【車屋四六】VWゴルフGTI

コラム・特集 車屋四六

「アウトバーンでGTIが近づけば先行車が道を譲る」と云われたゴルフGTIは、ゴルフシリーズの頂点に君臨するスポーツカーもどきの強力バージョンである。(トップ写真:VWゴルフGTI/1983年型。ヤナセはGTIのお披露目にゴージャスな川奈ホテルを選んだ)

ちなみに日本では知名度が低いフォルクスワーゲン=VWを1953年から輸入して、ドイツでは大衆車のビートルに高級感を附加して人気者に育てたヤナセの戦略はたいしたものである。

80年代はバブル上昇中らしく各社新車試乗会には金をかけた。
1975年誕生時1.6ℓだったGTIは、83年に1.8ℓになり、その試乗会は、ゴルフ場で有名な名門川奈ホテルだった。

新GTIのエンジンは、直四DOHC・ボアストローク79×80㎜・1781cc・ボッシュKジェトロ・圧縮比も上がり10で112馬力/5800回転/15.6kg-m/3500回転・排気量アップで高性能化したにもかかわらず1.6ℓとサイズを変えずに重量軽減というのに感心した。

が、ふと気がつくと、200cc増えたのに馬力上昇たったの2馬力?オヤッと思ったらトルクが1.5kg-mも増えたので、ファイナルがハイギヤードになり、低回転域常用で燃費も向上した。

「高性能車だから仕方がない」と言い訳したピーキーなエンジンが、トルク重視に変身したことで、誰にでも扱える車になり、腕がなくともGTIを満喫できるようになったのである。

更に、もう一つ進歩があった。それまでのスポーツカーやチューニングしたスポーティーカーは、サスペンションがガチガチで乗り心地が悪いのが当たり前というのが常識だった。
が、新しいGTIは、部品の向上とサスのチューニング技術向上とが相まって、サスを固めても路面凹凸を上手に消化し、乗り心地が良くなり、以後この傾向は他社にも普及していくことになる。

GTIの後姿:川奈ホテル近郊の漁港で撮影

この技術は更に磨きあげられ、近頃のスポーティーカーやスポーツカーは、長いストロークでサスが柔らかめながら、ロールを押さえたしなやかに旋回し乗り心地の向上も素晴らい。

硬いサスペンションからしなやかなサスペンションに換わる、そんな時代の節目にこのGTIが存在し、技術の向上に貢献したと考えても良かろうと思う。

いざ鎌倉と云う時にはスポーツカーを喰う実力ながら、街乗りも快適、家族で使えるスポーティーカーの登場が、このVWゴルフGTIだったと思う。

グリルの左端にGTIのバッジ、モノクロ写真では判別できないが、そのグリルは赤いカラーで囲まれ、バックミラーに映る姿は確かに精悍で、威圧感があった。

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