【アーカイブ】 国内Aライ、カネで買えますよ?(週刊Car&レジャー・1970年7月掲載)

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本サイト「WEBカー&レジャー」のベースとなるのが、自動車専門新聞「週刊Car&レジャー」だ。その前身である交読新聞「マイカー日曜版」(昭和43年6月~)から発展し、1970年(昭和45年)に改題して発行、以来現在まで続く歴史を有している。

そこで過去の紙面から、その時々の出来事を紹介した記事を紹介してみよう。まずは記念すべき創刊号となった1970年(昭和45年)7月25日号の1面記事から。当時問題となった自動車競技ライセンス取得についての記事だ。ただ創刊号の1面を飾る記事としては、なかなか地味なスタートではある。


<週刊Car&レジャー 昭和45年7月25日発行号より>

■受講料2倍の荒稼ぎ

レースやラリー、ジムカーナなどを楽しむ人たちが増えるにつれて、これらの競技に参加する許可証(ライセンス)を取得する人も多くなっているが、地方ではこういったカーキチにライセンスを取得させてやるといって、規定料金以上の取得料金をとっているレース関係者もみられ、レース・ファンを喰いものにしているケースに、JAF(日本自動車連盟)も、早急な対策に迫られている。また、国内では最高のAライセンスも講習内容があいまいで、いい加減な発給や、カネさえ出せば、どんどんライセンスを発給している例も多くみられている。

公認された自動車レースに出場するためには、国内、国外を問わず、国籍のあるところで、ライセンス(自動車競技参加資格証)を取得しなければならない。

国内レースの場合、国内Bライセンスをまず取得し、実戦経験を経て国内Aライセンスを取得し、ついで国際A、Bライセンスをとるのが、レーシング・ドライバーの必須条件だ。

ところが、レースが盛んになるにつれ、資格だけでもとっておきたいという若い人たちが増えるのに目をつけた一部のレース関係者が中央のレースへ出場しないような地域を狙って、ライセンス取得講習会をモウケ商売にしはじめている。

最近、表面化した例では北海道白老サーキットでのオープニング・レースがあげられている。

このレースに出場申し込みをした地元の人の参加資格を調べてみると、JAFの会員番号のない国内Bライセンスをもっているドライバーが非常に多くいた。ライセンスはまずJAFの会員になっていないと取得できないことになっているので、せっかく取得したライセンスがJAFに登録されていない恐れもでてきている。

国内Aライセンスも、国内Bライセンスをもっていないドライバーが所持しているので多くみられている。北海道では国内Aライセンスを所持しているドライバーは六、七十名いるが、その多くはレースをやったことのないメンバーばかりであった。

ライセンスをA、Bとも取得するためには、それぞれ講習会を受けなければならないが、その内容は全国統一され、受講料も決められている。

ところが国内Bライセンスで規定は二千円と定められているのに二千二百円から五、六千円以上も講習料としてとっていたり、国内Aライセンスでも保険料を含めて七千円の受講料が、一万五千円から七千円という二倍もの料金をとられていることが、ドライバーから発覚している。

「北海道では慣例として一万円以上払えば、形式的な講習会のみで国内Aライセンスが買える」と公言してはばからないドライバーもいるし、実態はほとんどそれに近いものだった。

日産スポーツカークラブが北海道でAライセンス講習会を開いたところ、参加した二十一名のドライバーのうち、Bライセンスをもっていない人や、Bライセンスに疑問が出てきた人などが続出し、Aライセンスをとる資格のあるドライバーはたったの四名に減ってしまい、やむなく講習会を中止してしまっている。

なかには「講習会を受けて一万円以上も払い、二ヵ月以上もたっているのに、まだAライセンスを送ってこないが…」と相談にくる人もおり、調べてみると、どうやら全くのインチキらしいということも出てきている。

こうした例は北海道のみにとどまらず、新しくサーキットが出来るたびに、モウケ講習会をしているようで、新潟県、広島県、千葉県、栃木県でも出ており、東京都内ですら数件のインチキ講習会やモウケ講習会がみつかっている。

レース関係者の間では、T氏やK氏の名もあがっており、地方のレーシング・チームの主催者数名の名前も半ば公然と指摘されている。

純真なレース・ファンを喰いものにする、この種のことは、こんごもかなり多く出てくるものとみられ、早急な対策がのぞまれている。

<解説>
競技ライセンスを取得したい、という若い人が多かった時代ならではの一種の詐欺事件である。都市部と地方で情報の格差が大きかったこともその背景の一因といえるだろう。ちなみに本記事が書かれた1970年は日本グランプリが中止となった年だが、翌年には富士グランチャンピオンシリーズが開催されるなど、モータースポーツ熱が盛んな時期でもあった。人気があるところには、それを悪用する人間が出てくるのは、今も昔も変わらない。

なお同紙面にはJAF中村副会長(当事)の話も掲載。「実は数件の例が発見されており、早急になんらかの対策を立てなければならないとは考えていたが、こんごは厳重な指導をしていきたい。(中略)ライセンスの発給状況に欠陥があるのは確かで、いまでは若い人たちのアクセサリー的なものになってしまった感もあり、格式と権威のあるものに直すべきだ」とある。

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