高い実用性と先進技術が融合 日産・キックス 試乗記

試乗レポート

日産の国内向け新型車としては、リーフ以来10年ぶりとなった「キックス」。2016年のブラジルを皮切りに、主に新興国市場で好調な販売を記録し、今回満を持して国内に投入されたコンパクトSUVだ。国内導入に当たっては、内外装のブラッシュアップをはじめ、日産のコア技術である「プロパイロット」と「e-POWER」が標準装備されていることもポイントだ。

キックスのボディサイズは全長4290mm×全幅1760mm×全高1610mm、ホイールベース2620mmで、トヨタ・C-HRやホンダ・ヴェゼルとほぼ同じ。実質的な前身モデルのジューク(全長4135mm×全幅1765mm×全高1565mm)からは全長と全高を拡大しながら、全幅はやや縮小されている。

エクステリアは、フロントグリルとメッキパーツで二重のV字を描くダブルVモーションやLEDヘッドランプが躍動感を演出。ボディカラーはモノトーン9色、ツートーン4色の13種類が設定されていて、バリエーションも豊富だ。

インテリアはブラックのモノトーンを基本とするが、オレンジタン×ブラックのツートンカラーを採用したグレード「ツートーンインテリアエディション」も用意。後席は座面も高く、ニールーム600mm、ヘッドルーム85mmが確保されていて、身長177cmの筆者が座っても全く窮屈さを感じることはなかった。荷室もクラストップレベルの423Lを実現しており、パーソナルユースがメインだったジュークと比べて、キックスはコンパクトでありながらファミリーでの利用にも応える素養を持っている。

 

■より緻密で繊細になったワンペダルドライブ

パワートレーンは、ノートe-POWERと同じく発電用の直列3気筒1.2Lエンジン+駆動用モーターの組み合わせるシリーズハイブリッドで、駆動方式はFFのみ。現時点では、海外仕様にあるガソリンモデル、4WDは国内仕様では設定されていない。

走りだしてみると、街乗りの速度域ではほぼエンジンは始動しないので、その走りは極めてEV(電気自動車)に近いと言える。また、ノートでは走行中にエンジンが始動して充電を始めるケースも間々見られたが、キックスでは時速35km以下の低負荷時では極力エンジンを始動しない制御となっており、始動時の回転数も従来より低くすることで静粛性も高めた。

ドライブモードは「S(スマート)」「エコ」があり、ともに回生エネルギーによる減速力が強くかかり、EV本来のドライブフィールを体感できる。この二つのモードを解除すると、一般的なガソリンエンジン車と同じくクリープが発生する。駐車時や見通しの悪い一時停止の交差点などでは、強い回生力のある走行モードを解除し、クリープを使いながら運転するほうが細かい操作に対応できた。

ノートe-POWERと同様に、街乗りの速度域なら、停止するためにアクセルを離すだけで十分に減速するので、アクセル操作だけのワンペダルドライブを楽しめる。キックスでは減速制御がより滑らかになり、アクセルから足を離したときに車体がつんのめるような感覚も和らいだ。初めてのワンペダルドライブでも違和感が少ないのは好印象だ。

モーター駆動ならではの加速の立ち上がりの良さも美点。アクセル操作に対するレスポンスもリニアで、街乗りから高速までシームレスにドライブを楽しめる。車体がノートより約100kg重くなるキックスに最適化するため、モーターの最高出力は2割近く増強されているとのことで、どの速度域でも加速性能に不満を感じることはなかった。

乗り心地は、荒れた路面ではざらついた乗り味を感じたものの、コーナーでのロールも小さく、全体的にフラットライドを保っていた。操舵感は重くなく軽くもなくといった感じで、中立付近での遊びが少ないので操作もしやすく、安心感は高い。

プロパイロットは他の車種でも熟成を重ねてきたこともあり、加減速や車線の中央を維持する制御も非常に高いレベルにある。長距離の運転では、ドライバーの負担軽減に大きく貢献するだろう。

扱いやすいボディサイズに、高い実用性と先進安全装備を備えたキックス。ただ、キックスは実質1グレード展開のみで、e-POWERとう強力な武器を持つ一方、ライバルに比べて選択肢の幅が狭いのが懸念される。ノートe-POWERには4WDが設定されているので、ガソリンエンジンモデルなどの導入と合わせて今後の展開にも注目していきたい。

 

■動画で内外装デザインを紹介

 

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