約6年ぶりに一新された新型eKワゴン/eKクロス。プラットフォームからエンジンやトランスミッションも刷新、さらに「マイパイロット」を採用するなど先進安全装備も充実させ、大きく生まれ変わっての登場となった。特に新たに登場したSUVテイストのeKクロスは、存在感のあるスタイルで注目度も抜群である。ベース車のeKワゴンは兄弟車である日産デイズとの差が少ないが、上級のeKクロスとデイズハイウェイスターは、まったく異なる個性が与えられたことで、ユーザーの選択肢も増えたことになる。
そんなeKワゴン/eKクロスを、今回は幕張周辺の市街地と高速道路で試乗してみた。
走ってみて感じたのは、そのクオリティの高さだ。eKワゴンはNAエンジンを搭載、eKクロスはNAエンジン+モーターのハイブリッドとハイブリッド+ターボを搭載し、シリーズ全体としては合計3種類のパワートレーンを搭載するが、いずれもスムーズな走りでとても心地よい。静粛性も高く、いい意味で軽自動車感がない。特にターボはパワーにも余裕があり、リッターカーを凌駕するほど上質な乗り味である。ターボでやっと他社のNA並みという感じで、とにかく非力でストレスを感じた先代のeKワゴンとは大違いである。
NAエンジンの印象も悪くない。低回転域からトルクがきっちりと出て来るので、発進にもたつくこともない。一気に踏み込めばエンジン音がやや大きくなるが、十分に許容範囲だ。さらにハイブリッドではモーターのアシストが加わり、より発進時や加速時の力強さが増す。日常範囲でまず不満を感じることはない。
またステアリングの感覚も心地よい。車速に合わせてハンドルの重さが変わる車速感応型パワーステアリングを採用しているが、そのギヤ比が最適化され、低速域、高速域でそれぞれ軽すぎず重すぎず、絶妙なセッティングが施されている。カーブを曲がった後はハンドルが真っすぐに戻るが、これも細かく制御されておりセンター位置にきっちり戻る。余分な動きがないのでハンドルを微調整する必要がない。当たり前のようだが、軽自動車やコンパクトカーでこれがしっかりとできるクルマは案外と少ないものだ。
乗り心地も満足できる。足回りはやや張りがあり軽快な印象だが、路面のショックを必要以上に拾うこともなく、ごく自然な感覚だ。また運転席・助手席には極めて上質なシートが採用されているのも特筆できる部分。厚み・長さともたっぷりしており、とても軽自動車のシートとは思えないほどだ。
室内は広く、明るく開放的。パッケージングとしては、後席の足元スペースを大きく取っているのが特徴だ。後席は着座位置が低く設定されているが、これは軽自動車の後席に座ることが多い子供や年配者を考慮したためという。
インパネ周りは、小物の収納スペースが豊富に用意されており、使い勝手が良い。また操作系がスッキリとまとめられているのも好印象だ。特に中央部にあるエアコンの操作ボタンは大きく、瞬時に最適な風量を選択できるのはうれしい。軽自動車では最大となる9インチの大画面ナビが装着できるが、操作しやすく、かつ前方の視界を防げない絶妙な位置に配置されているのもポイントだ。
軽自動車初、また三菱では初めてeKクロスに採用となった「マイパイロット」も試してみた。日産では「プロパイロット」と呼ぶ自動運転技術である。インテリジェントクルーズコントロール(ACC)と車線維持機能を備えており、同一車線を走行中はアクセルペダルを踏まず、ハンドルに手を添えるだけで車線をはみ出さずに設定した速度、あるいは先行車と同速度で走行することができるというものだ。
軽自動車では先にN-BOXが同種のものとして「ホンダセンシング」を搭載しているが、これとの違いはシステムが動作する範囲。N-BOXの場合、車線維持機能は時速約65キロ以上でシステムが動作する。つまり高速道路を普通に走行している時のみ使えるということだ。これに対してeKクロスでは時速0キロ、つまり停止時から車線維持機能が働く。動いたり止まったりといった渋滞時でも、車線をはみ出さずに走ることができるのだ。
実際に高速道路で使ってみると、eKクロスは車線の中央部をかなり正確に保持することに感心した。というのもこの機能、登録車では搭載車が増えているが、車線の端と端をピンボールのように行ったり来たりしながら走ったり、左寄りに走るものも少なくないからだ。確かに車線ははみ出さないのだが、隣の車線に併走車がいる時など、これでは少し怖い。
これに対してeKクロスでは、車線の真ん中をきちんとトレースしていくので安心感が高い。またACCの加減速が自然なことも評価できるだろう。初期の日産プロパイロットから、かなり改善されていることを実感した。オプション装備となるが、eKクロスを購入するならぜひ装着することをオススメしたい。(鞍智誉章)