
  • フロント・トレッド:1679 mm
  • リア・トレッド:1652 mm
  • 乾燥重量:1670 kg
  • 乾燥パワーウェイトレシオ:1.67 kg/cv
  • 重量配分:45 % フロント/55 % リア
  • トランク容量:74 L
  • 燃料タンク容量:68 L(リザーブ11 L)

 

<タイヤ>

  • フロント:255/35 ZR 20 J9.5
  • リア:315/30 ZR 20 J11.5

 

<ブレーキ>

  • フロント:398 x 223 x 38 mm
  • リア:360 x 233 x 32 mm

 

<トランスミッション&ギアボックス>

  • 8速F1デュアルクラッチ・ギアボックス、AWD、電動フロントアクスル

 

<電子制御>

  • eSSC:E4WD(eTC、e-Diff3)、SCME-Frs、FDE 2.0、EPS
    エネルギー回生機能付き高性能ABS/EBD

 

<パフォーマンス>

  • 合計最高出力:1000 cv(735 kW)
  • 0-100 km/h:2.5秒
  • 0-200 km/h:7.0秒
  • 100-0 km/h:< 29.5 m
  • 最高速度:340 km/h
  • フィオラノのラップタイム:79.5秒

 

<燃料消費量 & CO2 排出量>

  • ホモロゲーション取得申請中(WLTCモード)

 

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