20年12月にフルモデルチェンジした日産ノート。発売後の売れ行きは好調、スタートダッシュは成功というところだ。がしかし、販売店では浮かない表情。4月の販売状況を聞いてみたところ、(編集部)
3月以降は受注が伸び悩み
昨年12月23日に発売された新型ノート。発売1ヵ月で約2万台を受注、月販計画8000台の2.5倍となるなど、好調なスタートを切った。日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した3月の登録車ランキングでは、上位をトヨタ車が独占する中、1万3352台で4位に入っており、これは大いに健闘したといえるだろう。
しかし、販売店スタッフの表情はイマイチ冴えない。確かに発売直後は勢いが良かったものの、その後の動きは予想ほど良くないという。首都圏の日産販売店で話を聞いてみると、2月まではそこそこ受注が多かったものの、3月以降、受注が伸び悩んでいるという。
その理由として挙げられるのは、新型ノートには「ガソリン車」の設定がないことだ。2012年に登場した先代ノートは2016年11月にe-POWER車を追加したが、このe-POWER車がノートの人気を押し上げ、販売比率では約7割を占めていた。しかし、逆にいうと3割もあったガソリン車の設定がなくなったのだから、販売台数が減少するのは当然である。
販売店では、新型ノートの発売直後は先代ノートe-POWERのユーザーを中心に代替提案を行った。先述した通りノートe-POWERが登場したのは2016年11月なので、発売直後に購入したユーザーでも、まだ5年も経っていない。このため下取り価格も高く、またe-POWERの走りそのものにも魅力を感じているユーザーが多いため、商談もスムーズに進みやすい。その結果が受注2万台の好スタートとなって表れたといえる。
しかし、ガソリン車のノートユーザーは事情が異なる。安価な日常の足としてガソリン車を選んだユーザーも多く、さらにe-POWERが追加される前、つまり16年以前にノートを購入したユーザーでは年式も古くなって下取り価格も低い。これらのユーザーがe-POWER専用車となった新型ノートへの代替をためらうのは無理もない。今回話を聞いた販売店でも、5年以上経過したノートユーザーへの代替提案を強化しているという。しかし、新型ということで大きな値引きもできず、ユーザーの反応も今一つだという。
結果、先代ノートe-POWERから新型ノートe-POWERへの初期受注が一巡した後は、勢いが続かず息切れしてしまうことになる。ガソリン車ユーザーがついて来ないためだ。もちろん受注から実際に登録されるまでにはタイムラグがあるので、登録台数の順位ではしばらくは上位をキープするはずだが、その後は急速にトーンダウンする可能性が高い。
維持費の安さで軽自動車を選ぶ人が多い
営業スタッフに対し、お客様からは「コンパクトカーなのに高い」と言われることが多いという。ちなみに先代ノートの発売時の価格は124万9500円から。上級の「メダリスト」でも167万4750円だ。これに対し新型ノートは一番安い「S」グレードでも202万9500円。当時と今では装備内容が異なるのは確かだが、ベーシックなコンパクトカーとして先代ノートを選んだユーザーからは、高く感じられるのも当然だろう。
ちなみに他社の現行コンパクトカーと比べると、トヨタ「ヤリス」のガソリン車は139万5000円から。量販グレードの「X」でも159万8000円だ。ホンダ「フィット」もガソリン車は155万7600円からの設定だ。おおよそ150万円~170万円代が、ユーザーの考えるコンパクトカー(ガソリン車)の相場といえるだろう。新型ノートの場合、そのようなユーザーに200万円を超える価格を提示するのだから、スムーズに商談が進まないのも仕方がない。
こうした場合、販売店ではマーチ、デイズ、ルークスへの代替を提案している。マーチは長期的に低迷しているモデルだが、今年1月から販売台数が僅かながらではあるものの上昇した理由はこのためだ。つまり先代ノートのガソリン車ユーザーの受け皿である。
とはいえ、実際には維持費の安さも決め手となって軽自動車のデイズやルークスを選ぶ人が大半とのこと。軽自動車が嫌だという人は、乗り換えを延期するか他メーカーに行ってしまうことが多いのだそうだ。メーカーとしては電動化について来られる人だけ来ればいい、というところかもしれないが、保有客の維持に汲々としている販売店にとっては頭の痛いところである。