飛行船の歴史は古く、100年間以上も続けられていたが、軽量コンパクトな動力が無い時代に実用化の実現は無理だった。
が、先駆者の一人、ブランシャールは、1785年/天明5年に気球に初めて舵を付けて、86年に英ドーバーから仏カレーへの世界初海峡横断飛行に成功している。
その前1784年、ムスニエはそれまで球体だった気球を、流線型に改良進化させた。1852年になるとジファールが、全長44mx直径12mの飛行船に、三馬力の蒸気機関を搭載し、時速10㎞で飛び、世界で初めて動力飛行船の方向コントロールに成功する。
いずれにしても上記三名はフランス人というように当時フランスは、科学では世界の最先端と自負自慢していたのである。
動力飛行船では、ヘンラインが1872年/明治16年に、全長50ⅿ・2400㎥の飛行船に、水冷直四ルノアール型石炭ガスエンジン3.5馬力を搭載して、飛行に成功している。
1883年、ティサンディエ兄弟の全長28m・1060㎥の飛行船は、1.5馬力電気モーターで飛行し評判になったが、調子が良いものではなかったようだ。
さて、飛行船の実用的第一号と思われるのは、1884年のルナールとクレブスのフランス号。全長50ⅿ・1864㎥に8馬力電気モーターを搭載して、8㎞の周回飛行に成功したが、当時の電動機は重量96kgで電池が400kgもあり、ただ飛んでいるだけだった。
さてダイムラーとベンツの内燃機関の登場で、飛行船実用化の先鋒を切ったのがデュモンだった。が、真の実用化となるとツェッペリンの登場まで待つ必要がある。
飛行船の代名詞的存在ともなるツェッペリンの優れたところは着眼点…1㎥で浮揚力1kgの浮揚力しか生まれない飛行船を実用化するには、馬鹿でかくなるから軟式では駄目と初めから硬式飛行船開発に取り組んだことである。
軟式は袋の中に水素やヘリュームを封じ込めて浮揚力を得るものだが、硬式はアルミ製骨格に外皮を貼り、骨格内部に入れた袋にガスを詰めるという方式である。
内燃機関は20世紀に花開く動力で、19世紀に花開いたのは蒸気機関だが、空の動力としては大型で重くて不向き、また電動機も電池共々重すぎで不向き、結局、飛行船、飛行機、そして自動車の完全実用化は20世紀に入ってからということになる。
車屋四六:1960年頃よりモーターマガジン誌で執筆開始。若年時代は試乗記、近頃は昔の車や飛行機など古道具屋的支離滅裂記事の作者。車、飛行機、その他諸々古い写真と資料多数あり。趣味はゴルフと時計。<資格>元JAFスポーツ資格審査委員・公認審判員計時一級・A級ライセンス・自家用操縦士・小型船舶一級・潜水士等。著書「進駐軍時代と車たち」「懐かしの車アルバム」等々。