今秋、フルモデルチェンジされるSUBARU「レヴォーグ」。今回はそのプロトタイプに試乗し、その仕上がりをいち早くチェックしてみたが、結論から言えばまさに文句ナシ!の完成度。走りも運転支援技術も格段の進歩を遂げ、スバルのフラッグシップにふさわしい内容となっていた。
まずスタイリングは、既に昨年の東京モーターショーで公開されている通り、キープコンセプトでの進化。顔つきが引き締められて精悍さを増したが、基本的なプロポーションや力強いスポーティワゴンというキャラクターに変更はなく、また国内専用モデルという位置付けも先代同様だ。
今回はまだプロトタイプのため参考値となるが、ボディサイズは全長4755mm、全幅1795mm。居住スペースを広げるために先代よりも全長は65mm、全幅は15mm拡大されたが、駐車場にも停めやすい全幅1800mm以下とするなど、日本の環境で扱いやすいサイズに抑えられている。国内専用モデルとして開発されていることの大きなメリットといえるだろう。全高は1500mmで先代と変わらないので、全体のスタイルとしては、ややワイドになった印象を受ける。
一方、室内空間は大きく変化。特にインパネ周りは大きく進化している。特筆すべきは中央部に11.6インチのディスプレイが装備されたこと。縦長のタブレットを装着したようなイメージで、スマホ感覚で操作できる。もちろんアップル・カープレイ、アンドロイドオートにも対応、ナビ・オーディオ・エアコンなどの音声認識操作も可能だ。車両の各種設定もこのディスプレイ上で操作できるので、わずらわしさがない。このディスプレイは上級の「EXグレード」には標準装備となるが、それ以外のグレードでもメーカーオプションで装着することが可能というのも、うれしいポイントである。
もちろん、スバルの売りであるアイサイトも進化した。これについては後述するが、上級の「アイサイトX」搭載車(EXグレード)の場合、さらにメーターが12.3インチのフル液晶となり、メーター内に地図を表示することも可能になる。新世代らしいコクピットだ。
パッケージは先代モデルも充実していたが、新型ではボディの拡大によってさらに充実。前席、後席とも十分な広さを持つとともに、荷室もたっぷりとしており、快適性、使い勝手の面でも満足できる。なお荷室長は1070mmで先代と同等であるが、開口幅と開口高さが拡大されたことで、荷室空間は拡大されている。前席、後席ともシートの座り心地も良く、またドアトリムなど手に触れる部分の質感も向上。上級ワゴンらしい快適な室内空間となった。
パワートレーンは先代の1.6Lターボに換えて、新開発の1.8L水平対向直噴ターボを搭載。トランスミッションも新型のリニアトロニック(CVT)に変更されている。エンジンの最高出力は先代比7psアップの177psとわずかだが、最大トルクは50Nmアップの300Nmとなったのが注目だ。
この日の試乗では新旧レヴォーグを同時に乗り比べることが出来たが、実際に走らせてみると、その差は歴然。発進からの加速はもとより、60~70キロからの加速にも余裕があり、またアクセル操作への反応もスムーズ。今回はクローズドコースでの試乗のため、高速域での実力を試すことはできなかったが、ロングツーリングがより快適になることは間違いないだろう。また回転を上げた時の静粛性が、格段に向上していることも体感できた。
続いてスラローム走行なども試してみたが、車両全体の動きが格段にリニアになったことも驚かされた。新型ではプラットフォームを一新し、改良型のSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用したことで、ボディのねじり剛性が44%も高められていることに加え、パワーステアリングや足回りも改良されたことで、クルマの動きに無駄がない。試乗車は新開発の「ドライブモードセレクト」を搭載するSTI Sportのため、コンフォートからSport+までの各モードを試してみたが、乗り心地優先のコンフォートモードでもクルマの挙動は極めて安定。ドライビング優先のSport+ならなおさらである。先代モデルではフロントの動きにリヤの追従が遅れて安定感を失うようなシーンでも、新型は安定感を失わず、ごく自然な挙動をみせる。素直にクルマが曲がってくれる感覚で、よりスポーティな走りが楽しめるとともに、雪道など不安定になりがちなシーンでも安心してドライブできるだろう。
さて、新型レヴォーグで何といっても目玉となるのがアイサイトの進化だ。ステレオカメラ方式を採用するのが従来同様なのだが、新型でレヴォーグはまずこのカメラが広角化した新型ステレオカメラに変更されている。さらに前側方レーダー、電動ブレーキブースターも加えられ、従来から装備する後側方レーダー、リヤソナーと合わせて全方位のセンシングが可能となり、衝突を回避できるシーンが拡大したわけだ。
しかし、それだけではない。これに加えて、より上位となる「アイサイトX」が設定されたのが大きなニュースだ。デバイスとしては新型アイサイトに加え、3D高精度地図ユニット、12.3インチフル液晶メーター、ドライバーモニタリングシステム、ステアリングタッチセンサが加わるのだが、これにより機能が大幅に拡充される。カーブの前で自動的に速度を落とす「カーブ前速度制御」、料金所の手前で速度を落とす「料金所速度制御」、車線変更を補助する「アクティブレーンチェンジアシスト」などの機能が使用できるのだが、何よりも注目は「渋滞時ハンズオフアシスト」だろう。時速約50キロ以下なら手を離すことが可能だ。
このハンズオフ機能は、既に日産スカイラインHVやBMWに搭載されているが、スカイラインの場合は制限速度内、BMWは時速60キロ以下で作動するという違いがある。つまりスカイラインは高速道路の巡行時も使えるのに対し、BMWは渋滞時のみの使用となるわけだ。新型レヴォーグの場合はBMWと同じタイプということになるのだが、高速巡行時に手を離して前方だけしっかり見続けるというのは、実際にやってみると意外に辛いもの。ヨソ見をしていてもOKというレベルになれば話は別だが、現時点では渋滞時のみで実用上は十分である。
今回はクローズドコースでの試乗のため、高速道路を模したコースでの体験であったが、そのスムーズさには驚いた。アイサイトの制御は従来から安心できるものだったが、新型アイサイトXはそのレベルが大きく向上している。自然な加減速や車線中央部をしっかりとキープする基本性能の高さはもちろん、車線変更時のスムーズなアシストなど、安心してシステムに任せられる。この辺りは動画でも確認して欲しい。
多様な機能を持つアイサイトXだが、操作はステアリング上のスイッチを押すだけと至ってシンプル。起動すると液晶メーター上にマークや状態が表示されるので、車両の状況が一目で把握できるのも安心感につながっている。また従来のアイサイトでは、ステアリングをしっかり握っていないと保持していないと見なされ、システムがキャンセルされてしまったが、新型レヴォーグではステアリングタッチセンサが採用され、普通に軽く握っているだけでよくなったのもうれしい。
というわけで最新技術満載の新型レヴォーグ。まだプロトタイプながら、その極めて高いポテンシャルは短時間の試乗でも確認することができた。ドライビングの心地よさ、ワゴンとしての実用性、快適かつ安心できる高度な運転支援技術と、すべてに満足できるモデルになるだろう。発売まではまだ時間があるが、大いに期待したいところである。(鞍智誉章)