確かな技術力と革新的な発想で、日常使いにも優れるサイズ感のバンやミニバンをベースとした、バンコン(バンコンバージョン)のキャンピングカーの製造を得意とする「バンテック新潟」。オリジナル架装車両「VanRevo(バンレボ)」ブランドは、主力の「VR」、「MR」、「ディアリオ」をはじめ、シンプルで飽きのこないデザインと、マルチユースな使い勝手などが初心者からベテランキャンパーまで幅広い支持を集めていることで知られている。今回は主力モデルの誕生背景や、こだわりのクルマづくりについて紹介する。
■きっかけはスキー場のハイエース
トヨタ・ハイエースや、日産・NV350キャラバンをベースとした4ナンバーキャンピングカーのパイオニアとして、市場を牽引してきたバンテック新潟。そのルーツは「バンテック(現・VANTECH)から委託されたバンコンを製造していた」と市村俊樹代表が話すように、バンレボブランドが誕生するまでは、キャンピングカーを製造して販売するという体制はなかったという。委託製造ではユーザーからのフィードバックを得ることが難しく、バンコン製造を通して得たノウハウを存分に活かせないことに加え、当時スキー場などでハイエースを自ら改造して車中泊を行う人を多く見かけたこともきっかけとなり、自社ブランドの製造・販売を行うようになった。それは今からおよそ25年前のことである。
その後完成した初の自社製造モデル「ホース」は、車両後部に本物のフローリングを設えた小上がりを持ったユニークなモデルとして、アウトドア雑誌「BE-PAL」でも紹介されたこともあり人気を博した。市村代表は「ユニークな個性だけでなく、広い積載スペースとフラットな就寝スペースを備えているというシンプルな魅力が支持された」と分析し、そこから〝シンプルで優れた使い勝手を〟テーマとしたクルマづくりへ注力していくきっかけになったと当時を振り返った。
■クルマづくりの方向性を決定づけたVR
ホース以降もハイエースをベースとしたバンコンを製造していたが「数多あるモデルの中において特徴や魅力が欠けていたものが多かった」と説明するのは上越本店の塚田忍店長。転機となったのは、2007年に登場したVRだ。
VRはハイエースとキャラバン(現・NV350キャラバン)をベースとし、広い積載スペースとフラットな就寝スペースという従来からの思想を継承しながら、8ナンバー要件である調理や水道などのキャンピング装備を排した〝4ナンバーキャンピングカー〟として他社に先駆けて発売。特に、ハイエースベースのバンコンはスーパーロング・ワイド幅・ハイルーフが定番であったが、全長4695㎜×全幅1695㎜×全高1980㎜のロングボディ・標準幅・標準ルーフの「470 タイプ1」は異色の存在であった。キャンピングカーは8ナンバーであることが当たり前という風潮の中、同業者やユーザーからも「なぜ4ナンバーなのか?」という声も多かったという。
だが、塚田店長の「スキー場や海でのレジャーの相棒として4ナンバーのハイエース・スーパーGLを数多く見かけたので、投入すれば成功する手応えはあった」という思惑通り、お披露目となった幕張のイベントでは4台を受注。駐車場の制約などで大きいクルマが置けない都市部では、小回りが効くサイズ感を持つモデルが好まれるため、VR470のパッケージは潜在的なニーズを掘り起こすことにも成功した。VRは車名の由来にもなっている〝バン革命=バンレボリューション〟を起こし、現在もバンテック新潟の看板車種としてブランドを牽引し続けている。
■自社工場で手作業のこだわり
バンテック新潟の自社製造モデルは、家具の製造から、取り付け・架装をすべて上越本社工場で行っている。一部を外注したり、海外生産や機械化を推進するビルダーもあるが、市村代表は「クルマは1台1台寸法が微妙に違い、結局最後の調整は人間が行うことになる。すべて手作りなのでお客様の細かいオーダーにも対応しやすく、そこは貴重に感じてもらっている」と、自社工場での手作業にこだわりを見せる。実際、ユーザーから家具の位置の微調整など大量生産では対応できないワンオフで作るモデルも多く、バンテック新潟が選ばれる理由の一つになっている。
さらに、VRは好みに応じてオプションを追加できるのも魅力だが、購入するシニア層からは冷蔵庫や電子レンジを最初からつけて欲しいという要望が多かった。これがフル装備仕様の派生モデル「ディアリオ」が誕生するきっかけにもなり「ワンオフで一人ひとりのお客様に対応してきた一つの結果」と、これらの要望に対応できるのは、高い技術力を持ったスタッフの力が大きいと市村代表は話す。自社工場は認証工場でもあるので、車検や整備だけでなく、車両持ち込みの架装にも対応していることも特筆すべき点だ。
■架装技術の高さに裏打ちされた品質と使い勝手
バンレボブランドのモデルに共通するのは、内外装を過度に加飾せずシンプルで清潔感のあるものに仕上げているところ。市村代表は「ホテルを思わせる豪華な内装を持つモデルも魅力的だが、実際使うとなるとシンプルで飽きがこないものが長く乗っていただける」と、家具や内装のデザインもシンプルなものにこだわっているという。その一方で、リヤの車室内に畳敷きの純和室を再現した「クエスト」といったユニークなモデルでは、技術力の高さと今まで無いキャンピングカー像を示している。
また、VR470は標準ルーフながら大人2名子供3名の5名就寝を可能とする2段ベッドを標準装備(他のVRシリーズも同様)し、ロングスライドレール(一部オプション)によるフレキシブルな使い勝手も好評。限られたスペースを有効活用するための工夫がそこかしこにあり、ユーザーの目線に立った思想が具現化されている。
塚田店長は「できるだけ手の届く価格帯で価値のあるモデルを提供していきたい」と話し、市村代表は「次期ハイエースの投入時期など不透明ですが、それをベースにしたフラッグシップモデルを作りたいという想いはあります」と力強く今後の展望を語ってくれた。
バンレボのクルマは全国各地で行われるキャンピングカーのイベントにも展示されている。特にマルチユースなキャンピングカーを求めている人は注目してほしい。