プジョーのエントリーモデルある「208」が2012年のデビュー以来初のフルモデルチェンジを実施し、今夏2代目となる新型が日本にも導入された。新型208は“パワーオブ・チョイス”という考えのもと、ガソリンエンジンモデルだけでなく、プジョー初のEV(電気自動車)となる「e-208」も設定。今回は、ガソリンモデルに試乗する機会を得た。
エクステリアは、先代モデルからワイド&ローを一段と強調するとともに、サイドビューはより長く彫刻的な造形のボンネット、セットバックしたフロントウインドスクリーンがスポーティさを、極端なまでに寝かせたCピラーがリアフェンダーの造形とあいまってワイドで安定感のあるスタンスを産み出している。
上級グレードのGT Lineは専用17ホイールを装着し、グロスブラックのホイールアーチを備えたことで、スリムなボディと対称的にさらにタイヤを大きくワイドに見せる演出がなされている。
インテリアは、3D表示になったi-Cockpitの新世代バージョン「3Di-Cockpit」を採用。加えて、新しい3Di-Cockpitは「視覚ゾーン(EYE)」「操作ゾーン(HANDS)」「ボディゾーン(BODY)」の3つのレイヤーから成り立っているという。
また、ガソリンモデルとEVのデザインは共通となっており、パワートレインのチョイスで専用モデルを選ぶ時代ではないことを提唱しているという。
後席のサイズはやや小さめで、足元や頭上空間も窮屈ではないもののゆとりもあまりない。このあたりは、パーソナルカーとして割り切った使い方が求められる。
■想像以上に強力な1.2Lターボ
ガソリンモデルのパワーユニットは、直列3気筒1.2Lターボエンジンに8速ATの組み合わせ。最高出力100PS/最大トルク205Nmというスペックは数字だけみれば控えめな印象を受けるが、その走りは控えめどころかスペック以上のパワフルさを体感できる。低回転域から太いトルクが発揮されるので、走り出しからの加速も力強く、高速や坂道での再加速といったシチュエーションでも必要十分以上の走りを見せてくれた。
また、アイドリング時でも3気筒にありがちな振動も無く、多段化されたATによって時速100km巡行時でも2000rpm付近をキープし、ワンクラス上の静粛性を実現していることもポイントだ。
ドライブモードには、ノーマル、エコ、スポーツが設定されており、エコだとパワー不足が感じられる。スポーツモードでは、アクセルレスポンスが高まり、エンジン音を模した低音がスピーカーから流れ、気分が高揚させられた。
乗り味は欧州車らしく剛性の高さを感じさせるもので、ワインディングでの軽快で粘りのある走りは運転する楽しさを味わえ、新型208の真骨頂と言える。街乗りや高速域でもキャビンが揺すられる不快な振動は抑えられており、コンパクトカーらしい快適な乗り心地を実現していた。
ステアリングは、プジョーの特徴でもある小径デザインとなっており、取り回し性は良好。ただ、ステアリングの左部分にウインカー、パドルシフト、レバー式のACCスイッチが集中し、かつACCの操作方法が複雑で使い勝手は不便であった。さらに、i-Cockpitのデジタルメーターは表示を複数選択できるのだが、内容が簡素な上に一つひとつの転換にもやや時間がかかる。このあたりはジャーマン3に一日の長を感じる。
また、空調調整はすべてタッチパネルを通じて行うため、その都度目視して確認しなければならず、試乗日は猛暑だったため調整に難儀した。物理ボタンを減らすことで先進的なイメージをもたらすことができる反面、使い勝手は損ねている印象だ。
気になる部分もあったが、走りやデザインはクラスを超えた質感を実現しているプジョー・208。今後国内に導入されるe-208と合わせて、商品力の高さは輸入車コンパクトの中でも高いレベルにあると言える。