昨年の登場以来、高い人気を続けているトヨタRAV4。2Lガソリン、2.5Lハイブリッドのシリーズ構成だが、今年6月、そこにシリーズ最上位モデルとして新たに加わったのがPHV(プラグインハイブリッド)だ。トヨタとしてはプリウスPHVに続く2車種目の市販PHVとなる。
搭載するパワートレーンは、「THSⅡプラグイン」と呼ぶ新開発のプラグインハイブリッドシステム。ベースとなるのはRAV4のハイブリッド車だが、フロントモーターとインバーターが高出力化され、システム最高出力は306psを発揮。RAV4ハイブリッドのシステム最高出力222psに対し、実に84psも上乗せされたことになる。駆動用バッテリーは18.1kWhの大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されており、95kmものEV走行が可能だ。ただし車両重量は大容量バッテリーを搭載する分、ハイブリッドに対してPHVの方が約230kg重い。
この駆動用バッテリーは、車体中央の床下に配置。DCDCコンバーターや充電器はコンパクトにまとめられて後席下に配置されている。これにより居住スペース、荷室スペースともガソリン車、ハイブリッド車のRAV4とほぼ同等というのがまず嬉しい。SUVタイプのPHVとして先行する三菱アウトランダーの場合はガソリン車が3列シート仕様なのに対し、PHEVは2列シート仕様とすることでプラグインハイブリッドシステムの搭載を可能としたが、この辺りは世代の差といえるだろう。ともかく、RAV4は実用性に優れた使い勝手の良さも魅力の一つだが、PHVでもそれが犠牲になっていないのは大きなポイントだ。
エクステリア、インテリアも基本的にRAV4と変わらない。専用のフロントグリルや19インチアルミホイールを採用することで上級感を演出しているが、遠目から見て違いに気付く人は少ないだろうな、というレベルだ。しかし、実際に乗り込んで走り出してみれば、これがRAV4シリーズの最上位モデルであることは、一瞬でわかる。とにかく走りが上質なのだ。この日は新型ハリアーも試乗したが、動的な質感としてはそれをも上回るというのが実感である。
まず、アクセルの踏み始めから感じられるのが、スムーズな加速感だ。軽く踏み込んだけで、瞬時に力強いトルクが発生。さらに踏み込めば直線的に加速が続く。もちろん発進時のスムーズさだけを見れば通常のハイブリッドでも同様だが、その直後からの加速感が全く違う。大容量バッテリーと高出力モーターを搭載するPHVならではのものだ。
さらに走りのパフォーマンスが欲しい時は、シフト横にあるダイヤルでドライブモードをスポーツに合わせ、HVとEVの切り替えをチャージホールドモードにする。この状態での加速感は、ヘタなスポーツカー顔負けだ。ちなみにトヨタが公表した0-100km/h加速は6.0秒。参考までに、320psの2Lターボを搭載する本格FFスポーツモデルのシビック・タイプRが5.7秒。それと比較すれば、RAV4PHVの加速がいかに凄まじいものかわかるだろう。もちろん国産ミドルクラスSUVの中で断トツのトップだ。もちろん重い分、コーナーリングでは不利になるが、公道で走る速度域であれば、挙動を乱すこともない。
また、無駄がなく滑らかなステアリングへの反応や、カッチリとした足周りの動きにも感心した。ブレーキの反応も極めて自然だ。RAV4はオフロード走行も視野に入れることもあってか、操作系に対する反応やボディの動きには若干緩慢な印象があったが、RAV4PHVではそれがない。これは大容量バッテリーを床下に搭載することによって重心高が低くなることに加え、重量増に対応するために、より強固な「ハイランダー」のプラットフォームを採用したことも大きく影響しているようだ。
もちろん、後席も含めた快適性も非常に高い。段差を超えても足回りはショックを素早く吸収し、乗り心地は滑らか。余計な振動や音も感じられず、上質そのものだ。乗り心地の良さで比べても、SUVの中で間違いなくトップクラスに入る。
価格はベーシックな「G」グレードで469万円。同じく4WDのRAV4ハイブリッド・Gと比べると約80万円高となるが、PHVは国や自治体からの補助金が受けられるので、実質的な価格差は縮まる。それでこの走りの楽しさや乗り心地の良さが手に入るのなら、むしろ割安に感じられるほどだ。純EVと異なり、PHVは外部充電が必須というわけではないのも大きなメリットで、自宅と駐車場が離れているという人でも購入しやすい。
というわけでRAV4を筆頭にミドルクラスSUVを検討している人には、ぜひともRAV4PHVをオススメしたい…のだが、非常に残念なことにバッテリーの生産能力の都合上、本年度の生産分は既に終了しており、注文は一時停止中だ。今後の注文再開は公式HPで告知されるとのことなので、こまめにチェックして欲しい。(鞍智誉章)