本田技研工業は、日本のモータリゼーションが発展期にあった1970年に二輪車・四輪車メーカーでは初の試みとなる「安全運転普及本部」を設立し、安全運転の普及活動を開始。以来、日本国内のみならず海外へも活動を広げ、2020年10月1日に発足50年の節目を迎える。
<ホンダの考える安全とは>
環境・安全ビジョンに「自由な移動の喜び」と「豊かで持続可能な社会」の実現を掲げ、そのビジョン実現に向けて二輪車・四輪車の運転者だけでなく、子どもから高齢者まで、交通社会に参加する全ての人に安心・安全を提供するため、「Safety for Everyone」というグローバル安全スローガンのもと、事故に遭わない社会の実現を目指して、技術開発といったハードの領域だけでなく、「ヒト」への啓発活動などのソフトの領域まで含めた安全への取り組みを行っている。
<安全運転普及活動の基本理念と取り組み内容>
交通社会に関わる全ての人の体験、知識、意識の向上をサポートする、「ヒト」に焦点を当てた安全運転普及活動を実施。その取り組みにおいては、二輪車・四輪車の販売店の店頭などでカスタマーに直接安全を伝える「人から人への手渡しの安全」と、危険場面を安全に体験できる環境で実車やシミュレーターを使って行う「参加体験型の実践教育」が基本となっている。
上記活動を実現するため、「人づくり」、「場づくり」、「ソフトウェアの開発」という3つの柱を安全運転普及本部の役割として、50年にわたる活動を実践してきた。その具体的な取り組み事例としては、1994年に導入した、カスタマーにクルマの安全に関するアドバイスができる営業・サービススタッフを養成する「セーフティコーディネーター制度」や、1964年に開設され白バイ隊訓練に使われた鈴鹿安全運転講習所がルーツとなっている、全国7カ所の「交通教育センター」の設置、そして幼児や高齢者などを対象にした教育プログラムや1996年に発売されたHondaライディングシミュレーターをはじめとする教育機器の開発が挙げられる。それらの取り組みの結果、二輪車・四輪車の販売会社や、地域の企業や行政、学校などと協力しながら、これまで日本国内で延べ657万人以上の人々に交通安全・運転教育を実施してきた。
<海外でも交通安全・運転教育を実施>
安全運転普及本部発足から2年後の1972年には、同本部内に海外での活動を推進するための部門「海外安全運転普及推進委員会」が発足。1978年にブラジルに交通教育センターを設置するなどの体制構築を行い、人材の育成に取り組む各国現地法人に対してノウハウの提供などの支援を行っている。各国現地法人では、それぞれの交通事情に合わせた活動を実施しており、2020年現在、日本を含む世界41の国と地域に広がっている。特にアジア諸国においては、販売店での納車時の安全啓発や、交通教育センターでの運転者教育、学生や子どもを対象とした安全教育など、それぞれの国や地域の実情に合わせた活動が積極的に実施されている。
<時代に先駆けた安全運転普及活動の進化>
安全運転普及本部が発足して50年の今年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により非接触などの新しい生活様式が求められる中、これまで取り組んできた「人から人への手渡しの安全」、「参加体験型の実践教育」の活動を基本にしながらも、一人ひとりに最適化された「アダプティブラーニング」や、ヘッドマウントディスプレイを用いたVRを活用した「疑似体験学習」など、時間や場所を問わず自分のレベルに合わせて学べるという新しい教育手法を活用するなどの、新しい教育手法への取り組みの検討も始めている。
ホンダは、時代に先駆けた教育手法とともに、これまでの活動で培ってきたリアルな実践教育を組み合わせた、同社ならではの交通安全教育の進化に取り組んでいくと述べている。
【Hondaの安全運転普及活動の歩み】
- 1964年 鈴鹿安全運転講習所 開設
- 1970年 安全運転普及本部 発足
- 1972年 海外安全運転普及推進委員会 発足
- 1978年 ブラジルに交通教育センター 開設
- 1985年 シンガポール・セーフティー・ドライビングセンター(SSDC) 開設
- 1994年 タイに交通教育センター 開設
日本の四輪販売会社にセーフティコーディネーター制度導入 - 1995年 日本で小学生低学年向け交通安全教育プログラム「あやとりぃ」 開発
- 1996年 「Hondaライディングシミュレーター」 発表
- 2001年 「Hondaドライビングシミュレーター」 発表
- 2012年 「リハビリテーション向け運転能力評価サポートソフト」 開発
- 2018年 日本の四輪販売会社に、より正しく先進の安全運転支援技術の説明ができる「アドバンスドセーフティコーディネーター」 制度導入