今年7月にビッグマイナーチェンジが行われたスカイライン。その目玉は2つ、ハンズオフを実現した先進運転支援技術「プロパイロット2.0」の搭載と、スカイライン史上最高となる405馬力を発揮する「3.0L V6ツインターボエンジン」の搭載だ。プロパイロット2.0の搭載はハイブリッド車のみ、V6ツインターボはガソリン車のみだから、今のところこの2つを両方搭載したモデルがないのは残念なところだが、スカイラインが久々にワクワクさせてくれたのは間違いない。今後の進化にも大いに期待されるところである。
今回試乗したのは「プロパイロット2.0」を搭載した「GT Type P」。V6・3.5Lエンジンとモーターを組み合わせた1モーター2クラッチ方式のハイブリッドシステムを採用したモデルである。パワートレーン自体は変更はないが、システム最高出力364ps、JC08モード燃費14.4km/Lは未だトップレベルの動力性能、燃費性能を誇っている。
当日は都内から出発し、首都高からアクアラインを通って千葉に向かうルート。首都高に乗ったところでプロパイロットをオンにしてみる。操作自体は非常に簡単でセレナやデイズに搭載される従来のプロパイロット同様、ステアリング上部の青いボタンを押すだけだ。するとメーター間のディスプレイが緑の表示になりシステムON、ハンズオンでの同一車線走行が可能になる。手はステアリングから離せないが、足の操作が不要になるのは楽だ。制御が緻密になったことに加え、スカイラインではパワーに余裕があることもあって、加減速、特に加速時のスムーズさは従来のプロパイロットを大きく上回り、違和感がまったくないのには驚かされた。
同時に標識を検知して速度が自動的に設定され、またカーブの手前では自動的に減速してくれる。安全マージンが大きく取られているので安心だ。ディスプレイ上には、隣りの車線を走る車がイラストで表示されるので、自車が周囲の状況を認識していることがわかるのも安心感がある。
さらにしばらくすると青い表示になり、ハンズオフ走行が可能なったことを知らせてくれる。ステアリングから手を離しても、車は車線の中央をきっちり維持し、カーブもきれいにトレースしていく。しばらくすると渋滞にはまったが、手を離したことで、ステアリングを握ったままの姿勢が意外と負担になっていることに気がついた。疲労感が全然違うのだ。ドライバーは手も足も操作せず、リラックスした姿勢で前方を見るのみである。
が、だからといって脇見は許してくれない。ダッシュボード上のカメラで視線を監視しており、5~6秒よそ見をしていると警告音で注意を促す。ウトウトしがちなドライバーでも安心だ。降りるべきICまで心地よく過ごすことが出来る。
スムーズなハンズオフ走行で、非常に心地よいドライブが楽しめたが、やや気になるところもあった。特に渋滞時の急な割り込みへの反応が少し遅い。同じく高速道路でのハンズオフを実現したBMW(ただしこちらは時速60キロ以下の渋滞時のみ)では、割り込みしようとする車の動きを素早く察知し、車線は維持しつつも端によけるのに対し、プロパイロットはそのまま車線の中央を進んで、割り込まれてから急ブレーキをかけるといった動きとなる。またナビの反応が遅いのも気になったところ。今回は目的地設定を施設名や住所で行ったが、いずれの場合も画面をタッチしてからワンテンポ遅れて反応するので、少々操作しにくい印象だった。
その他、トンネル内ではハンズオフが使えない等の制限もまだまだある。しかし、全体として見れば不満点は小さなもの。まだまだ完全自動運転とはいかないものの、その完成度の高さには驚かされる。今後の進化が大いに楽しみなところだ。(鞍智誉章)