ルノー・スポール(以下、RS)は、F1をはじめとするルノーのモータースポーツ部門が専用にチューニングを施したモデルのみに冠される名称だ。ルノーのコンパクトハッチバック「ルーテシア」にもRSモデルが設定されており、ベースモデルのマイナーチェンジにあわせ、RSモデルのブラッシュアップが実施された。
ルーテシアRSは3タイプ。一般道での走行に最適なセッティングが施された「シャシースポール」、サーキット走行を念頭に置いた「トロフィー」も設定されるが、今回はその中間グレードで売れ筋になりそうな「シャシーカップ」に試乗した。
エクステリアは、ホイールアーチ一杯に広がる18インチホイール、F1マシンのフロントノーズを想起させるエアインテークブレードに加え、今回のマイナーチェンジからチェッカーフラッグを模したフォグランプを採用。レーシーなイメージを一段と高めた。
エンジンはRSのみ与えられる特別仕様で、直列4気筒1・6L直噴ターボ(最高出力200PS/最大トルク240Nm)を搭載。さらに、そのハイパワーを引き出す走行モードとローンチコントロールを持つ。走行モードは、燃費に配慮したノーマル、レスポンスをさらに高めたスポーツ、サーキット走行に適したレースがあるが、レースはトラクションコントロールや横滑り防止といった電子制御がすべてカットされ、サーキット専用とも言えるので今回はノーマルとスポーツを試すことにした。
まずはノーマルモードを走り出してみるが、低回転から太いトルクが発揮され、登り坂に差し掛かっても加速は衰えず、そのパワーは余りあるほど。あらゆるシーンにおいて胸のすく加速を体感できる。
スポーツモードに切り替えると、ミッションの変速スピードや加速レスポンスがよりクイックになるが、トラクションコントロールが作動するのでホイールスピンを起こすことなく、常に痛快な加速性能を味わえる。また、減速時にはマイナスのパドルシフトを引き続けていると、クルマが最適なギアを選択するマルチシフトダウンを搭載しているので、カーブの立ち上がりでも鋭いダッシュを見せる。
また、コーナーでのロールも極めて小さく、鋭いハンドリングやしなやかな回頭性、高い接地感がクルマとの一体感を感じさせてくれる。シートはクッション性が高く沈み込みが大きいが、ポジションを決めるとしっかり身体をホールド。長距離の運転も疲れにくそうだ。乗り心地はスポーツモデルらしく硬めになっているが、不快な突き上げは感じさせず、〝最もバランスが取れたモデル〟という試乗前の説明も納得だ。
自動ブレーキ等の先進安全装備を搭載していないのは残念だが、それを補って余りある痛快な走行性能と5ドアという利便性を、309万円で実現するモデルはそうはないだろう。