日産・アリアいよいよ発売 ライバルになり得る最新EVは?

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2019年の東京モーターショーで初公開され、先日いよいよ予約受注が開始された日産・アリア。日産では初のSUVタイプの電気自動車(EV)となるが、現在国産車でSUVのEVはマツダ・MX-30 EV MODELのみで、車格や搭載するバッテリー容量なども異なり、競合車としては比較しにくい部分もある。

アリアのボディサイズは全長4595mm×全幅1850mm×1655mmで、日産のラインナップでは、エクストレイルと同じサイズ感。輸入車では、今年4月に国内に導入されたメルセデス・ベンツのEQAのサイズ(全長4465 mm×全幅1835 mm×全高1625 mm)が一番近い。フォルクスワーゲン・ID.4も同じぐらいの大きさだが、まだ国内仕様のスペックが判明していないので、今回はEQAとアリアを中心に比較をする。

■航続距離はアリアが上回る

アリアは、66kWhバッテリー搭載車の2WD「B6」と4WD「B6 e-4ORCE」、91kWhバッテリー搭載車の2WD「B9」と4WD「B9 e-4ORCE」の4グレードが設定されており、WLTCモードでB6は最大450km(4WDは430km)、B9は最大610km(4WDは580km)の航続距離を実現する。

EQAは国内に導入されたモデルは1グレードで、駆動方式はFF。66.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、WLTCモードで最大422kmの航続が可能で、アリアのB6とバッテリー容量はほぼ同じだが、航続距離はアリアが上回る。また、アリアはよりバッテリー容量の多いB9もラインアップしており、使いかたやニーズに応じてグレードが選べることもポイントとなっている。

新開発されたアリアのモーターは高速巡行時の消費電力を低減し、一充電あたりの航続距離は最大610km(2WD 90kWhバッテリー搭載モデルのWLTCモード社内測定値)を実現。また、最大130kWの急速充電に対応するとともに、バッテリーの温度を一定に保つ水冷式の温度調節システムを搭載し、30分の急速充電で最大375km分を充電することが可能になった。

■EQAの回生ブレーキは5段階の調整が可能

EQAはフロントアクスルにモーターを搭載した前輪駆動で、最高出力190PS(140kW)、最大トルク370Nmを発揮。モーターの搭載方法も工夫され、モーターからの振動や騒音が車内に伝わらないよう配慮した結果、従来の電気自動車よりもさらに高い静粛性を実現したという。また充電は、6.0kWまでの交流普通充電と100kWまでの直流急速充電(CHAdeMO規格)に対応する。

リチウムイオン電池は前後アクスル間のフロア部に搭載。バッテリーはフレームの中に納められ、従来アンダーフロアのクロスメンバーが担っていた構造機能も果たし、バッテリー前部に設けたバッテリーガードは異物の侵入からバッテリー保護する。

また、航続距離を伸ばすために、大型の高電圧バッテリーを採用するだけではなく、効率的な回生制御を採用した。回生ブレーキの強度は「D+」「D」「D-」「D--」「D Auto」と5段階の手動設定を可能としていて、パドルシフトの左側で回生レベルの上昇、右側で低減の変更ができる。なお、完全に停車させるときは、これまでと同様にフットブレーキ操作を行う。

 

■走りの楽しさも追求するアリアのe-4ORCE

アリアは、B6の2WDが最高出力160kW/最大トルク300Nm、B9の2WDが最高出力178kW/最大トルク300Nm、B6の4WDが最高出力250kW/最大トルク560Nm、B9の4WDが最高出力290kW/最大トルク600Nmをそれぞれ発揮。B6の2WDは、EQAのスペックとほぼ同じレベルとなっている。

アリアは新開発EV専用プラットフォームを採用し、運転の楽しみはもとより、乗る人すべてが快適なクルマを目指して開発。重量物であるバッテリーを車体中央にレイアウトし、低重心かつ前後重量配分が均等になるように設計された。また、バッテリーケース内にクロスメンバーを配し、フロアトンネルがないフラットなフロアも高い剛性を確保した。

アリアの特徴の一つである4WDシステム「e-4ORCE」は、前後に合計2基の電気モーターを搭載し、それぞれのトルクを個別にコントロールできる。これによって、加速時のトラクション性能はもとより、減速時も前後のモーターそれぞれで回生量を調整し、ブレーキ時のクルマの沈み込みを減少させるなどといった車体の揺れを抑える制御を行うという。

さらに、コーナリング時は前後のトルク配分を適切に調整するとともに、4輪のブレーキを個別に制御することで、ドライバーのステアリング操作に忠実で、滑らかで心地よいハンドリングを楽しめ、走る楽しさも追求している。

■日本の伝統的なエッセンスが注入されたアリアのデザイン

ボディサイズも近く、SUVながらクーペライクなフォルムとショートオーバハングという昨今のトレンドに通じるスタイルは両車共通だが、それぞれ随所に個性あるデザインを採用している。

アリアのエクステリアは、モーター駆動のEVではエンジンルームの冷却が不要となるため、グリル部分はスモークがかったパネルでカバーされ、日本の伝統的な組子パターンが立体的に表現されるデザインを採用。グリルの中心には新しい日産を象徴する新たなブランドロゴがLEDによって光る仕様になっている

4つのLEDを配したヘッドライドは薄くデザインされたのが特徴で、日産のデザインシグネチャーであるVモーションは白い光で表現され、ウィンカー点灯時にはシーケンシャルウインカーとしても機能する。

インテリアは、モノとモノの間にある空間や、連続するコトとコトの間の時間を意味する日本語の「間(ま)」をキーワードにデザイン。ダッシュボートには物理的なスイッチが無いのが特徴で、クルマの電源を入れるとアイコンが浮かび上がり、このスイッチは運転中でも操作感が分かるように振動するハプティクススイッチになっている。

また、幅の広いセンターコンソールはドライバーのシートポジションに合わせて電動で前後に動かすことが可能で、その上には「アドバンスド アンビエント ライティング」が施された新デザインのシフトノブをレイアウト。このシフトノブは、新型ノートのものと同じような造形になっている。

■最新のメルセデスデザインを踏襲しながらEQA独自の要素も採用

EQAは、メルセデス・ベンツのデザインの基本思想である「センシュアル ピュリティ(Sensual Purity:官能的純粋)」をより先進的に表現した「プログレッシブ・ラグジュアリー」がデザインコンセプト。エクステリアは、前後のオーバーハングが短く、クーペのようにスタイリッシュかつ曲線を用いたデザインで、フロントには、中央にスリーポインテッドスターを配したブラックパネルグリルを採用する。

リヤエンドはメルセデスEQ独自のデザインを採用し、LEDリアコンビネーションランプは中央に向けて次第に細くなるLEDのライトストリップで滑らかに一体化され、リアビューの幅を強調するとともに先進性を表現している。

アルミホイールは、標準仕様は空力を追求した18インチの5スポークで、AMGラインには専用の20インチアルミホイールが装備され、存在感のあるデザインとなっている。

インテリアは、64色のアンビエントライトやジェットタービンを模したエアコン送風口など、昨今のメルセデスデザインを踏襲しながら、使われるファブリックは、サステナビリティに配慮してペットボトルからのリサイクル原料を使用している。

■プロパイロット2.0やリモート・ソフトウェア・アップデートを実現

アリアは、スカイラインにも採用されているプロパイロット2.0を装備。7個のカメラ、5個のレーダー、12個のソナーで白線、標識、周辺車両を検知し、さらにナビゲーションシステムと3D高精度地図データを使うことで制限速度をはじめとした道路状況を把握しながら、ドライバーが常に前方に注意して道路・交通・自車両の状況に応じ直ちにハンドルを確実に操作できる状態にある限りにおいて、同一車線内でハンズオフ走行を可能とし、安全でスムーズなドライビングを実現。アリアでは、準天頂衛星システムなどからの高精度測位情報を受信し、自車位置をより高精度に把握することが可能としている

加えて、パーソナル・アシスタンス技術を搭載したことで空調やナビゲーションを音声で操作でき、「ハローニッサン」と呼びかけることでドライバーの操作をサポートする。また、新型アリアにはAmazonが提供する音声サービス「Alexa」が搭載されており、音楽の再生や天気予報の確認、家族や友人との通話、スマートホームデバイスのコントロールなどを音声のみで操作可能。加えて帰宅途中にAlexaに話しかけて、自宅の照明やエアコンのスイッチを入れるなど、クルマの中から自宅の家電をコントロールすることも可能になっている。

さらに、クルマのソフトウェアをアップデートする「リモート・ソフトウェア・アップデート」を日産初採用。ソフトウェアを保存するメモリについては「デュアル・バンク・メモリ」を採用しており、停車中や走行中にソフトウェアをサブメモリにダウンロードし、その後メインメモリと切り替えることで、アップデートは短時間で完了する。

 

■EVに特化したMBUXを装備

EQAのテレマティクスやメルセデス ミー コネクトには「Electric Intelligence ナビゲーション」「充電ステーション情報」「出発時刻・プリエントリークライメートコントロールの設定」「エナジーフローや電費情報の表示」など、EQモデル専用プログラムが内蔵する。

また、自然対話式音声認識機能を備えた、対話型インフォテインメントシステム「MBUX」では、従来の会話のほか「充電ステーションを探して」「8時までに車両のクライメートコントロールを設定して」など、純EV自動車固有の機能にも対応する。

さらにElectric intelligence ナビゲーションは、ナビゲーションのマップデータから得た勾配情報、充電ステーションの位置情報、車両の充電状況及び気温情報などを総合的に判断し、どこで充電すべきなどを含めた適切なルートを案内するだけでなく、充電ステーションの情報をナビゲーション上に表示する機能を備える。

先進安全装備は、ACCやアクティブレーンチェンジをはじめ、歩行者/飛び出し/右折時対向車検知機能付ブレーキアシスト、車両の前後1m以内に障害物がある場合に急発進ができなくなる「ドライブアウェイアシスト」や、車両の俯瞰映像を表示する「360°カメラシステム」なども搭載する。

■アリアは特別限定車のみ価格が判明

価格はEQAが640万円、アリアは先日予約受注を開始した日本専用特別限定車「アリア limited」が660万円~790万200円。国や自治体の補助金を活用することで、東京都の場合は最大140万円の補助が受けられるので、それぞれ実質価格は500万円台になる。ただ、アリアの価格は特別限定車のものなので、今後一般的なグレードの最安値がどれくらいになるかにも注目したい。

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