SUVでも“らしさ”が感じられるフットワーク
このブランドでは第二弾となるSUVにして初となる電動化モデル、アルファロメオの『トナーレ』をテストドライブした。
ちなみに、そんな車名が「イタリア北部のアルプスに近い峠の名前に由来」というのは兄貴分のステルヴィオの場合と同様。4530×1835×1600㎜というボディのスリーサイズは、ステルヴィオに比べると全長がマイナス160㎜、全幅がマイナス70㎜、そして全高がマイナス80㎜と明確にコンパクトということになる。
2027年にはピュアEVのみのラインナップとする、と宣言はしたものの、実はこれまで電動化モデルを用意していなかったのがこのブランド。果たして、ほんの数年という短期間でそんなマジックのようなことが可能なのか? と、そうした疑問は残るものの、このトナーレがそうしたこの先のロードマップをスタートさせる、記念すべき第一号モデルであることは間違いのない事柄。
すなわち、このモデルに搭載されるのは15kW≒20.4PSの出力を発するモーターを組み込んだ7速DCTを、可変ジオメトリー式ターボ付きの1.5リッター直噴4気筒ガソリンエンジンと組み合わせた、いわゆるマイルドハイブリッド・システム付きのパワーパック。
前述ステルヴィオが4ドア・セダンのジュリアと共に後輪駆動をベースとした骨格を採用するのに対して、トナーレは前輪駆動ベースで前出のパワーパックも横置きとされ、現時点では4WDシャシーも設定されていない。ただし、近い将来PHEV仕様が追加されることは発表済み。こちらは4WDであることも明らかにされている。
そんなこのモデルでの最大の特徴はまず、このブランドの作品ならではと言える躍動感に富んで個性的な内外装のデザイン。特に、3連U字型のデイタイムランニングランプやバーチャル表示されるメーターを収める”双眼鏡型”のメータークラスターなどはかなり特徴的。前出フロントマスクのモチーフはこの先のアルファロメオ各車にも採用されて行くことが予想をされる。
SUVながら速い舵の効きや、さしたるロールも意識させずに次々とコーナーをクリアしていく点が印象的なフットワークの味付けは、”アルファらしさ”を期待した人には歓迎されそう。スタートの瞬間はモーターの出力で動き出すものの、その先は比較的容易にエンジンが始動。絶対的な加速力も十二分であることは確かだ。
一方、時にアクセル操作に対する加速に、ややリニアリティに欠ける印象を感じたのはちょっと気になるポイント。このあたりには、今後の熟成を期待したくなる。
ともあれ、そんなトナーレは価格面でもエントリーモデルとなる存在で、当然このブランドの販売台数上乗せにも大きな寄与が期待される。街中で見かけるようになる日も遠くはないはずだ。
(河村 康彦)
(車両本体価格:524万円~589万円)