話題のBセグメントコンパクトカーを比較試乗 パート2

コラム・特集

トヨタ・ヤリス、ホンダ・フィットと話題の新型車が登場し、ここに来て活況を見せている国産コンパクトカー。パート1では内外装などのデザインを中心にレポートしたが、パート2では走りやパワートレーンの違いを見てみよう。

パワートレーンは、ヤリスとフィットはガソリンエンジン、ハイブリッド(フィットの呼称はe:HEV)、ノートはガソリン、エンジンで発電機を回すことで得られた電力で電気モーターを回す「e-POWER」、MAZDA2はガソリンと、クラスで唯一となるディーゼルを設定する。

・ヤリス:直列3気筒 1.0L 最高出力69PS/最大トルク92Nm

     直列3気筒 1.5L 最高出力120PS/最大トルク145Nm

     直列3気筒 1.5L 最高出力91PS/最大トルク120Nm+モーター(ハイブリッド)

ハイブリッドモデルの直列3気筒 1.5Lエンジン

・フィット:直列4気筒 1.3L 最高出力98PS/最大トルク118Nm

      直列4気筒 1.5L 最高出力98PS/最大トルク127Nm +モーター

      98PS/最大トルク127Nm、e:HEV

e:HEVモデルの直列4気筒1.5Lエンジン

・ノート:直列3気筒 1.2L 最高出力79PS/最大トルク106Nm

     直列3気筒 1.2L +スーパーチャージャー 最大出力98PS/最大トルク142Nm

     発電用エンジン+駆動モーター 最高出力109PS/最大トルク254Nm、e-POWER

発電用として1.2Lエンジンを搭載するe-POWER

・MAZDA2:直列4気筒 1.5L 最高出力110PS/最大トルクを141Nm

         直列4気筒1.5L ディーゼルターボ

         最高出力105PS/最大トルク220Nm(MT)、250Nm(AT)

直列4気筒1.5L ディーゼルターボエンジン

▪️想像以上にパワフルな走り ヤリス

ハイブリットモデルのヤリスの走りは、想像以上にパワフルで軽快。走り出しから力強さを感じられ、高速域まで淀みなく加速し、アクセル、ブレーキ、ハンドル操作に対しての反応も素直で素早いことも好印象だ。ヴィッツから比較して、エクステリアと同様に走りもアグレッシブになっている。

程よい包まれ感のある運転席

一方で、乗り心地は硬めになっており、足回りの動きがそのまま伝わってくるような感覚だ。特に街乗りの速度域ではこの傾向が顕著で、キャビンが揺すられ、突き上げも大きく感じられる場面もあった。日常の足となるコンパクトカーであるならば、もう少ししなやかで穏健なセッティングでも良いと思われた。

コンパクトカーとしては十分過ぎるパワーを持つ

先進安全装備は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)が30km/h以下で解除されてしまい全車速追従型ではないものの、ハンドルの右側のスイッチを2アクションすれば作動するため、設定も比較的容易。レーンキープ機能は、はみ出しそうになったら介入するような感覚で、日産のプロパイロットのように常にレーンのセンターをトレースするような〝自動運転〟感は希薄であった。

▪️静粛性の高さはクラスNo.1 フィット

新型フィットのハイブリッドシステムは、先代のツインクラッチ+1モータータイプの「i-DCD」から、アコードやステップワゴン、インサイトなどに搭載された走行用と発電用の2つのモーターを持つ「e:HEV(従来のi-MMD)」が採用された。

角が取れた乗り心地は好印象

通常の走行では、走行用のモーターが前輪を駆動、エンジンは発電に徹して、モーターのみで駆動するシリーズハイブリッド状態が基本となる。より力強い加速や、バッテリーの電気だけでは足りない場面ではエンジンが始動し、発電用のモーターを回してその電気で走行用モーターを駆動することになるが、急加速でもしないかぎりはエンジンの音はほぼキャビンには届かず、静粛性の高さは今回試乗した4モデルの中では最も良かった。

乗り心地はヤリスとは対照的に、角が取れたしっとり系で日常での快適性を重視したセッティングで、同乗者から不興を買うことはなさそう。温かみのあるデザインや居住性の高さと合わせて、どの席でも快適に移動できることを念頭に造られたクルマであることが感じられた。

Aピラーの形状を工夫すること見晴らしの良さを確保した

また、電動パーキングブレーキが全車標準装備で、ACCは全車速対応かつ渋滞追従可能で停止保持まで行うのは、国産コンパクトカーでは現状フィットのみ。高速移動が多いユーザーにとっては、大きなメリットとなる装備だ。

 

▪️e-POWERは電動ならではの力強さとダイレクト感 ノート

ノートe-POWERは、1.2Lガソリンエンジンでモーターを駆動するための発電のみを行い、その電力を使って全てモーターで駆動するというシステムを採用するシリーズハイブリッド。他のEV(電気自動車)やPHV(プラグインハイブリッド)のように外部から充電は不可で、CO2を排出するため純粋なEVとは言えないが、その乗り味や音も立てずに走る姿はEVそのものだ。

モーター駆動による出足の良さはEVの走りそのものだ

モーターで駆動するクルマの最大の特徴は、アクセルを踏んだ瞬間から一気に最大トルクを発揮できる特性にある。2.0Lターボエンジンに匹敵するという最大トルクを発進直後から発揮し、コンパクトカーとは思えないパワフルな走りでボディをグイグイと引っ張る。アクセル操作に対するレスポンスもかなりリニアで、街乗りから高速までシームレスに俊敏で意のままにドライブフィールは、ガソリンエンジン車とは明らかに違うものになっている。

ワンペダルドライブはe-POWERの大きな特徴の一つで、街乗りの速度域なら、停止するためにアクセルを離すだけで十分に減速する。アクセル操作だけのワンペダルドライブを楽しむことができる。

フラット感の高い乗り心地も好印象

衝突被害軽減ブレーキなどどいった、基本的な先進安全装備は搭載しているのものの、ACCの設定速度域が約30~100km/hと上限速度が低く、レーンキープも付いていない。高速道路を頻繁に使うユーザーでなければ大きな問題にならないだろうが、モデルサイクルが長いとはいえ、日産の看板車種にプロパイロットが搭載されていないことには物足りなさを感じるので、早期のフルモデルチェンジを期待したいところだ。

 

▪️クラス唯一のディーゼルエンジンを設定 MAZDA2

デミオからの改名を機に、名前だけでなく各部のブラッシュアップも行われたMAZDA2。デザイン以外でそれが如実に感じられたのが、静粛性の向上だ。マイナーチェンジで従来から吸音力を約35%高めたことで、余程回さない限りディーゼル特有のエンジン音をキャビンに伝えないのは特筆すべきポイント。質感の高いインテリアと合わせて、ワンランク上のクルマに乗っている気分にさせられる。

輸入車に近いドライブフィールを実現していたMAZDA2

全体の乗り味はやや硬質寄りで、ステアリングへの反応がリニアなこともあってシャープな印象を受ける。近年のマツダ車に共通するテイストであり、無駄な動きがないので安心感が高い。ディーゼルエンジンは走り出しだけでなく、高速域での再加速でも力強く、速度、走行環境を問わない安定感の高さは、輸入車に近いドライブフィールと言える。

乗り心地は硬質寄りながら不快な突き上げなどは感じない

従来のデミオは、国産コンパクトカーとしていち早くACCやブラインドスポットモニタリングを採用するなど、先進技術も積極的に取り入れていることも、新世代のマツダ車の特徴。60km/h以上で作動するレーンキープ機能、アダプティブLEDヘッドライトは片側20分割となり、ハイビーム維持性能、カーブでの配光性能を高めた。加えて、ACCの作動範囲は0km/h~115km/hに拡大されているが、電動パーキングブレーキ非搭載のため、追従走行からの停止保持ができないのは惜しい点である。

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