ボッシュは、IoT分野のパイオニアとして、2012年に自社工場とカスタマーの工場で製造と物流管理のネットワーク化に踏み出しており、2019年には製造や物流管理向けのネットワーク化ソリューション「インダストリー4.0」によって、前年比25%増となる7億5,000万ユーロ以上の売上高を達成した。
新型コロナウイルスの感染拡大という危機を通じてさまざまな問題点が浮き彫りになり、コネクテッド・マニュファクチャリング(製造のネットワーク化)と物流管理の重要性が見直され、IoT(モノのインターネット化)によって、各機械の稼働率と稼働状況のリアルタイムでの追跡や、サプライチェーン全体の把握が可能となり、製造会社は突発的な状況にも以前より柔軟に対処ができるようになっている。
感染リスクによって物理的に近づくのが困難な場合でも、シフトの引継ぎをデジタルで処理できるほか、デジタル化が進んでいれば、技術者が現場にいなくても、遠隔操作によってシステム/機械の監視や保守を容易に行うことができ、インテリジェントなソフトウェアが商品や配送状況をどこからでも追跡できるようになることで、確実に商品を補充できるようになる。ボッシュは、上記のような状況は、インダストリー4.0の導入により実現可能となり、ネットワーク化ソリューションによって、製造と物流管理をよりシンプルに、より効率的に、より柔軟に、そしてより確実に進められるようになると説明している。
同社は、自動車業界の変化は、パワートレイン部門のコストに対する圧力、そして変化に対処することを求める圧力につながっているため、同部門はデジタル化およびネットワーク化を製造全体に推し進めるために、今後数年間で約5億ユーロを投入する予定で、これが実現すれば、抑えられるコストは2倍に上り、その額は2025年までに約10億ユーロに達する見込みとなると述べている。
また、機械の予知保全、品質保証や生産プロセスの改善を目指したAIベースのソリューションを活用すれば、さらなる効果が期待できると述べ、例えばドイツのロイトリンゲンにあるボッシュの非常に高度なウエハ製造工場では、AIは500を超えるウエハ処理工程の細かい生産スケジュールを調整するために用いられており、時間とコストの節約につながっているほか、AIの導入によってウエハの製造スループットが5%スピードアップし、投資額をわずか3カ月で回収したと説明している。
ボッシュは、インダストリー4.0を形成するために必要なコア コンピテンスをすべて備えており、その製品ポートフォリオは、保守、監視および物流管理用のソフトウェアパッケージ、製造および運搬用のロボットシステム、既存の機械用の後付けソリューション、機械操作担当者向けのアシスタンスシステムまで多岐にわたるという。
また、サードパーティアプリケーションにも開かれた、ソフトウェアベースの5G対応制御技術「ctrlX Automation」を発表。「ctrlX Automation」を活用すれば、工場内で孤立したソリューションの存在がなくなるのに加え、ボッシュコネクテッドインダストリーが改良を行った「Nexeed Industrial Application System」を利用することで、さまざまなソフトウェアアプリケーションを注文して使用し、必要に応じて他と組み合わせることも可能となり、マシーン・データはすべて、明確に標準化された形式で利用できるため、工場内の透明性と効率性が大きく向上するとしている。
さらに、自社のエネルギープラットフォームに機械を接続することで、機械の電力消費量を追跡・分析・制御できるようになり、これによって工場の経済性が向上するだけでなく、電力消費量を抑え、排出されるCO2も低減可能となるなど、ネットワーク化は、製造をカーボンニュートラルにするために重要な役割を担うと述べた。