8月に実施された商品改良によって、アクセラに続きエンジンでシャシー性能を高めるという「G‐ベクタリングコントロール(GVC)」が搭載されたマツダ・アテンザ。このほかにも新しいボディカラーの採用などで、フラッグシップモデルにふさわしい上質感を一段と高めた。
エクステリアにおいては大きな変更点は無く従来からのデザインを踏襲するが、〝機械の持つ精緻な美しさの追求〟をテーマにした新ボディカラー「マシーングレープレミアムメタリック」を設定。リアルな金属質感を実現した新色は、マツダの新世代商品群を象徴する魂動(こどう)デザインによる陰影のあるボディラインを一層引き立てている。
インテリアは、最上級グレードのLパッケージにおいて、天井とピラー内側の色をブラックとしたほか、ホワイトとブラックのナッパレザーを設定。加えて、インパネの加飾パネルやドアトリムスイッチなどの色をコーディネートし、シックで高級感のある空間を演出する。
新たに採用されたGVCは、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させ、ハンドルを切り始めるとトルクを制御し減速Gが発生。これによって前輪に荷重を移すことでグリップ力を高め、車両の向きを変えやすくする。ハンドルを直進状態に戻すとトルクを復元し、後輪への荷重移動を行ないクルマの安定性を高めるという。
ストレートが続く道でも、大概のクルマでは真っ直ぐ走ろうとして無意識のうちに修正舵を加えているが、GVCを搭載するアテンザでは、直進時でも路面状況に合わせてハンドルを常に微修正するということが少ない。今回は直線の多い新東名高速を運転する機会があったので、とくに直進安定性が高いと感じるシーンが多かったが、コーナリングや一般道での右左折や車線変更後の車両の揺り戻しが微小に抑えられているのも印象的だった。
ただ、減速Gは最大でも約0・05Gとし、オン/オフのスイッチやメーターなどにGVC作動中と表示されないことから、GVCはドライバーや同乗者が驚くような効果を実感できるものではない。しかし、いかにも電子制御などによるわかりやすくわざとらしいものではなく、人間の身体感覚に合った自然なクルマの挙動を実現しているところに、人馬一体の走りに対する深化やマツダの哲学が現れている。
また、ナチュラルサウンド周波数コントロールを採用したことで、アイドリング時のエンジン音が静かになっただけでなく、弱点だった2000rpm以下の低回転での走行中でディーゼル特有のエンジン音が気にならないレベルに抑えられている。さらに、過給圧の制御を最適化し、エンジンのトルク応答をより緻密にコントロールするDE精密過給制御によって、アクセル操作に対するレスポンスを向上。ドライバーの意思にあった走りを実現するとともに、2・2?ディーゼルターボエンジン(最高出力175PS/最大トルク420Nm)の加速感と合わせクルマの切れ味がより高まったように感じられた。
今回の商品改良においても「人間中心の開発哲学」に基づいた最新技術を採用し、商品の価値を高めたアテンザ。欧州上級セダンにも引けをとらないスタイルと走行性能を、ぜひ一度試乗などで体感してほしい。