【河村康彦 試乗チェック】ポルシェ・911 GT3 ルックスからしてただ者ではない911の中の911

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サーキット走行を視野に入れ高回転域を常用できるチューニング

数ある最新911のバリエーション中でも、ある意味「1つの頂点」とそんな言葉がピタリと当てはまりそうなのが、今回紹介をする『GT3』のグレード。

ブレード面の気流を極力乱さないための”スワンネック型”と称する上から支える巨大なリヤウイングや、センターラジエターからの排熱を促す他モデルには無いアウトレットを設けたフロントフードなどにより、一見でも「ただ者ではない!」という印象が満点。さらに、軽量化を推進するべく前出フロントフードをCFRP製としたり、リヤシートを廃したり各ガラスは薄板化をしたり等々と、微に入り細を穿った設計を採用のも特徴だ。

リヤエンドにマウントされる“スワンネック型”リヤウィング

しかし、何よりも最大の見どころは、”911のお約束”としてその猫背型ボディの後端部に低く搭載する水平対向6気筒デザインの心臓が専用の設計であること。端的にいえば、それは様々な面で「レーシング・エンジンそのもの」と表現しても過言ではない要素が取り入れられた、4リッターの自然吸気にして500PS以上という出力を発する専用ユニットなのである。

今回のテスト車は”PDK”を謳う7速PDK仕様。マニュアル操作を好むユーザーのために6速MT仕様も用意されるが、911シリーズ中でもGT3は特にスピード性能に特化したものだけに、”本流”は変速時の一瞬のパワーロスも許さないこちらという設定だ。

サーキット走行を強く視野に入れ、エンジンも高回転域での使用をメインに据えたチューニングだが、それでも街乗りシーンでも少しの使いにくさも感じないのは、4リッターという余裕あふれる排気量が大きく関係をしていそう。前出PDKも当然それに合わせたチューニングであろうが、こちらも低回転ユースがメインとなる街乗りシーンでも驚くほどにスムーズな変速を実現。妙なショックやノイズなど、一切発することがないのだ。

フロントフードには、他グレードにないエアアウトレットをも持つ

とはいえ、やはり本領は走りのテンポを高めた時。エンジン音に官能的な高周波成分が目立ち始めると共に、アクセルレスポンスもシャープさを増す4500rpm付近から上の領域をキープした際のフィーリングは「最高!」のひとこと。ドライバー正面に位置する大きなタコメーター上に引かれたレッドラインは何と9000rpm(!)と比類なき高さ。そして、そこまで何の抵抗感もなく軽々と吹け切ってしまうのだから、ここでもまた驚かされてしまう。

足回りもサーキット走行を意識しているだけにハードなセッティング。が、意外にも不快感が小さいのは、強靭無比なボディがその振動を一瞬にして減衰させてしまうからでもある。スポーツカーの雄として名を馳せる911。その中にあってもGT3は、やはり格別の輝きを放つ1台なのである。

(河村 康彦)

(車両本体価格:2438万円)

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