ホンダ、三部社長 社長就任会見 2040年に全車EV/FCVに

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ホンダの代表取締役社長 三部 敏宏氏は4月23日、社長就任会見を実施した。三部社長は会見において、ホンダが今後目指す取り組みの方向性などについてスピーチした。

 

【社長就任会見スピーチ概要】

今後の取り組みの方向性は、「環境」と「安全」に徹底的に取り組むとともに、将来に向けてモビリティ、パワーユニット、エネルギー、ロボティクスの領域で進化をリードすることを目指す。また、環境と安全の目標達成の地盤となる、「既存事業の盤石化」の確実な達成に取り組む。

 

 

<環境への取り組み>

①環境負荷ゼロに向けた3つの取り組み

2050年に、ホンダの関わる全ての製品と企業活動を通じて、カーボンニュートラルを目指す。製品に加え、企業活動を含めたライフサイクルでの環境負荷ゼロを目指し、カーボンニュートラル、クリーンエネルギー、リソースサーキュレーションの3つを柱に取り組みを行う。

  • 二輪・四輪製品の電動化や交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」により電動製品の幅を広げ、インフラと連携したスマートな電力オペレーションを行うことで、再生可能エネルギーの利活用を拡大する。
  • 再生可能エネルギーのさらなる拡大に向けて、水素の活用を積極的に推進。電動化が難しい航空機などの領域も含め、カーボンニュートラル・フューエルも加えた様々なエネルギーを利活用する「エネルギーのマルチパスウェイ」の実現を目指す。
  • バッテリーのリユースやリサイクルをはじめとしたマテリアル・リサイクルに関する研究を進め、サステナブル・マテリアル100%での製品開発にチャレンジする。
  • 電動モビリティとエネルギーサービスをつなぎ「自由な移動の提供」と「再生可能エネルギーの利用拡大」に貢献する「Honda eMaaS(イーマース)」のコンセプトは、「モバイルパワーパックの活用拡大」、「電動車両に搭載された大容量バッテリーの活用」、「FC(燃料電池)システムの応用・展開」の3つを軸に実行する。

 

 

②四輪車電動化

Tank to Wheelでのカーボンフリーを達成するため、「先進国全体でのEV、FCVの販売比率を2030年に40%、2035年には80%」、そして「2040年には、グローバルで100%」を目指す。

 

 

◆北米

  • EV、FCV販売比率「2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%」を目指す。北米での電動化は、GMとの戦略的なアライアンスを柱のひとつとし、両社の強みを生かしながら、効率的に進める。
  • GMのEV向けバッテリー「アルティウム」を採用した両社共同開発の大型EVを2車種、それぞれホンダとAcruaブランドの2024年モデルとして、北米市場に投入予定。
  • ホンダが開発を主導する全く新しいEVプラットフォーム「e:アーキテクチャー」採用モデルを、2020年代後半から順次、北米市場に投入し、その後、各地域にも展開。

◆中国

  • EV、FCV販売比率「2030年に40%、2035年に80%、2040年に100%」を目指す。
  • 現地リソースを活用したEVの投入を更に加速させ、今後5年以内に10機種のホンダブランドのEVを中国市場に投入する。その第1弾として、「Honda SUV e: Prototype」をベースとした量産車を2022年春に発売予定。
  • 基幹部品となるバッテリーについても、CATLとの連携を更に強化するなど、現地リソースの活用を更に推進する。

◆日本

  • EV、FCVの販売比率「2030年に20%、2035年に80%、2040年に100%」を目指す。さらに、2030年には「ハイブリッドを含めて100%電動車とする」ことを目指す。
  • 2024年に軽自動車のEVを投入するなど、ハイブリッド・EVによる軽自動車の電動化を推進する。
  • バッテリーの調達は国内産業の発展にも寄与できるよう、日本での地産地消を目指す。
  • モビリティサービスの領域では、GM・クルーズと共同開発している「Cruise Origin」を、2020年代半ばに日本市場に導入することを目指し、2021年中に技術実証を開始する。

 

 

 

EVの高い商品競争力を確保するため、高容量、低コスト化を実現する次世代バッテリーとして、全固体電池の研究を独自に進めており、今期、実証ラインでの生産技術の検証に着手する。2020年代後半のモデルに採用できるよう研究を加速する。EVの世界でも、独創的なアイデアやデザインといった強みにデジタル技術を融合させ、ホンダならではの空間価値の提供を目指す。

 

③二輪電動化

電動化だけでなく、ガソリンエンジンの燃費改善やバイオ燃料の活用などにも取り組む。

  • 二輪車の電動化は、高額なバッテリーを車両と切り離して考えることが普及のカギとなり、電動化への社会的要請が強い先進国では、「B to B(企業間取引)」「B to G(省庁や自治体との取引)」をターゲットに、モバイルパワーパックを活用した電動化を推進する。
  • 一般ユーザーに向けては、商品の拡充に加え、日本・欧州で他の二輪車メーカーとコンソーシアムをそれぞれ設立し、交換式バッテリー技術の標準化に取り組む。
  • モバイルパワーパックは、パワープロダクツ製品や、マイクロモビリティまで活用を拡大することを目指し、インドでは三輪タクシーの「リキシャ」を活用した実証実験を開始した。
  • カスタマーの多様なニーズに応えるべく、ビジネス領域にて「GYRO e:」、「GYRO CANOPY e:」を2021年に投入するのに加え、2024年までにパーソナル領域で原付一種・原付二種クラスに3機種の電動二輪車を、さらにFUN領域でも商品を投入する。

 

④FC

水素は再生可能エネルギーとして普及が期待されており、FC技術の研究、開発、実用化に取り組んでいる。GMとの協業は継続しながら、FCVの拡大だけでなく、商用トラックへの展開や、定置型、可搬型電源など、幅広い用途にFCシステムを活用していくことで、コスト低減と水素社会の実現を目指す。

 

<安全への取り組み>

2050年に全世界で、ホンダの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロを目指す。共存安全技術の研究強化を図ると共に、ハード・ソフト両面で、事故のない社会の実現をリードする。

  • 二輪車の死亡事故に四輪車が関与するケースが多いことから、全方位安全運転支援に進化したADAS(先進運転支援システム)を2030年までに先進国の四輪全機種へ適用することを目指す。
  • レベル3自動運転技術の研究開発で培われた知見、ノウハウをADASのさらなる知能化に生かし、事故カバー率の向上を目指す。
  • 特に新興国においては、交通安全の教育活動やインフラ、政策への働きかけによって防げる事故も多くあるため、教育強化や渉外活動といった領域にも重点的に取り組む。

 

 

<研究開発への対応>

上記環境と安全の取り組みを進めるには、研究開発領域への積極的な投資が不可欠なため、売上高の増減に左右されず、今後6年間で総額5兆円程度を研究開発費として投入する。研究開発領域では、さらなる強化が必要なデジタル技術の開発体制などに、アライアンスも含め必要な手を迅速に打つほか、電動化におけるバリューチェーンの構築にも積極的な対応を行っていく。

 

<将来に向けた仕込み>

研究所は昨年から先進技術の研究に特化しており、環境負荷ゼロ社会と、事故のない社会の実現に向けた、先行技術の研究に取り組んでいる。そして、更に次の夢として、モビリティを三次元、四次元に拡大していくべく、空、海洋、宇宙、そしてロボットなどの研究を進めている。先進・先端技術へのリソースはしっかり確保し、独創的な技術研究を強化する。また、新しい価値を積極的に生み出すため、従業員の夢やアイデアを起点とした「新事業創出プログラム」を開始した。

 

部社長は、「Hondaがあってよかった」「Hondaなら、きっとやってくれる」と存在を期待される企業であり続けることが、ホンダが今後目指す姿であり、その実現に向けて、変化する事業環境に対してレジリエントな体質を作ると共に、スケールの大きなアクションを迅速に実行するとともに、本質を追求し、独創的である、という同社らしさを常に自らに問いかけながら、アグレッシブに取り組んでいくとスピーチの最後を締めくくった。

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