日産は10月7日、同社と浪江町(福島県双葉郡浪江町)が実施するシステム支援型モビリティサービス「なみえスマートモビリティ」が、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「グッドデザイン賞」を受賞し、あわせて「グッドデザイン・ベスト100」と特別賞「グッドフォーカス賞[防災・復興デザイン]」に選出されたと発表した。
福島県浜通りに位置する浪江町は、東日本大震災に伴う原発事故の影響により全町避難となり、2017年3月に一部の地域で避難指示が解除され、徐々に居住人口が回復に向かっているものの、自家用車の利用が難しい高齢者等の移動手段の確保が課題であり、また町に人を呼び戻すため、個人で移動手段を持たない場合でも安心して暮らすことができるよう、持続可能な移動サービスの構築が必要不可欠となっていた。
「なみえスマートモビリティ」は、東日本大震災からの復興と持続可能な未来の“まちづくり”実現に向け、長く協業している日産と浪江町が、浪江町および浜通り地域の復興と活性化に貢献するため、住民や訪問者など誰もが利用でき、ワクワクする公共移動サービスを目指し、構築・デザインしたオンデマンド配車サービス。日産は、2021年2月から同サービスの実証実験を継続的に実施している。
「なみえスマートモビリティ」は、町内どこからでも停留所まで徒歩1分以内、避難指示の解除された町内全域を移動可能という高い利便性や正確な運行を実現しており、利用者の移動ニーズに合わせたサービスを提供している。
また、移動需要拡大につながる商業店舗との連携など、地域活性化やにぎわいを促進する取り組みによる収益活用・付加価値創出で、人口密度の低い地域でも事業を持続できるモビリティサービスを目指すとしている。
モビリティサービス車両においては、町中を駆け巡ることで町が活動していることを感じられるように、遠くから視認できるデザインを採用。浪江町の海のブルーを基調にコスモスのピンクをあしらい、デジタル技術で場所と場所、人と人を繋ぐことをドットで表現している。
また、車両を利用する際に使用するデジタル停留所やスマートフォン上で表示されるコンテンツは、震災前の懐かしい思い出や復興後の町のイメージをイラストで表現したアイコンで構成。デジタル停留所やスマートフォンの操作画面は、デジタル機器の操作に不慣れでも使いやすいように、地元の高齢者との会話を繰り返して検討し、タップ操作のみで基本操作が完了できるデザインを採用した。
<今回の受賞における評価>
過疎地における交通手段の確保、とりわけ東日本大震災の被災地では公共輸送機関の維持が大変難しい中で、既存の乗用車を活用し、きめ細かいインターフェイスや完成度の高いシステムを組み合わせている点が素晴らしい。人口希薄地帯において高品質な公共交通を導入するまでのハードルが低い点を高く評価したい。不安を解消し、故郷に住むことができる安心感と夢を提供している。また、高齢者が多い地域でありがちな情報格差への対応もシンプルで分かりやすい。自動車メーカーらしいユーザー目線の技術開発が公共交通にも展開され、その傾向はとても嬉しく、心から歓迎したい。