8年ぶりのフルモデルチェンジで4代目となったアウディ・新型「A3」が国内に導入された。新型車は、デザインやボディサイズの刷新をはじめ、アウディのコンパクトクラスで初めて1.0L直3ターボに48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたパワートレインも見どころの一つ。早速この1.0Lターボモデルに試乗する機会を得た。
今回試乗した「ファーストエディション」は、スポーツバックの30 TSFI advancedをベースにした375台の限定車。内外装に専用パーツやマトリクスLEDライトなどを装備した“全部のせ”仕様で、価格は453万円。ベース車両は310万円なので限定車と150万円ほどの差額はあるが、装備内容を考えると買い得感もあり、決して高価なように感じなかった。
ハッチバックタイプのスポーツバックのボディサイズは、全長4345mm×全幅1815mm×全高1450mmとなり、全長は20mm、全幅は30mm拡大。加えて、大きくなったフロントグリルのデザインによって、ワイド&ローなスタイルが強調されている。
インテリアは、センターコンソールに組み込まれたタッチ式ディスプレイやバーチャルコックピットなど、最新のアウディデザインを踏襲。バイワイヤー化によって形状が見直されたシフトセレクターも最初はシフトチェンジに手間取ったが、慣れると指先で操作できる新感覚のものとなっていた。
パワートレインは、従来の1.4L直4直ターボに代わり、1.0L直3ターボ+48Vマイルドハイブリッドの「30TFSI」が導入されたことが大きなポイント。この1.0.Lターボは、「A1」や「Q2」にも搭載されているが、これにマイルドハイブリッドを組み合わせたのは、同社のコンパクトクラスでは初となる。このほか、秋頃の導入が予定されている2.0L直4ターボにクワトロ(4WD)を組み合わせる「40TFSI」、ハイパフォーマンス版の「S3」が設定されている。
■走りの質感も大きく向上
エンジンを始動すると感じられるのが、3気筒エンジンにありがちな振動も極めて低いレベルに抑えられていること。一般道で流れに乗って走るようなシーンでは、常に1500回転前後をキープするので、エンジン音が耳に届かず室内の静粛性も高い。低速域でのコースティング、発車時のスマートなエンジン始動など、マイルドハイブリッドならではのフィーリングも随所にあるが、加速時のモーターアシストは感じられず、高速域では一般的なガソリンエンジン車と同じようなドライブ感覚であった。
一方、高速域での加速感はやや頭打ち感があり、このあたりは1.0Lエンジンであると感じさせる部分。しかし不満というレベルではなく、高速での合流、追い越し車線や登坂路での走行に不足はなし。運転していて高揚感を覚えるようなパワーユニットではないが、街乗りから高速まで、どのシーンでも実用性の高さを感じられた。この走りでは物足りないという向きには、40TFSIやS3を検討してみてほしい。
今回は約330km走行して燃費の測定も行ってみたが、WLTCモードで17.9km/Lのカタログ値と概ね乖離のない数値を記録し、燃費性能も進化が感じられた。燃費測定の詳しい模様は、下記の動画を参照してほしい。
乗り味は基本的にフラット感が高く、道路の継ぎ目を走行したときのショックなどはほぼキャビンに伝えず快適性も高い。ステアリングに対する挙動も素直で、意図したラインをしっかりとトレースし、カーブでは踏ん張りの効いた走りを見せる。静粛性と剛性感の高い走りは、コンパクトのA3でもしっかりと表現されている。
また、後席の足元空間も広くなった印象で、全長4300mm台のコンパクトモデルながら、大人が乗車しても満足できる居住性が確保されている。エアコン送風口やUSB電源ポートをはじめ、全車速追従ACCやレーンアシスト機能などの運転支援機能も備え、ファーストカーとしても素養も十分にある。国産モデルとは一味違うデザインテイストや走行性能など、フルモデルチェンジによって見どころもより多くなった。