話題のBセグメントコンパクトカー比較レポート パート1

コラム・特集

近年は質感の向上や装備の充実が目立つ軽自動車が人気を集める中で、やや影の薄かった国産コンパクトカーだが、トヨタ・ヤリス、ホンダ・フィットと話題の新型車が登場し、ここに来て活況を見せている。そこで、この新型車2台をはじめ、201718年と登録車販売No.1の日産・ノート、昨夏改名と同時にマイナーチェンジを実施したマツダ・MAZDA2(旧名・デミオ)に試乗し、デザイン、走りなどそれぞれの魅力を探ってみた。今回はパート1として、4車種の内外装を中心にレポートする。

この4車種はいわゆるBセグメントに属するコンパクトカーで、価格帯は以下のように150万円~250万円前後で設定されている。ライフスタイルや使い方にもよるが、購入時は軽自動車の上級モデル、またはワンランク上のCセグメント(スバル・インプレッサ、マツダ・MAZDA3など)との比較検討も視野に入る。

・ヤリス:1395000円~2493000

・フィット1557600円~2536600

ノート:1447600円~2721400

MAZDA21544400円~2619000

ボディサイズは車種によって全長が異なるが、全幅と全高はほぼ同じで全て5ナンバーサイズに適合。この中で唯一、SUVテイストのデザインが与えられたフィットCROSSTARは、全幅が1725mm3ナンバー規格となるが、取り回しに苦労することはないだろう。

・ヤリス:全長3940mm×全幅1695mm×全高1500mm4WDE-Four除く

・フィット:全長3995mm×全幅1695mm×全高1500mm1540mmCROSSTAR4WD除く

・ノート:全長4100mm×全幅1695mm×全高1520mm1525mm

MAZDA2:全長4065mm×全幅1695mm×全高1520mm1525mm

▪️躍動感のあるデザイン ヤリス

ヤリスのエクステリアは「BOLD(大胆)」「BRISK(活発)」「BOOST(加速)」「BEAUTY(美しさ)」「BULLET(弾丸)」などの頭文字である「B」と、力強く走り出す「ダッシュ」を組み合わせた「B-Dash!」をコンセプトに採用した。

アグレッシブな雰囲気に一新

抑揚のあるボディサイドラインや、立体的な造形としたリヤのデザインなど、全体的に躍動感のあるスタイルにまとめられている。ボディカラーはモノトーンカラー全12色をラインアップするほか、ブラックルーフ4種類、ホワイトルーフ2種類といった2トーンルーフ計6種類が用意されている。ポップなボディカラーではアグレッシブな際立つが、白や黒といったモノトーンや細かい仕様の違いでまた印象が表情が異なりそうで、パッと見の第一印象では、今回試乗した4車種の中で一番印象に残ったデザインであった。

インテリアもエクステリアと同様に立体的な造形になっている

インテリアは、先代ヴィッツのものからインパネの高さを抑えて縦横比を横長にしたことで、幾分ワイドな空間になった印象。運転席は程よい包まれ感を持たせ、エクステリアと同様にスポーティな雰囲気を漂わせる。

パワーシートのメモリー機能に相当する「運転席イージーリターン機能」

また、パワーシートのメモリー機能に相当する「運転席イージーリターン機能」をトヨタ車で初採用。シートの前後ポジションを一定にキープしつつ、シートベース右側面の専用レバーでロックを解除することにより、シートを最後端までスライド可能。乗車後は同じくレバーを引き上げながらシートを前方にスライドさせると、あらかじめ設定していたシートポジションの前後位置で止まる仕組みとなっている。

荷室にAC100V 1500Wコンセント一口をオプションで装着可能

加えて、ハイブリッドにはオプションでAC100V 1500Wコンセント一口を装備可能で、アウトドアだけでなく災害時の電源としても活用できるのは大きなポイント。荷室は二段にして使えるアジャスタブルデッキボード(オプション)なども備え、使い勝手に不満を覚える事はなさそう。

後席ドアの開口幅は狭く乗降性は良くない

後席は、身長177cmの筆者が座ると、頭上・膝前ともに拳一つ分ほどのスペースはあるものの、長時間の移動はキツそう。さらに、後席ドアの開口幅は今回試乗した4車種の中でもっとも狭く感じられ、乗降性は良くない。子どもや身のこなしが軽い人は大きな問題にならないだろうが、高齢者を日常的に乗せる使い方をする人は注意が必要。設計が前席重視のため、パーソナルカーとしての使い方が最適と言える。

▪️五つのデザインテイストを設定 フィット

フィットはヤリスとは対照的に、先代のアグレッシブなスタイルからシンプルでおとなしいデザインとなった。居心地の良さをテーマに、飽きのこないスタイルを追求した。

内外装などを変化させた5種類のタイプを設定し、「BASIC(ベーシック)」「HOME(ホーム)」「NESS(ネス)」「CROSSTAR(クロスター)」「LUXE(リュクス)」という名前と専用装備が与えられているが、SUVテイストのCROSSTAR以外大きな差は感じられない。

上級グレードのリュクス

インテリアは、フロントウィンドウを支えるフロントピラーを極細化し、室内側をブラックアウトさせて存在感を抑制するとともに、実質的な水平視野角を拡大。運転席に座ってみるとアイポイントこそ乗用車だが、ミニバンやスーパーハイト系軽自動車を思わせる視界の広さがあり、右左折などの視認性が高いのは特筆すべきポイントとなっている。

さらに、シートは座面のパッド厚をフロントで30mm以上、リアで24mm拡大しており、特に後席の座り心地が大きく改善されている。ホンダが得意とするセンタータンクレイアウトは新型フィットでももちろん継承されており、キャビンや後席の広さはコンパクトカートップレベル。筆者が座っても膝前は拳2個半ほどのスペースがあり、ファーストカーやファミリーカーとしての素養も備えており、上位グレードのリュクスは上級車種からのダウンサイジングにも応える質感を持っている。

 

▪️居住性の高さは随一 ノート

2012年に現行モデルがデビューし、2016年にe-POWERが追加されたノート。これまで複数回マイナーチェンジを行っているが、今回試乗した4車種では一番モデルサイクルが長いモデルとなっている。

モデルサイクルが長くでフルモデルチェンジも噂されているノート

エクステリアは日産のデザインアイデンティティであるVモーションや、LEDヘッドライト(オプション)によって先進性は保てているが、インテリアはインパネのピアノブラック加飾以外ややチープな印象を受ける。加えて、e-POWERのシフトノブはプリウスのような形状で、運転中頻繁にギヤチェンジを必要としないが、掴みづらく操作性はイマイチだ。

一方で、室内の居住性は高いレベルにある。後席のフロアはフラットでかつ足元空間も広く、膝前の拳は3個とフィット以上の広さを体感できた。荷室も広々としており、後席を倒せばほぼフラットな空間になるなど、基本的なパッケージ性能は高い。フィットと同様にファミリカーとしての素養もあり、こういった点が評価され、2年連続で登録車の販売No.1につながったのだろう。

 

▪️クラスを超えた質感 MAZDA2

近年CX-5CX-8には輸入車からの乗り換えユーザーも増えているというマツダ。これは輸入車に比肩するデザイン性などが評価されてのことだが、エントリーモデルのMAZDA2においても、その哲学や質感の高さが貫かれている。

改名と同時にフロントグリルのデザインを一新

MAZDA2に改名と同時に、エクステテリアはフロントマスク、ホイール、リヤコンビランプのデザインを一新した。

シックな印象のインテリアは、手に触れる部分にソフトパッドなどを用いるとともに、運転席はシートメモリー機能付6wayパワーシート(オプション)を装備。コンパクトカーのクラスを超えた装備や質感を実現していた。

質感の高いインテリア

後席の広さはヤリスと同等で乗降性はそこまで悪く無いが、MAZDA2も前席重視の設計だ。ドアポケットの収納は前席のみで後席に無いことに加え、ドリンクホルダーのスペースもサイドブレーキの位置と干渉しやすくなっているのが難点である。

 

▪️Bセグメント内でも異なる個性

パート1では内外装やデザインを中心に4車種を比較したが、前席重視と割り切った分デザインや質感に重きをおいたヤリスとMAZDA2、ファーストカーとしての素養も備えたフィットとノートに大きく分けられた。

パート2では、それぞれのパワートレーンの違いに触れながら、試乗インプレションを中心にレポートする。

Tagged