日産自動車は、4月16日、先進的なリチウムイオンバッテリーの要素技術である「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」をAPB株式会社(以下、APB)に、ライセンス供与すると発表した。
日産は、1990年代初頭よりリチウムイオンバッテリーの研究開発を始め、1997年には「プレーリーJOY EV」で電気自動車用リチウムイオンバッテリーを世界に先駆けて実用化。それ以降、日産は自動車用バッテリーの技術革新につながる要素技術の研究を継続して行っている。
同社は、今回ライセンス供与する「バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池の技術」には、①容積当たりの充電容量が増大する、②電解質が樹脂に置き換わることで安全性がより向上する、③構造がシンプルなため低コストである、という特徴があると説明した。
また、APBでは、上記技術を活用し、次世代型リチウムイオン電池である全樹脂電池の定置用バッテリーの製品化を目指すほか、国内有力企業からの出資を受け、日本国内に年間ギガワットアワー(GWh)クラスの充電量を持つ電池の生産が可能な工場の建設を計画していると述べた。
<バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池技術の概要>
バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池は、従来液体状であった電解質と金属製だった電極の両方を樹脂に置き換えるもので、バッテリーセルの表・裏面をそれぞれ構造体であると同時に正極・負極の機能を有する樹脂集電体で形作り、複数のセルを重ねることで、バイポーラ構造の組電池の構成を可能とする要素技術。構造が単純化しコストが下がり、容積当たりの充電容量が増大することに加え、電解質が樹脂に置き換わることで安全性も向上する。
<要素技術を活用した定置用バッテリー>
バイポーラ電極構造を有する全樹脂電池は、従来の定置用リチウムイオンバッテリーに対して、同じ充電容量で大幅なサイズダウンとコストダウンを実現出来るほか、安全性の向上も期待できる。上記技術を用いた定置用バッテリーが普及すると、個々のユーザー単位でも深夜電力や太陽光パネルなどで発電した再生エネルギーの有効活用が、少ない投資効果で実現することが可能となり、それにより、地域社会の単位でもピーク時の電力消費量を抑制、安定した効率の良い電力活用の実現によって、障害や災害が発生した際の電力供給停止のリスクを冗長性の観点で減らすことができるなど、社会単位でより安全でクリーンなエネルギー供給の実現に寄与することが可能。