【河村康彦 試乗チェック】ポルシェ・911 タルガ4

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一級スポーツカーをオープンとクーペで使い分ける

世界屈指のスポーツカーとして知られるポルシェ911。世界でも稀有な水平対向エンジンの採用や、それをリヤにマウントすることなど多くの個性を備えるこのモデルの特徴は、「2タイプのオープンボディを用意する」という点にもある。

ひとつはお馴染みの『カブリオレ』で、もうひとつは911独自のリトラクタブル式ルーフシステムを採用した『タルガ』。今回は最新992型の911に設定されて上陸した『911タルガ4』をテストドライブした。

オーソドックスなソフトトップ方式を採用するカブリオレに対するタルガ最大の特徴。それは「クローズ時には、ルックス上でも機能上でも完全なクーペと同等の状態を演出する」という点にある。

ルーフの格納

スイッチ操作ひとつでクーペからオープン、そしてその逆への”変身”がわずかに20秒ほどで完結。まずはリヤガラス全体が持ち上げられた後、その内部にルーフトップ部分を収納という動きは何ともダイナミック。そんな複雑な動きを実現させたのも凄いが、それ自体をエンターテイメントとして見せるという発想力も、実はマーケティング能力に長けたポルシェ社の面目躍如の印象だ。

「オープン状態の方がデフォルト」というコンセプトのカブリオレほどは風の流れなどが制御されていないので、オープン時の風切り音や空気の巻き込みなどは、実はこちらの方が盛大。一方で、ルーフ閉じ時の静粛性などはクーペと完全に同等レベル。というよりも、その状態ではこのモデルのルーフが開くということには気が付かない人の方が多いことだろう。

せっかくの硬派なモデルを「こんな軟派に仕立ててしまって…」と、そんな文句も述べる人は現れそう。けれども、一級のスポーツカーにそんな解釈を与えることが出来るのもまた、軽く半世紀を超える長い時間を、様々な要求を持つユーザーと共に育ってきた911というモデルだからこそと言えそうである。

(河村 康彦)

〈車両本体価格:1760万円~2091万円〉

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