トヨタ・新型ハリアーを試乗 快適な室内空間でドライブを楽しむ大人の上級SUVへと進化

試乗レポート

人気の高いSUV市場の中でも、とりわけ充実しているのがミドルクラスSUVだ。トヨタRAV4、日産エクストレイル、ホンダCR-V、スバル・フォレスター、マツダCX-5/CX-8とラインアップが充実し、激戦区となっている。

が、ボディサイズ的には同じクラスに属するものの、実質的には一つ上のポジションにいるのがトヨタ・ハリアーだ。実用性重視のライバル達に対し、都市型の上級クロスオーバーSUVという位置付けで直接のライバルは不在。SUVに上質さを求めるユーザーの人気を集めている。

そのハリアーが6月にフルモデルチェンジした。7年ぶりの一新ということで、その進化には大いに期待されるところだが、果たして実力はどうか。実際にチェックしてみた。

全高を下げたクーペ調のスタイルでスマートさが増したスタイリング

まずエクステリアは、ルーフ後端を下げたクーペフォルムを採用。ボディサイズは全長4740×全幅1855×1660mmで、全長、全幅は先代モデルよりわずかに拡大されたが、全高が30mm下げられたこともあり、見た目はそれほど大きく感じられない。ただし全幅が1850mmを超えるので、機械式駐車場のユーザーは場合によっては収まらなくなる可能性もある。そこはちょっと注意が必要だ。

滑らかなリヤのフォルムも美しい。都会の風景にマッチするデザインだ

フロント、リヤのデザインも一新されたが、メリハリのあるキャラクターラインを多用する最近のトヨタ車では珍しく、新型ハリアーは控え目。力強い押し出し感というよりも、面で流麗さを感じさせるデザインだ。人によっては、ちょっとおとなしく感じるかもしれないが、上品な印象は先代以上。カッチリしたラインで構成されるRAV4とは全く異なるキャラクターであることが一目でわかる。

レザー調素材をふんだんに用い、上質な雰囲気が演出されている

室内は上質で落ち着いた雰囲気。この質感の高さがハリアーの真骨頂といえるだろう。特に幅の広いセンターコンソールが堂々とした上級クラスならではの印象を与える。このセンターコンソールをはじめ、手の触れる部分に触り心地の良いレザー調素材が用いられているのもRAV4とは異なるポイントだ。またシートの座り心地も満足できる。前席、後席とも座面がたっぷりとしており、ホールド性も良好。後席空間も頭上、足元ともに余裕があり、リラックスして過ごすことが出来る。

前席、後席ともシートの座り心地が良い

試乗車には12.3インチのディスプレイオーディオや調光パノラマルーフも装備されていた。ディスプレイオーディオはタッチ式で感度も良く、使い勝手がいい。インパネ上部に設置されているが、視界を遮ることもない。ただ全面を地図表示にすることができないのは留意しておきたい。情報表示画面と2分割となるため、地図が表示されるのは実質8インチ程度となる。ナビの場合、横方向が広くてもあまり意味がないが、地図表示の面積自体はそれほど大きくはない。

12.3インチのワイドディスプレイ。全画面をナビ表示にすることはできないが、ナビ表示と情報表示の左右入れ替えは可能

一方、新型ハリアーのアピールポイントでもある調光パノラマルーフは、透過と遮光の切り替え式。反応は速く、一瞬で切り替えることが出来る。オープンにはできないので機能としての必要性はあまり高くないが、明るい室内空間が好みの人は選択するとよいだろう。ただし「Z」か「Z・レザーパッケージ」にしか装備できないので、そこは注意してグレードを選びたい。

調光パノラマルーフは瞬時に透過させることが可能だ

続いて走りをみてみよう。新型ハリアーのパワートレーンはガソリンとハイブリッドの2タイプ。駆動方式はそれぞれFFと4WDが用意されている。

ガソリン車が搭載するのは、2Lのダイナミックフォースエンジン+ダイレクトシフトCVT。先代ハリアーの2Lガソリン車と排気量こそ同じものの、エンジン、トランスミッションとも新世代のものとなり、最高出力は先代の151psから新型では178psへと向上している。

実際に走行してみると、クセのない扱いやすいエンジンという印象。特に低中速域でのスムーズさに優れており、ストップアンドゴーが連続する街中でも滑らかな走りをみせる。先代ハリアーのガソリン車は力不足感が否めなかったが、新型ではこれも改善。決してパワフルというわけではないが低回転域のトルクが増しており、日常の走行でストレスを感じることはないだろう。ただし高速道路での合流など一気に加速して欲しい時や、長く続く登り坂では少し重さを感じる場面もあった。

ハイブリッド車が搭載するパワートレーンも一新。エンジンの排気量は2.5Lで変わらないが、こちらも新世代のダイナミックフォースエンジンに進化している。システム出力は先代モデルの194psに対して、新型はFFで218ps、4WDで222psとパワーアップ。発進からスムーズな加速で静粛性も高い。もちろん高速域でもパワーに余裕をあるので運転が快適だ。長距離ドライブが多いユーザーは、ハイブリッドを選んだ方が満足できるだろう。

基本的な乗り心地や操舵感などは、ガソリン、ハイブリッドともに大きな違いはない。クーペ調のスタイルでスポーティな印象を強めた新型ハリアーだが、ステアリングやアクセル、ブレーキの操作に対して過敏に反応することなく、自然な感覚で運転できる。操作に対してする反応が穏やかだから、余計な神経を使う必要はない。リラックスして運転しやすいセッティングだ。

乗り心地も満足できる。足回りがしなやかで巧みにショックを吸収するので、多少荒れた路面でも気にならない。ピッチやロールも抑えられており、後席も含め同乗者も快適だ。連続するコーナーでも余分な動きがないので、安心してドライブすることが出来る。

というわけで、新型ハリアーは上質なクロスオーバーSUVとして満足できる仕上がりだ。先代ハリアーからの乗り換えユーザーはもちろん、上級セダンから乗り換えたとしても十分満足できるだろう。快適な室内でくつろぎながらロングクルージングを楽しむ、そんな大人のドライブに最適なモデルになっている。(鞍智誉章)

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