ロングドライブも楽しめる快適性と充実装備 日産・セレナ試乗記

試乗レポート

6年ぶりのフルモデルチェンジを実施した日産・セレナ。話題の同一車線自動運転「プロパイロット」の搭載が注目を集めているが、クラストップの燃費性能や室内空間、多彩なシートアレンジ、2種類の開閉方法を持つデュアルバックドアなどの採用で、ミニバンとしての基本性能を一段と向上させ、魅力をさらに高めている。

 

数ある新採用の装備の中でも、注目したいのはリヤに配された「デュアルバックドア」だ。このデュアルバックドアは、ドア全体の開閉とドアガラス部分だけを開閉できる2種類の方法を持つのが特徴で、小さな荷物ならドアガラス部分だけ開けるだけで出し入れできるようにした。狭い駐車場でも開けることができるだけでなく、樹脂製パーツを多く用いることで従来型から大幅な軽量化も実現しているので、ドアの開閉に大きな力を必要としないのも好印象。さらに、ドアの下部を閉じたままで扱えるので荷崩れの心配もなく、104㎝という開口部の底辺高は、身長が140㎝代の小柄な女性でも荷物の出し入れを容易にする高さなど、徹底的に実用を意識して作りこまれていることがうかがえる。

 

また、1列目から2列目へのロングスライド機構を備えた「スマートマルチセンターシート」もユニーク。2列目に備わるときは3人でゆったり座れるほか、2人乗車の時には便利なセンターテーブルとしても利用できるだけでなく、2列目をベンチシートとキャプテンシートの両形式で使えるようにしている。これに横方向のスライド機構を合わせることで、リビングのようにくつろげるスーパーリラックスモードなど、多彩なシートアレンジを実現。ひとめで分かるレバーの位置や、女性や子どもでもラクに扱える操作性にも注目したい。

基本的な走りや快適性も必要にして十分。メーターパネルやAピラーの形状を変えることによって、高く設定されたアイポイントなどによって運転席からの視界は良好。また、多人数乗車や荷物の積載によって見にくくなりがちな後方視界も、スマートルームミラーによって確保されているのも安心だ。トルクも発進時からしっかりと出ており、街乗りだけでなく高速でも不足を感じることはない。また、ふらつきを感じさせない足回りによってロールも最小限に抑えられており、キャビンの静粛性の高さも想像以上。乗り降りしやすいステップ高などとあわせ、後席の居住性の高さはクラス随一といえる。

プロパイロットの操作方法も、ステアリング右側のスイッチを二回押すだけといたって簡単。作動させるとステアリング制御にかかる力が想像以上に強く、軽く添える手にその力が伝わってくるのが印象的だ。だが、強めのステアリング介入に対して車両の挙動は自然なもので、白線を検知している間は常に車線の中央を運転しているので、不安を覚えるようなことは無かった。

また、試乗当日は東名高速の厚木~横浜町田間で渋滞に遭遇。ここでは、車両が完全に停止した状態からでもアクセルかハンドルのボタン操作で追従を開始する機能によって、わずらわしいアクセル・ブレーキ操作から開放された。疲労の軽減という側面では、プロパイロットが真価を発揮するのは渋滞での追従走行でのシーンではないかと感じられた。これがあれば、行楽帰りに一人運転手に徹するお父さんのストレスは幾分解消されるだろう。

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