人気のミニだが、小さく使いづらいという要望で64年登場したのがオースチン1100…始めて乗って「なんと広いことかと」と感心したのを憶えている。
当時輸入元は、東京渋谷富ヶ谷のキャピタル企業で、撮影場所は成田空港開港前、東京国際空港だった羽田空港駐車場…当時羽田は工事中で、後ろにはバラック小屋が見える。
この車は英国BMC社製で、モーリス1100,ライレイケストレル、ウーズレイ1100、MG1100、そして高級なバンデンプラス・プリンセス1100と多くの兄弟車がいたが、プリンセスを除き、MGがSUツインキャブの他は、ツラ構え以外はほぼ諸元は共通だった。
この複雑な車種構成は、BMCの歴史で納得できよう…27年ウーズレイを、38年ライレイも吸収したモーリス社は、52年オースチン社に吸収されてBMCが誕生、その後も吸収合併が続いた。
一方、31年英国最古のランチェスターをダイムラーが吸収するが、61年ジャガーと合併した後、66年にBMCと合併してBMH社を名乗るようになる。
WWⅡ後の生き残り合戦は他にもあり、45年トライアンフ社がスタンダード社の傘下に→66年レイランド社と合併。そしてBMHとレイランドとローバーが合併してBLMC誕生となる。
やがてBLMCも元気を失い75年に国有化される。その後ジャガーが分離独立、86年レイランドも独立、86年からはローバーグループと呼ぶようになる。
というような経緯で、当時BMC所有のブランドは多く、一つ車種から多くの兄弟車派生させる必要があったのである。
ちなみにMLMC時代の家族構成は、ウーズレイ・ライレイ・オースチン・モーリス・バンデンプラス・MG・ヒーレイ・ミニ・ダイムラー・ランチェスター・BSA・ジャガー・レイランド・スタンダード・ローバー・アルビス・トライアンフ・ローバー・ランドローバー。
御承知のように、現在上記ブランドは、英国、ドイツ、インド、中国などに切り売りされてしまった。
1100シリーズの源流、ミニの生みの親イシゴニスは「やがて世界は私の車の真似をする」と豪語したが、エンジン横置き+前輪駆動型式は、いまでは中小型車の主流になっているのはご存じの通り。
1100は、全長3727㎜全幅1534㎜全高1346㎜・車重808kg・直四OHV-46馬力・最高速度130km/h・後輪リーフ/前輪ハイドロラスティック懸架はミニで生まれた独特な油圧式で、独特な乗り心地が好評だった。低い床の出っ張りと長いホイールベースで驚異的室内空間を生み出していた。
最後にバンデンプラスはコーチワークの名門で、オースチンとは長い付きあい。64年のカタログには、大型リムジンと中型4ℓサルーンと1100が、バンデンプラスを名乗っている。
1100は、お抱え運転手を雇える金持ちが減り、自分で運転してみれば、小回りが効く市街地で重宝がられたのだろう。
なりは小さくとも、さすがバンデンプラス、美しい木目とコノリーレザーのインテリアは気品高く、良き時代の英国を思い起こすことが出来るから、マニアも多く、美しく手入れされた姿を今でも日本の路上で見掛けることがある。