【車屋四六】目標は撃滅日本車

コラム・特集 車屋四六

全長4364x全幅1707x全高1387㎜、WB2642㎜。車重1061kg。直四SOHC1995cc、圧縮比9.8、132hp/6000rpm、17.7kg-m/5000rpm。パワーステアリング・ラック&ピニオン・四輪ストラット+コイル、ブレーキ=前通風型ディスク/後ドラム、5Jx13、165/80R13。
以上は、近々日本市場に上陸予定のクライスラーネオンの諸元と云うことで、本紙96年5月25日発行記事のリメイクである

ネオンは、米国市場を荒らし回るにっくき日本車キラーと銘打って登場した車らしく、8975ドルという安値に世界中が湧いた。ターゲットはカローラ、サニー、シビック、ファミリアあたりだが、日本市場では舶来という強みが発揮されるかもしれない。

もちろん日本上陸時には右ハンドルだろうが、トヨタGMキャバリエのように細部に手が加えられるかは判らない。とにかく日本上陸前、グランドキャニオンで乗れたので印象を報告しよう。
(アメリカ発売94年、日本発売96年6月)

:一人旅のグランドキャニオンで出会ったネオン。好人物のオーナーは種々説明の後「運転してみろ」というので一回り試乗できた

アメリカ製小型車などと馬鹿にしていた予測は外れた。スタイリングはアメリカ好み一辺倒ではなく世界市場を視野に入れている。エクステリアの組み付けも一応合格点。

前後席共に、全高が高目なので乗降はスムーズで苦労なし。前席回りはゆとりがある。後席は気になる足下は合格点だが、頭上にゆとりが足りない。

シートに座りキャビンを見回して、これアメリカ製!と感心したのは、質感が良いこと・噂ではトヨタ車を研究したと聞くが、最新型カローラには及ばないにしても、サニーより上等な感じ。

6500からレッドの回転計、最高125マイルの速度計、燃料系、水温計をコンパクトに一体化したインパネは視認性良好。ダイアルノブ型空調コントロールは、見た目重視の日本車より実用的。ドリンクホルダーまで付いている。

試乗車:SRSエアバッグが両サイドに装備は進歩的だが、オーディの音質はイマイチ。右フェンダーの引っ込まないアンテナは、日本では嫌われるだろう。

それほど静かなエンジンではないが、日本人の感性でも容認できる範囲。気に入ったのは加速の良さ。もっと大型のアメ車より加速感があり、かなりなスポーティーだ。
計算すると、馬力荷重が8.7だから当然とも云える。トルク荷重65も、あらゆる場面での加速に効いてくるはずである。

暴騰の価格は5MTのもので、日本では主流になるであろうATを注文すれば600ドルの追加が必要。が、そのATはコストの関係であろう、旧式の3ATだが十分なトルクで実用上は問題なかった。

ハンドリングのレベルは、ほぼ日本車に近い仕上がりで、ボディー剛性は予想以上に高く感じた。乗り心地はアメ車と思えば硬めだが、日本的評価ならソフト、もっとも柔らかなシートで柔らかく感じる部分もある。

とにかく「日本車をやっつけろ」的発想で開発された車だから、安かろう悪かろうという先入観が先行した試乗だが、先入観は見事に外れた。

走りも質感も良い印象を得たが、アメリカ人オーナーが云うには「値段につられて店に行ったが注文して買えるときにはオプション追加で1万2000ドルほどになってしまった」とチョッピリ不満げだった。

東京モーターショーが初お目見えのネオン/もちろん右ハンドルに。右奥にジープが

当時、アメリカでは安く高性能で市場を荒らす日本車敵視が盛り上がり、チャンスを踏まえて登場したネオンは、日本でも興味の対象だった。

たまたま個人的観光で訪れたグランドキャニオンの駐車場で見つけたネオン、まだアメリカでも珍しい時期のためか、オーナーは得意げに解説し「乗ってごらんと」という親切さで、甘えて乗った印象を帰国後いち早く報告したものである。