一般財団法人トヨタ・モビリティ基金(以下「TMF」)、株式会社デンソー、東京海上日動火災保険株式会社、東京大学大学院新領域創成科学研究科(以下「東京大学」)は9月6日、高齢者の安全運転支援を目的とした実証実験を愛知県豊田市で実施すると発表した。
近年、75歳以上の高齢ドライバーによる死亡事故の割合は増加傾向にあり、高齢者が事故を起こさず安全に運転するための支援・仕組みづくりが重要な社会課題となっている。
同実証実験は、豊田市の交通死亡事故ゼロを目指した官民連携事業「ジコゼロ大作戦」の一環として実施するもので、ドライブレコーダーから収集した映像等をデンソーが開発を進めているAIで分析し、安全運転のためのアドバイスを行うAI運転診断システムを活用して、東京海上日動、東京大学の知見も活用しながら運転行動の改善につなげる仕組みを構築するとしている。
TMFは、実証実験を通じて得られた知見を公開、AI・データ分析技術が高齢者の移動課題解決へ活用されるよう促すとともに、産業界・学術界・医療界等との幅広い連携によって取り組みの実効性を高めるなど、高齢ドライバーの交通安全促進に向けて積極的に取り組んでいくと述べている。
【実証実験の概要】
<デンソーが開発するAI運転診断システムの特徴>
運転中の車内外カメラ映像やセンサーデータを常時ドライブレコーダー内のSDカードに記録して分析する。同システムでは記録データを全て解析するため、日常のリスクシーンや運転の癖などの潜在的なリスクまで解析が可能で、解析データをもとに、ドライバーにフィードバックを行うことで行動変容を促進し、リスクに結びつく運転特性の改善や事故の抑制に働きかける。
◆運転評価&アドバイスの内容(抜粋・イメージ)
- 総合評価の点数やアドバイス、前月の自分の成績との比較、同世代との比較
- 参加者自身の危険運転の映像
- 交通ルール違反の回数[免許更新時(75歳以上)、実技試験の受検対象となる違反項目を含む]
- 統計的に事故が多い自宅周りの危険運転の状態・映像の確認 等
<豊田市における実証実験の内容>
- 想定参加者数:豊田市在住の60歳以上の方 計3,000名程度
- 実施時期:22年10月~24年4月
- 運営:(公財)豊田都市交通研究所
参加者は、4か月間ドライブレコーダーをつけて運転し、運転データを記録。AIが映像を解析して、毎月参加者に運転診断結果・アドバイスを提供する。
<実証実験の主体と主な役割>
- トヨタ・モビリティ基金:プロジェクト全体の企画・運営
- デンソー:AI運転診断システムの構築・運用
- 東京海上日動:ドライブレコーダーの提供と、運転結果フィードバックに関するデータ解析結果の検証支援
- 東京大学(大学院新領域創成科学研究科 小竹元基准教授):高齢者の運転行動分析と移動支援方策にかかる知見・アドバイスの提供
- 豊田市:“ジコゼロ大作戦”の一環としての実証実験遂行、市民参加に向けた環境の整備