日本製乗用車のラゲージスペースが、おしなべて小さいのは、島国の日本では長距離ドライブが少ないせいと云われている。が、長期旅行が多い欧州では、収容力が重視される。また広大な土地に住むアメリカでは、旅行に買い物に更に広さが要求されて、ステーションワゴンが発達したのである。
近頃ではルーフラックなどという便利なものも有り、更に大量をというなら、ワゴンやミニバンにルーフレールを付けてというように、荷物沢山派には便利な世の中になったものである。
が、便利なルーフラックがなかった昭和30年代、知恵を絞って自作したことがある…払い下げを買った桐生競艇場のボートを積むのが目的だった。
まず丈夫な木で簀の子を作り、傷を付けないよう滑らないように四隅にゴムの吸盤をつけ、ベルトでドリップモールに固定して、一丁上がり…で、週末になると海や湖に出掛けた…当時、無いものは、諦めるか自作するしかなく、金を出せば何でも手に入る今とはまるで違った世の中だった。
そこで昔の人達は工夫をした…例えば、近頃の荷室といえばトランクやリアゲートは上に跳ね上げるか横開き観音開きだから、3ドアや小型車では沢山荷が積めない。
それなら開いたまま積めば良いじゃないか、と考えた人がWWⅡ以前に居て、そんな車が造られた。日産がライセンス生産した、オースチンA40デボンなどはその良い例である。
上部ハンドルでトランクを開け、手前に引くと折れていたヒンジが伸びきったところで固定され、大きな荷室が生まれる…が、ムキ出しだから雨が降れば濡れてしまうが。
A40と同世代のいすゞヒルマンは上方開きだから解決策はなく、日野ルノーに至っては、後ろにエンジン・前はスペアタイヤだから大きな荷物搭載は諦めの境地が必要だった。
が、小さくともトランクが有ればいいが無い車もある。ロードスターなどである。一世を風靡したMGなど、その良い例だ。
で、考えたのが棚…進駐軍兵士が乗り回すMG―TDやジャガーXK-120、トライアンフTR-3などの後部に鍍金で光る金属の棚が付いているのを見かけた…苦肉の策で生まれた棚だろうが、見た目に格好良く、さすが先進国、賢いものだと感心したものである。
この棚は便利なもので、スポーツカーばかりでなく、BMWイセッタやメッサーシュミット、VWビートルなどにも見掛けたが、さしずめ日野ルノーなどにも好適だが、日本製はなかった。
小さな乗用車に大きな荷物、こいつは昔から頭を悩ます課題のようで、便利なもの、不便なもの、不出来なもの、たくさん生まれたようだが、今回はその成功例である。