最近、マスコミの論調の中で「日本の自動車業界はハイブリッドカーにしがみつき、電気自動車開発で欧米先進国に遅れを取っている」といった指摘が主流になっていると読み取れる。電気自動車開発が、日本の自動車業界が選ぶべきカーボンニュートラル実現の唯一の道といわんばかりである。果たしてその論調は正しいのだろうか。
石油資源は内燃機関を支えているだけではない。原油を分離することでこの他重油、灯油、ナフサなどを生み出し、燃料の他、樹脂、繊維、薬剤などを生み出し、各産業分野の繁栄に多大な貢献をしているのも事実である。内燃機関が消滅すれば、分離生産されるガソリンや軽油はあまりが生じることになり、それが新しい課題を生むことになる。
自動車がすべて電気で走ることになれば、電力消費は大幅に増大し、需給のひっ迫がより一段と加速することになる。台風、洪水、地震、火災などが発生し、停電で電気が使えなくなれば、同時にクルマが走れなくなる。
これらを避けてカーボンニュートラルを実現するにはどうすればよいか。電気自動車だけでなく、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車など、多種多様な動力源をバランスよく進化させるテクノロジーを生み出すことである。内燃機関の燃料も石油製品の他水素、アルコール、メタンガスなど二酸化炭素を低減させる燃料を使う比率を高めれば、クリーン化が実現可能になるはずである。
また、自動車産業のピラミッド構造を発展させる手立ても可能になると思うのである。世界に冠たる日本の自動車は電気自動車一辺倒に流されるのではなく、独自のスタンスでカーボンニュートラル実現に立ち向かうべきである。
(遠藤 徹)