アバルト500eの外観

【河村康彦 試乗チェック】アバルト 500e:アバルト初のEV、ダイレクト感に富んだハンドリング感覚は健在

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見ても走ってもそして耳にしても、ちょっと過激なリファインを手掛けるチューナーとして知る人ぞ知る存在なのが、「アバルト」というブランド。その素材として用いられるのがフィアット車であるだけに、当然のようにその末っ子モデルたる500シリーズにもアバルトバージョンが設定をされ、好評を博すことになっていた。

そんなベースとなる500シリーズがフルモデルチェンジを受け、新世代モデルへとバトンタッチ。ここに紹介するのは、それを受けてこちらも世代交代を行った新しいアバルトバージョンである。

アバルト500eのリヤビュー

全長は3.6m代に収まるコンパクトさ

キュートなルックスと特別感ある内装

今回もクローズにオープンと、ルーフ部分のデザインに2種類を用意する新型の正式名称は「アバルト500e」(アバルト・チンクエチェント・イー)というもの。末尾の“e”の文字が示すように、ベース車が全仕様でピュアEVとなった事を受けてこちらも「アバルトで初の電気自動車」ということになった。

70年余り前の創業者であるカルロ・アバルトが“サソリ座”であったことに由来し、特徴的なその生物の姿を各部にデザインモチーフとして採用したボディは、従来型よりもわずかに大きくなったとは言えまだ全長が3.6m代に収まるコンパクトさ。それもあり、そのルックスはひと言で表現すると最高にキュートで魅力的!

そんなベースとなる500シリーズがフルモデルチェンジを受け、新世代モデルへとバトンタッチ。ここに紹介するのは、それを受けてこちらも世代交代を行った新しいアバルトバージョンである。

アバルト500eの18インチアロイホイール

18インチアロイホイールをはじめ各部にサソリをデザインモチーフとして採用

一方のインテリアも、ステアリングホイールやダッシュボードにバックスキン調の人工素材“アルカンターラ”を用いるなどで、高級感あふれるとは言えないまでも「特別なモデル」という雰囲気が巧みに醸し出されている。

アバルト500eのインテリア

ステアリングホイールやダッシュボードにアルカンターラを採用

アバルトらしさが感じられる操作性

こうして内外装共にその装いがゴキゲンな一方、ちょっと辛いのが、エンジンが存在しないため得意とする走りのチューニングを存分に奮い切れていないこと。従来型よりも足腰がしっかりしたベース車同様の美点は受け継ぎながら、ちょっとチョッピーな乗り味とダイレクト感に富んだハンドリング感覚が得られるのはアバルトのエキスが感じられる部分。が、エンジン回転の高まりに呼応してモリモリとパワーが漲るようなエモーショナルな感覚は望むべくもないのは、加速力そのものは十分と納得が出来つつもやはり寂しいポイントではある。

アバルト500eのモータールーム

最高出力155PSの電動モーターと42kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせたパワートレーン

それを紛らわす?べく、6,000時間以上をも費やして開発したというボディ外部に向けて発せられるこのブランドが誇る“レコードモンツァ”の排気システムを模したサウンドは、なるほどうっかりしているとエンジンを搭載していると錯覚しそうな音色。が、ここまでやられると速度の高まりに応じて“シフトアップ”をしてくれないことがどこか不自然に感じられ、音のためだけのパドルシフトが欲しくなってしまうほどだった。

さらに、それにも慣れてくると車速ゼロになっても結構なボリュームで“アイドリング音”が耳に届くことが、鬱陶しく思えてしまう瞬間もあったというのは本当のところ。そのON/OFF切り替えが停車時でないと行えない設定も不可解で、結局最後の街乗りシーンでは終始OFFの状態で走行をすることになってしまった。

アバルト500eのトランクルーム

トランクルーム

コンパクトなだけに車両重量は1.4トンを下回り、高速道路をゆったり流すような状態であれば“電費”は7km/kWh以上となかなかの成績。ただし、ピュアEVとしては軽量であることに直結する少なめ容量のバッテリーゆえに、高速道路を飛ばせば2時間ほどで“強制終了”となってしまう航続距離は何とも残念だ。

どこまでも走って行きたいのにそれを許してくれないスペックに、個人的には「あと2倍、いや3倍は走って欲しい!」とやはり最後に無い物ねだりをすることになった“電気サソリ”でもあった。

アバルト500eカブリオレのトップオープンビュー

オープントップのカブリオレ

 

(河村 康彦)

(車両本体価格:レギュラーモデル 615万円〜/ローンチエディション 630万円〜)

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