マクラーレン・オートモーティブは4月13日、新型ハイブリッド「マクラーレン Artura(アルトゥーラ)」 を日本初公開した。Arturaは、全く新しいマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA) を採用するマクラーレン初のシリーズ生産ハイパフォーマンス・ハイブリッド(HPH) スーパーカー。日本での車両本体価格(消費税込)は2,965万円〜となる。
<新しいV6ガソリンエンジンと8速トランスミッション搭載>
「Artura」のパワートレインは、排気量2,993cc、ツインターボチャージャー搭載の新しいマクラーレンV6ガソリンエンジンを搭載。最高出力は585PSでリッター200PSに迫り、最大トルクは585Nmを発揮する。エンジンは軽量かつコンパクトなアルミニウム製のドライサンプ式で、160kgとマクラーレンV8より50kg軽く、そして大幅に短くなりパッケージングの効率性が向上。排出ガス性能を最適化するガソリン・パティキュレート・フィルターも採用している。120°のバンク角は、いわゆる“ホットV”へのターボチャージャーの配置を可能にし、パッケージングのアドバンテージを増やし、低重心にも貢献している。また、120°レイアウトによって、排気システムの圧力ロスが低減してエンジンパフォーマンスを向上したのに加え、高強度クランクシャフトの採用が可能となり、レブリミットを8,500rpmに設定してパフォーマンスとドライバーとの一体感を最大化した。
<Eモーターとバッテリーパック>
新V6と調和して働くのがコンパクトなアキシャル・フラックスEモーターで、トランスミッションのベルハウジング内に搭載。一般的なラジアル・フラックスモーターより小型で電力密度が高く、最高95PS、225Nmを発生。その1キロあたりの電力密度はマクラーレンP1™のシステムを33%上回る。0-100km/h(0-62mph)加速はわずか3.0秒、0-200km/h(0-124mph)は8.3秒を達成。最高速度は330km/h(205mph)に制限されている。トランスミッションはArturaのために特別に開発され、パワーデリバリーとトルクデリバリーを最適化するため、マクラーレンの既存のトランスミッションより1速増えたにもかかわらず、軽量なクロスレシオのギアクラスターは全長が40mm短縮。また、後退はEモーターが逆方向に回転することで担うので、リバースギアが不要になった。Eモーターの動力となるバッテリーパックは、5個のリチウムイオン・モジュールからなり、使用可能な最大電力量は7.4kWh、純粋なEV航続距離は30kmとなる。
Arturaは完全なプラグインハイブリッド(PHEV)機能を備え、標準的なEVSEケーブルを使ってわずか2時間半で80%充電可能なほか、選択した走行モードに応じて、走行中に内燃エンジンからバッテリーに充電することも可能となっている。
<MCLAを使用する最初のマクラーレンモデル>
Arturaは、マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)をコアに採用した初のモデルとなり、シェフィールド地方のマクラーレン・コンポジット・テクノロジーセンター(MCTC)が設計・製造を担うMCLAが、マクラーレンのシャシーデザインの新たなスタンダードとなる。MCLAは高性能ハイブリッドの搭載に最適化され、専用のバッテリーコンパートメントを備えるほか、画期的なドメイン型のイーサネット・エレクトリカル・アーキテクチャーと、電動の暖房・換気・空調(eHVAC)システムを採用している。
<ドラマチックな雰囲気を演出するエクステリア>
エクステリアデザインは、スーパーカーらしい低いノーズに、キャブフォワード、ハイテールのスタンスを採用。マクラーレン特有のディへドラル・ドアは、よりボディに沿って開閉し、ミラーはさらにタイトに折りたたまれて格納され、短いホイールベースと低いスタンスが、ドラマチックな雰囲気を演出し、ボディにおいてはシャットラインやパネル接合部が最小限に抑えられている。Arturaのフォルムは空力性能と冷却のために気流を整え、パフォーマンスを最大化するよう造形されている。
<4モードから選択可能なパワートレイン>
パワートレインの設定は4モードから選択でき、そのうちEモードでは電気のみを使う排出量ゼロの走行が30km可能。複合的な走行状況に最適なComfortモードでは、走行距離と効率性を最大化するため、ストップ&スタートモードの使用を拡張し、40km/h未満では内燃エンジンを停止し、より大きな速度とパワーが求められる際は段階的に利用する。SportとTrackモードでは低速域のレスポンスと加速のために、電力をよりアグレッシブに利用し、ハンドリングモードではドライバーの好みや天候、路面状況に合わせて、ダンパーの硬さとエレクトロニック・スタビリティー・コントロールの介入の程度を調節することが可能となっている。
マクラーレンのエンジニアが開発において重視した点は、ブレーキング時の安定性、リアエンドの制御性、グリップの増強および空力ダウンフォースの最適化、そしてドライバーとの一体感の強化でした。こうした目標達成の鍵となったのが、リア・アクスルの左右に分配されるトルクを個別に制御するマクラーレンが初めて採用した電子制御ディファレンシャル(Eデフ)。Eデフは機械式デフロックより軽量かつ小型(トランスミッション内部に格納)で制御しやすく、ロックの作動と解除を左右のリアタイヤで個別に行って、コーナー脱出時のトラクションを向上する。革新的なシステムのリア・サスペンションは、車両安定性と正確性が最大化され、コーナー脱出時におけるアンダーステアが低減された。また、タイヤ幅の拡大により定性とトラクションがさらに向上したのに加え、短いホイールベースとEデフ、融合したリアスポイラーとディフューザーが生み出す物理的ダウンフォースの効果で、低速時の驚異的な俊敏性と、高速時の高い安定性の両方が確保されている。
さらに動的な正確性を強化しているのが ピレリのCyber Tyre® 技術で、Arturaの電子制御システムに統合されたハードウェアとソフトウェアから構成され、マクラーレンとピレリのエンジニアの協力で誕生した。各タイヤ内部の電子チップがリアルタイムでデータを生成、これを車両の安定制御システムに伝達すると共に、タイヤの空気圧を監視してタイヤのパフォーマンスを最適化するのが ピレリのCyber Tyre® となる。油圧式アシストのステアリングは重量削減のため完全に再設計され、これと組み合わされたマクラーレン・プロアクティブ・ダンピング・コントロールシステムはアップデートされた専用バージョンで、乗り心地とハンドリング特性に貢献している。カーボン・セラミック・ブレーキと軽量なアルミニウム製キャリパーを装着し、高速走行時に優れた制動力と安定性を発揮する。
Artura開発のモットーはドライバーとパッセンジャーへの快適性で、特に重要な点は、NVH(ノイズ・振動・ハーシュネス)の改善であり、電動モードでは ほぼ無音の走行を実現できるレベルを追求した。この改善に貢献したイノベーションには、MCLAの剛性、パワートレインの液体封入式マウント、サスペンションの新レイアウトとセッティング等に加えて、ピレリのノイズキャンセリングシステム(PNCS)があり、ロードノイズを低減するこの特許取得技術においては、ピレリ P-ZERO™ タイヤ内部のポリウレタンスポンジが振動を吸収し、キャビンへ伝わるノイズを最低限に抑える。
<人間工学が強化されたコックピット>
コクピットについてはこれまで以上にドライバー中心の空間となり、走行モードのセレクター(従来どおりパワートレインとハンドリングは個別に設定可能)はインストゥルメント・ビナクルに移動したが、代わりにビナクルがステアリングコラムにマウントされ、ステアリング・ホイールと共に調節でき、運転時の人間工学がいっそう強化された。その結果、ステアリングから手を離さずに走行モードを調節できるようになった。また、新しいクラブスポーツ・シートもデビューし、軽量かつサポート力に優れ、太もも裏のサポート、シートの高さ、背もたれの調節時には、シート全体が一体となって楕円の弧を描いてピボットする。オプションでコンフォート・シートも選択可能。
<2個の高解像度スクリーンを活用したインフォテインメントおよびインターネット接続システム>
インフォテインメントおよびインターネット接続システム(MIS II)は、2個の高解像度スクリーンを活用。インターフェースは、新しいソフトウェアと専用ハードウェアを基に、スマートフォン並みの応答性を実現し、スマートフォンのミラーリングも可能となっている。MIS IIには、マクラーレン・トラック・テレメトリーやバリアブル・ドリフト・コントロール等、おなじみのマクラーレン・アプリのアップデート版を搭載。ナビゲーションマップのデザインも改められたほか、オプションでドライバーを支援するいくつものADASが利用可能。また、キーに低消費電力Bluetoothを備え、ドライバーが車両に近づいてくるのを検知するとシステムの電源を入れて乗員を出迎える。
<特許出願中のテクノロジーを多数採用>
Arturaには、MCLAの様々な要素の充填材や、機械式リバースギアに代わって後退を可能にし、ギアボックスの短縮にも貢献しているEモーターの利用法、新しいクラブスポーツ・シートの革新的でありながら驚くほど使いやすい軽量な調節メカニズムなど、特許を出願中のテクノロジーが数多く採用されている。
Arturaは現在、マクラーレン正規販売店でオーダーを受け付けており、納車は今年の第3四半期に開始。価格は本国イギリスで標準仕様185,500ポンド〜[2,965万円(税込)~]。主要な仕様がほかに3種類あり、スポーティで機能的な美しさを特徴とする「パフォーマンス」、名前が示すとおりテクニカルでラグジュアリーな要素を中心にした「テックラックス」、よりアバンギャルドで大胆なルックスと印象の「ヴィジョン」となっている。