ジャガー・ランドローバーは2月15日(英現地時間)、英国の2つのブランドを通じて、デザインによるモダン・ラグジュアリーの未来を再構築する、新グローバル戦略 「Reimagine」を発表した。同社は、ラグジュアリー・ビジネスの環境、社会、地域コミュニティにインパクトを与える新たなベンチマークを作り出すために同戦略を設計したと述べた。
<サステナビリティを中核となるジャガーとランドローバーの両ブランドの電動化>
「Reimagine」戦略の中核となるのは、ジャガーとランドローバーの両ブランドの電動化で、独自のパーソナリティを明確に持った、別々のアーキテクチャを採用する。
ランドローバーでは、「RANGE ROVER」、「DISCOVERY」、「DEFENDER」の3つのファミリーを通じて、ラグジュアリーSUVにおいて世界をリードし続けるために、今後5年間で6種類のピュアEV(電気自動車)を導入。ランドローバー初となるピュアEVモデルは2024年の登場を予定している。
ジャガーは2020年代半ばまでにブランド再生を実行。ピュアEVのラグジュアリー・ブランドとして生まれ変わる。なお、「XJ」というネームプレート自体は存続する可能性はあるが、今後発売するべく開発を進めていた「XJ」後継モデルは、ラインアップには含まれず、今後ジャガー・ブランドは独自の方向性を追求すると述べている。
ジャガー・ランドローバーは、2030年までに、それぞれのブランドでピュアEVを投入し、ジャガーでは100%、ランドローバーでは約60%に、テールパイプのない(排気ガスの出ない)パワートレインの搭載を予定している。また同社の目標は、2039年までに、サプライチェーン、製品、オペレーションのすべてにおいて排出ガス量を実質ゼロにすることで、その一環として水素経済の成熟に伴い、クリーンな燃料電池の準備も進めている。これは長期的な投資プログラムとして行っており、開発はすでに進行中で、今後1年以内にプロトタイプが英国に到着するという。
同社は年間約25億ポンドの投資をコミットしており、このなかには、電動化テクノロジーやコネクテッド・サービスの開発が含まれている。オーナーシップ・エコシステムをさらに向上させるデータ集約型テクノロジーとあわせて、カスタマー・ジャーニーおよびエクスペリエンスを向上するのに加え、ジャガー・ランドローバーのインキュベーター兼投資機関であるInMotionから生まれた、柔軟なPIVOTALサブスクリプション・モデルなどの実績のあるサービス(会計年度中に750%成長)を、英国での成功に続いて、他の市場での展開も予定している。
<ラグジュアリー業界において品質と効率性における新たなベンチマークのスタンダードを確立>
「Reimagine」戦略では、適正規模、目的、編成を見直し、ラグジュアリー業界において品質と効率性における新たなベンチマークのスタンダードを確立するため、2つのブランドの異なるパーソナリティを明確にする新たなアーキテクチャ戦略を実施。
ランドローバーではModular Longitudinal Architecture(MLA)を活用し、将来の製品ラインアップの進化に合わせ、電動化された内燃機関(ICE)やフル電動化のバリエーションに対応する。さらに、ピュアEVに特化したElectric Modular Architecture (EMA)も使用し、先進的な電動化ICEをサポートする。
ジャガーのモデルでは、将来的に、ピュアEVアーキテクチャのみとなる。
「Reimagine」戦略には、簡素化(シンプル化)の実現も含まれており、工場ごとに製造されるプラットフォームとモデルの数を統合することで、ラグジュアリー業界の効率的な規模と品質の新たなベンチマークのスタンダードを確立することができ、こうしたアプローチによって調達の合理化や、地域循環型経済のサプライチェーンへの投資を加速させることが可能となる。英国ウェストミッドランド州ソリハルはMLAアーキテクチャの製造元であると同時に、今後、ジャガーのピュアEVのプラットフォームの製造拠点になる予定としている。
<より迅速なオペレーションを目指した「Refocus」プログラム>
「Charge+」をはじめとする既存のイニシアチブを、新たな部門横断型の活動に統合した「Refocus」プログラムを構築。「Reimagine」戦略では、ジャガー・ランドローバーの適正な規模を見極め、目的を見直して再構築し、より迅速なオペレーションを実現する。よりフラットな組織にすることによって、従業員はスピード感と明確な目的を持って製品をつくり、市場提供できるようになる。
こうした集中と選択を加速させるために、英国内の非製造部門のインフラストラクチャの大幅な削減と合理化を実施。英国ウォリックシャー州ゲイドンはこの取り組みの象徴ともいえるもので、ビジネスの「Reactor」として、エグゼクティブ・チームとその他の管理部門を1箇所に集約し、摩擦のない協力体制と迅速な意思決定を後押しする。
<タタ・グループ各社との連携>
モダン・ラグジュアリー・モビリティというビジョンを確実に実現するために、ジャガー・ランドローバーはタタ・グループ各社と緊密に連携して知識共有を深め、サステナビリティを強化し、排出ガス量を削減すると同時に、次世代テクノロジー、データ、ソフトウェア開発のリーダーシップにおけるベストプラクティスを共有する。ジャガー・ランドローバーは2008年からタタ・モーターズの100%子会社となっており、タタ・サンズはその筆頭株主となる。
これらすべての要素を結集して、ジャガー・ランドローバーは2桁のEBITマージンとプラスのキャッシュフローを達成し、2025年までに債務超過解消という意欲的な目標を掲げており、最終的には世界で最も収益性の高いラグジュアリー自動車メーカーのひとつになることを目指している。
タタ・サンズ、タタ・モーターズおよびジャガー・ランドローバーの会長であるN・チャンドラセカラン氏は、「『Reimagine』戦略によって、タタ・グループのビジョンやサステナビリティにおける優先事項との調和を図りながら、ジャガー・ランドローバーは目標の達成に向けて大きく加速します。同時に、ジャガーはその可能性を示し、ランドローバーは時代を超越した魅力をより一層強化し、両ブランドがお客様や社会、そして地球にとって責任ある企業の象徴となれるよう支援していきます。」 と語った。
また、ジャガー・ランドローバーの最高経営責任者(CEO) ティエリ―・ボロレ氏は、「ジャガー・ランドローバーは世界の自動車業界において極めてユニークな存在です。他に類を見ないモデルのデザイン、顧客の将来のラグジュアリー・ニーズに対する並外れえた理解、感性に訴えかけるブランド価値、英国の精神、そして、タタ・グループの傘下であることで、テクノロジーとサステナビリティの分野において世界をリードする各社との連携ができるという優位性を持ち合わせています。私たちはこれらの要素をいかして、これからのビジネス、ジャガーとランドローバーという2つのブランド、そしてカスタマー・エクスペリエンスを再構築していきます。この『Reimagine』戦略により、かつてないほどに独自性を強化し際立たせることができます。それと同時に、当社を取り巻く世界に対し、よりサステナブルでポジティブなインパクト与えることもできるのです。人を中心に据えた企業として、ジャガー・ランドローバーは単にモダン・ラグジュアリーを再定義するだけでなく、ジャガーとランドローバー、それぞれのブランドを再定義するという明確な目標を掲げ、スピード感を持って前進していきます。ブランドは、感性に訴えかけるユニークなデザイン、言うなれば芸術作品のようなものです。すべてのモデルにコネクテッド・テクノロジーや責任ある素材を備えることで、オーナーシップの新たなスタンダードを確立します。私たちは、デザインによって新たなモダン・ラグジュアリーを再構築していくのです。」 と述べた。