クルマのパーツの中でも、選択に迷うことが多いのがタイヤだ。特に多人数でドライブに出かけることも多いミニバンに履かせるタイヤは難しい。車内で会話が弾む静粛性、長時間乗車でも苦にならない乗り心地、あらゆる路面で安心して運転できる高い運動性能などを持ちつつ、燃費性能や耐摩耗性なども高いレベルが要求される。これら相反する性能を高バランスで実現させる必要があるのだ。
そこで注目なのが、グッドイヤーのエフィシェントグリップ(E-Grip)シリーズに新たに加わるミニバン専用タイヤ「E-Grip RVF02」。全40サイズで21年3月の発売を予定している。
このE-Grip RVF02の特徴は、ミニバン用タイヤに求められる性能が徹底的に高められていることだ。従来の「イーグルRV-F」に比べ、パターンノイズは14%低減、乗り心地は8%向上、ライフ性能は22%向上、燃費に直結する転がり抵抗は12%低減と、飛躍的に性能を向上させたという。まさに新世代のミニバン専用タイヤといえるだろう。
静かで上質な乗り心地と軽快なハンドリングを両立
そんなE-Grip RVF02の実力を試すべく、今回は富士スピードウェイ・モビリタに設定された特設コースで試乗した。ダブルレーンチェンジやパイロンスラローム、急角度のコーナー、さらには細かい段差や滑りやすい低ミュー路などのコースが設定されており、40~60km程度の速度でそれぞれ走行。速度域自体は高くないものの、重量級ミニバンの試乗コースとしては挙動の差がわかりやすいコース設定だ。試乗車はトヨタ・アルファードで、サイズは235/50R18を履いていた。
まず外周コースからスタート。コースインするとすぐにパイロンスラローム、ダブルレーンチェンジと続き、その後は長めのストレートを経て細かい段差が続く、というコースだ。日常で走行する機会の多いシチュエーションのコースといえる。
乗り始めてすぐに感じたのは、グリップ性能の高さだ。RVF02はコンフォート系のタイヤだが、意外なほどしっかりと路面を掴む。ミニバンが苦手なパイロンスラロームも、まったくふらつくことなく走りは極めて安定。外側の剛性を上げたミニバン専用タイヤならではだ。かといってゴツゴツした感じが全くないのも特筆できるポイントだ。そしてストレートでは高い直進安定性を見せ、そこからの減速時も不安定になることがない。
驚かされたのは、滑りやすいワインディングを模した低ミュー路のコースだ。ここでもグリップを失わず、安定した走りを見せる。速度を上げても突如としてグリップを失うこともなく、極めて安心感が高い。これなら、ドライブの途中で突然の雨に見舞われても、不安になることはないだろう。
続いて内周に設けられたコースを走る。こちらはパイロンスラロームとタイトなコーナーが組み合わされ、重量級のアルファードには、なかなか厳しいコース。なのだが、ここもRVF02は難なくこなしてしまう。しっかりとした接地感がステアリングに伝わり、まさにオンザレールのハンドリング。アルファードはどちらかというとゆったりした動きを見せるクルマなのだが、そうとは思えないほど、軽快な動きで心地よい。設定速度から少々スピードを上げても安定感は変わらず、思わずミニバンでの試乗であることを忘れてしまうほどだった。
その上で素晴らしいのは、乗り心地や静粛性の高さである。細かい段差を越えても、しっとりとした乗り心地を失わず、もちろんスラロームやストレートの走行中も車内は静かの一言。ゴツゴツした乗り心地や気になるタイヤ音は皆無だ。静かで軽快、かつ乗り心地もしなやかで文句のつけようがない。これならドライバーはもちろん、後席乗員も満足できるはずだ。
ミニバン用タイヤは各社から発売されているが、静粛性や低燃費性を高めつつ、高いドライ・ウェット性能、乗り心地を両立させているのは、さすが最新モデルならでは。試乗では耐摩耗性は確認できなかったが、これも従来比で向上したとのことで、安心できるはず。静かで快適、かつ安全なドライブのために、ミニバンユーザーならば、ぜひ装着して欲しい実力タイヤである。(鞍智誉章)