2014年の登場以来、個性的な外観デザインで高い人気を集めた初代ハスラー。それだけに2代目モデルはフルモデルチェンジでどうなるか注目されたが、スズキの出した答えはキープコンセプト。2代目となる新型ハスラーは、一目で「ハスラー」とわかるデザインを踏襲しつつ、より精悍さを増す方向でブラッシュアップされた印象だ。
しかし、変わらなく見えるのは外観だけの話。中身は格段の進化を遂げている。その最大の要因といえるのが骨格であるプラットフォームの刷新。「ハーテクト」と呼ばれるスズキの最新プラットフォームが採用されたからだ。ちなみにこのハーテクトが最初に採用されたのは、14年末に登場した現行アルトから。つまりその直前、14年1月に発売された先代ハスラーは、旧世代プラットフォームを採用する最後のモデルだったわけで、スタイルはともかく、走りや乗り心地の面では、他社の最新モデルに比べてやや物足りなかったのは、これが大きな要因だったというわけだ。
というわけで、魅力的なデザインと最新プラットフォームの組み合わせになった新型ハスラーは、見た目も走りも充実したことになる。それは試乗した瞬間から、体感することができた。
外観はあまり変わり映えのしない新型ハスラーだが、室内のデザインは一新。特にインパネ周りはまったく異なる新デザインとなった。特徴的なのは3連インパネカラーガーニッシュの採用で、メーター、オーディオ、アッパーボックスを明確に分けたこと。ガーニッシュそのものは機能的に大きな意味があるわけではないが、外観のワクワク感が室内にも感じられるようになったのはうれしい。またこのガーニッシュは、オプションでブラックやゴールドなども用意されているので、好みに合わせて変更することができるのもポイント。気軽にカスタマイズが楽しめるのも新型ハスラーの魅力といえるだろう。
機能性で見ると、シフトの角度が変更され、先代の垂直型から若干寝かせた角度に変更されたので、より正確にシフト操作がしやすくなった。またシートがセパレートになったことで、間に小物を収納できるスペースが設置されるなど、日常の使い勝手も向上している。ただ少し気になったのはエアコンの操作部。先代はシフト横に縦型にまとめられていたが、新型では横一直線にボタンが並ぶタイプとなったため、操作には少し手を伸ばす必要がある。小柄な人だとちょっと操作しにくい印象だ。
一方、走りに関してはNA、ターボとも満足できる。もちろん動力的な余裕はターボが上回るのは当然だが、実際に試乗してみると、NAのパフォーマンスが向上しているのに驚かされた。軽自動車の場合、NAとターボで発進時から力強さに明確な違いを感じることが多いのだが、新型ハスラーの場合、ISGのアシストもあり、街中ではそれほど大きな違いを感じさせない。たまに高速道路に乗る程度、という使い方ならNAでも不満はないレベルである。
ボディや足回りの剛性が高められたことで、無駄な動きが抑えられたことも大きく進化した部分。先代はコーナーリングで動きがやや不安定になる傾向があったが、新型ではきわめて安定しており、ストレスを感じない。これは、プラットフォームを最新のハーテクトに刷新した恩恵といえるだろう。またステアリングの剛性も高められ、ステアリングの感覚に曖昧さがなくなったのも好印象だ。
乗り心地も満足できる。特に前席は先代のベンチシートからセパレートになったことでホールド性が向上し、座り心地も良い。重心がやや高いクルマだが、フワついた感じはなく、かといって跳ねるようなハリの強さもない。バランスが取れたセッティングだ。しなやかさという点ではFFの方が4WDより上回るが、その差は僅差であり、どちらを選んでも不満はないだろう。また静粛性の高さも特筆できる部分。特にターボはアクセルをそれほど踏み込まなくても十分なパワーが出てくることもあって、エンジン音も気にならないレベルだ。
またターボ車には、スズキの軽自動車としては初めてACC(アダプティブ・クルーズコントロール)が搭載されたが、こちらの実力も上々。加速、減速ともに比較的穏やかで、ごく自然に車の流れに沿って走ることができる。ACCと車線逸脱抑制機能は、ともにステアリング右側のスイッチで操作するが、それぞれ独立してオン・オフできるので、状況に合わせやすいのも実用的といえるだろう。ただし、ターボ車のみの装備となっているのはちょっと残念。NA車でも長距離ドライブを楽しめる実力を備えているのだから、ぜひ全車で選べるようにして欲しいところである。(鞍智誉章)